今回はAcoustuneのワイヤレス専門サブブランド「ANIMA」から出たANIMA ANW01をレビューします。
リモートワークで音楽を聴きながら作業をすることが増えました。
再生環境はPC(foobar2000)にgamedacを接続しgamedacからヘッドセット(Arctis Pro)やスピーカー(ONKYO GX-D90)に流しています。
ヘッドセットを長時間装着するのは疲れますし、そもそもArctis Proは音楽鑑賞用ではないのです。田舎のぽつんと一軒家というわけでもないのでスピーカーを使える時間には限度があります。そして何よりPCは仕事でも使用しているため再生や一時停止のコントロールがやりづらいのです。
コントロールについては値引きされていたLG V60 ThinQ 5Gを購入しDAPとして使用することにしたため一応解決しましたが、今度は有線イヤホンの取り回しが面倒だなと思い始め、ワイヤレスイヤホンを購入しようということになりました。リモートワークが解除されるかもという話もあり、通勤中に音楽を聴く環境を整えたかったというのもあります。
欲しくなったのでいろいろ調べましたが一つ問題が。体調の問題があり店舗まで試聴しに行くことが難しかったんです(記事執筆時点では試聴に行けるくらいに回復)。
なのでネット経由で得られる情報しか頼りにできません。日用雑貨ならまだしも好みが分かれやすいものを実際に試さずに買うのはちょっと抵抗があります。
公式サイトから個人のブログまで調べつくして、これならいいんじゃないかと思ったのはこの2つ。
- SONY WF-1000XM4
- SENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2
機能的にはSONYなんですが、自分が好みだと感じる音はゼンハイザーなんじゃないかと。実際に聞いてはいないので全くの未知数なのに3万出せるかというのもあります。
実際に聞いてはいないので8割くらいは未知数です。自分の耳の形に合うかどうかすらわかりません。オーディオ機器って絶対値的な部分と個人によって変わる部分があって、ある程度の価格以上になると絶対値的な部分はほぼ確実に手に入りますが、個人の好みは価格からじゃ全く分からない部分なので実際に試さずに買うと数万円出しても全く満足できないということになる可能性もあります。なりました。この失敗談はまた後日。
そんな時、アイドルマスターに楽曲を提供しているTAKU INOUE(通称:イノタク)氏がサウンドチューニング監修をしたワイヤレスイヤホンが出るということを知りました。
プロデューサーとしてはめっちゃ気になりますが、全く聞いたことが無いブランドだったので最初はどうせただのコラボイヤホンだろとしか思っていませんでした。ごめんなさい。
そしたら高級イヤホンメーカーとして一定の地位を確立しているメーカーのワイヤレスイヤホン専用ブランドだとか、イノタク氏によりガッツリ監修されているぞとか、気になる情報が出てきましてめでたく候補入りになったわけです。
イノタクサウンドで聞いてほしい曲としてアイマス曲が挙げられていたのもあり、アイマス曲をメインで聞いている自分に合うのではと思いました。でも先に書いた通り試聴しに行けなかったんですよね。
レビューが出てから考えようと思っていましたが、なぜか誰もちゃんとレビュー書いてくれないんですよ。たぶん200時間くらい聞いてから書こうということなんだと思います。自分が買って少し経ったらレビューが増え始めましたし。
結局悩んでもどうしようもないと思い切って買いました。合わなかったら友人に譲ろうと思ってました。
レビュー
※2022年1月26日に音質についての記述をAACコーデックを使用した場合に合わせて更新しました。製品そのものへの評価には影響ありません。
使用時間は120時間ほどです。主にアイマス曲、平沢進を聞いています。aptxによる歪みを防ぐためにコーデックはAACを選択しています。
良い点
- 解像度が高く、見通しの良い個々の音をしっかり聞かせる音質
- キレと締まりのある低音
- 横方向への広がりを感じる
悪い点
- ややストイックすぎて刺さり気味な高音
- イヤホン側では音量調整ができない
- 操作コマンドの変更は不可
- イヤーピースを変える場合は注意が必要
音質
15,000円のワイヤレスイヤホンとして最低限の音質は大丈夫だと思います。ノイズが多いとかそもそも鳴っていないということはありません。再生していない時はほぼ完全に無音でホワイトノイズは全くありません。
