※2024/12/06 追記
おはこんばんちは、あぶさんです。
この度、コミックマーケット105で頒布予定の新刊『意外と知らないポタオデの話』にて、当記事で扱っている内容を更に深堀りした「意外と知らないワイヤレスイヤホンの話」を掲載予定です。
3年間の経験を踏まえ、コーデックだけでなくワイヤレスイヤホンについて全17ページの徹底解説となっております。
この記事は公開から2年以上が経つものの、未だに当ブログにおいて月間アクセス数1位を頂いているということは、ワイヤレスイヤホンについて解説してほしいというユーザーが多いということなのでしょう。
そんな思いにお答えするべくいろいろと模索していましたが、新刊という形で頒布させていただくことになりました。年の瀬を迎え何かと忙しいかと思いますが、興味がありましたら「月曜日 東地区 “エ”ブロック-32a(東3ホール)」へお越しください。
オーディオ沼1年生のあぶさんです。
今回はワイヤレスイヤホンでaptxは使用しないほうがいいんじゃないかという既にオーディオ界の常識かもしれないお話です。
ワイヤレスで聞いていると音圧が強い、高音で歪みを感じて聞きづらいと思っている人は解消できるかもしれません。
ワイヤレスイヤホンで音楽を楽しんでいるかたも多いと思いますが、SBCやらAACやらaptxという言葉を聞いたことがあるかと思います。
これらはコーデックと呼ばれるもので、Bluetoothで音楽データを送信する際にどのように圧縮して送信するかを決めます。コーデックの選択は送信側と受信側の両方で対応しているコーデックのうち、最も音質が良く送受信の状態に適したものが自動で選択されます。
基本的にSBC -> AAC -> aptxの順で音質が良いとされているのでほとんどの場合はaptxが選択されることになります。基本的にユーザー側で切り替えることはあまり想定されていません。
aptxで音がゆがむ!?
私の中での事の発端はこのツィート
・コーデック :SBC Stereo
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:44.1kHz pic.twitter.com/fDLKzSTEYu
・コーデック :SBC XQ (SBC HD)
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:44.1kHz pic.twitter.com/matZfOp8Ky
・コーデック :Android AAC
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:44.1kHz pic.twitter.com/61x6WyWOrt
Bluetoothコーデックで波形がどのようになるかを測定したものです。
上から順にSBC Stereo、SBC XQ、Android AACとなります。SBCと比べてAACのほうが綺麗な波形になっていることがわかると思います。ではaptxを見てみましょう。
・コーデック :aptX
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:44.1kHz pic.twitter.com/Sak1B4RfYl
aptxくん、めっちゃ歪んでますやん……
ほぼ全周波数帯域で歪みが発生しています。補正どころの騒ぎじゃなく、もう全く別の音と言ってもいいんじゃないかと思うくらい違います。
・コーデック :aptX HD
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:48kHz/24bit pic.twitter.com/QBVShWqBv5
こちらではaptxの進化版aptx HDも検証されていますが、aptx HDもaptxより抑えられてはいるものの歪みが発生しています。
先に書いたようにaptxはAACよりも音質が良いとされていますけど、本