音の傾向はV字傾向ではありますが、見通しは良く解像度も高いため個々の音ははっきりを聞き分けられます。Acoustuneらしい解像度の高さやクリア感の良さから来る高音質といった印象で、ドンシャリよりも個々の音の鮮度重視という人にぴったりでしょう。音場は少し横方向に広いと感じました。
音圧の強いEDM系との相性が非常に良く、アイマス曲の中ではHotel MoonsideやDIAMOND JOKERなどを聞くなら持って来いです。それら以外でもアイマス曲との相性はどれも良いと感じます。打ち込み系が多いことも理由の一つでしょう。
バンディリア旅行団の「霧は地図と~」のところは平沢進ASMRですね。口の動きまで感じられるような音です。
高音はとても綺麗な鳴らしかたですが少しストイックすぎる傾向もあって人によっては刺さると感じることがあるかもしれません。僕の中では刺さりすぎず引っ込まない絶妙なラインを攻めてる印象です。
瞳の中のシリウス後半のサビ転調部分が特にわかりやすいと思います。
中音は埋もれることなく前に出てくる印象です。高音と同じく非常にクリアで余程のことが無い限り他の音に埋もれることはありません。女性ボーカルの伸びも良く感じられました。
低音は高音と比べると控え目な印象ですが、鳴っていないとかスカスカな鳴り方ではなくキレも深みもある低音です。後述するイコライザーでNIGHTを選ぶと低音の深みを強くすることができますので、低音が物足りないと思ったらイコライザーを切り替えてみるといいでしょう。
Limitlessの1分16秒あたりからがわかりやすいと思います。高音のキラキラ感はそのままに、芯のある低音が鳴ります。目が逢う瞬間の最初「戻れない二人だと」のところもわかりやすくキレと深みがある低音が鳴ります。
aptx歪みについて
Bluetoothでの音楽再生に使用されるコーデックの一つであるaptxは原理上避けられない歪みが発生します。特に音圧の強いEDMや打ち込み系で顕著に感じられます。
ANW01でaptxを使用した際も歪みを感じることができます。上で紹介した曲ではEDM系のLimitlessが最もわかりやすく高音が歪みました。
ANW01はaptx以外にAACとSBCに対応しているため回避可能です。ANW01に限らず、ワイヤレスイヤホンを使用する際は使用するコーデックをaptx以外のAACやLDACなどに設定することをおすすめします。
イコライザー
※2022年1月26日 イコライザーが追加されたため追記しました。
公式アプリからイコライザーを切り替えることができます。発売時点で用意されているのはイノタク氏によってチューニングされた「MIDNIGHT」「NIGHT」「DAY」の3種類でしたが、2022年1月26日現在ではアップデートで田中秀和氏がチューニングした「SUNNY / ON THE GO」「CLOUDY / RELAX」「RAINY / FOCUS」、ANIMA開発チームがチューニングした「ASMR / 4C」、声優の小岩井ことりさんがチューニングした「ASMR LONG」が追加されており、リスニング用以外にもASMRコンテンツの試聴にも対応するようになりました。
アプリのイコライザー設定画面ではイコライザーについての説明が表示されるため、それを参考によく聞く曲で試していくといい結果を得られると思います。
MIDNIGHT
寒色系でありながら少し暖色系に近い音色に変化し、音楽に浸りたいという時にぴったりです。キラキラとしたサウンドが行き交う中にいる感覚で、音が前に出てくるようになります。人によっては聞き疲れしやすいと感じる音なので、疲れているときはNIGHTやDAYのほうがいいでしょう。
これぞイノタクサウンドと呼びたくなるような音で打ち込み系やEDMなどに強いです。
NIGHT
MIDNIGHTと比べるとベース域の低音が強くなっているとのことですが、MIDNIGHTと比べると寒色系の傾向が強くなる印象です。バンドサウンドや打ち込み系でもロックなどとの相性が良いと感じました。
MIDNIGHTでは低音が物足りないと感じるならNIGHTを選択すると改善することがあります。
DAY
MIDNIGHTと同じく暖色系の傾向ですが、全体的に音が丸くなる印象です。瞳の中のシリウスがわかりやすく後半のサビ転調部分で刺さりやすいと感じるならDAYに切り替えると聞きやすくなります。
少し疲れているときや作業用BGMとして聞きたいときはぴったりです。
SUNNY / ON THE GO
名前の通り全体的に明るくスッキリした印象を受けます。傾向としては暖色系ですが、個々の音をはっきりと鳴らすためMIDNIGHTと同じく音楽を能動的に楽しみたいときに使いたいイコライザーです。
音の数が多いバンドサウンドなどとの相性が良いと感じました。
CLOUDY / RELAX
SUNNYをさらに暖色系にして個々の音を柔らかくした印象です。DAYよりもさらに中低音重視に振ったバランスで、ボーカルをメインで聞きたいときやアコースティック系の曲との相性が良いと感じました。
RAINY / FOCUS
EDMや打ち込み系と特に相性が良いイコライザーです。MIDNIGHTよりも少し音場が広くなったような印象を受けます。
装着感
ワイヤレスイヤホンとしては本体や充電ケースがかなり小さく、そのためか装着感も耳にぴったりはまる感じで良いと思います。
イヤーピースだけで支えている感じではなく、しっかりフィットすることで支えているので歩いていても安定感があります。もう少しイヤーピースでの装着感を高めたいのならSpinFit CP1025などが使えます。
遮音性
ノイキャン無しのカナル型イヤホンとしては十分だと思います。2回ほど外で使用しましたが特に問題ありませんでした。
静寂が訪れてほしいならノイキャン有りのイヤホンを買いましょう。
音漏れ
こちらも特に問題ありません。スマホを耳に近づけて録音してみましたが大丈夫でした。
注意点
実際に使用してみて注意が必要な部分です。
イヤーピースの選択肢問題
ANIMA ANW01は他のTWS同様にノズルが短いためイヤーピースを選ぶタイプですが、充電ケースのサイズも小さいためイヤーピースのサイズに余裕がほぼありません。
軸部先端から傘部先端までは4mm後半が限界で、柔らかいイヤーピースなら少し押しつぶせば蓋がなんとか閉まるといった感じです。あまり無理にケースを閉めると本体のボタンを押してしまう、ケースが破損する、充電不良なども考えられるので注意が必要です。
TWS専用イヤーピースのSednaEarfitLight Shortを購入しましたが、蓋が全く閉まりませんでした。
使用できるイヤーピースを2つ確認したので音質レビューとともに書いておきます。
SednaEarfit Crystal for TWS
軸部先端から傘部先端まで約4.4mm。フィット感を高めるために表面が少しべたついているのでケースに入れる際に引っかかります。うまく入れると蓋がちゃんとしまって充電も問題ありません。
スーパークリアサウンドを謳うだけあってクリア感が増して高音が強くなります。ただ、強くなりすぎてMIDNIGHTだとめっちゃ刺さります。DAYで聞くのが一番いいかもしれない。
音の響きが良くなるのでスタジアムやライブ会場にいるようなエフェクトをかけるならぴったりです。
SpinFit CP1025
軸部先端から傘部先端まで4.5~5mm。Sednaとは対照的で遮音性が上がるためか低音が少し強調され高音は控え目になります。純正で高音が強すぎると感じるならアリです。
ケースには特に問題なく入ります。充電も問題ありません。
純正イヤーピース
SednaとSpinFitを試しましたが純正に戻りました。自分にとって好みだと言える音は純正でした。装着感も申し分なく、遮音性や音漏れも問題ないので、ANW01は好みのサウンドに近づける以外の理由でイヤーピースを変える必要は特にないですね。
総評
試聴せずに買うという博打みたいなことをしましたが、結果として大成功に終わりました。何も考えずに1枚だけかった宝くじで1等6億当たりましたみたいな感じで驚きです。
ANIMAブランドの元になるAcoustuneの技術力やTAKU INOUE氏のサウンドチューニングがとても素晴らしいんでしょうね。自分の耳にもぴったり合うサウンドです。もっと言うとANIMA ANW01に出会ったことで自分が好きだと言える音がどのような音なのかはっきりわかりました。
ANIMAブランドでこの音ならAcoustuneの有線イヤホンは似た傾向の音が鳴るのではとHS1300SSなどが気になっています。買っちゃいました。HS1300SSのレビューはまた後日やります。
作っている人の魂を感じられる製品でした。こんなに良いものを15000円で買えちゃって本当にいいんですか? と思うほど良いものです。イノタクサウンドが少しでも気になるなら試聴をおすすめします。試聴する際は公式アプリをスマホにインストールしてから行くとイコライザーの切り替えを試せます。
今はまだANW01だけですが、後続の製品にも期待が高まります。
以上、ANIMA ANW01のレビューでした。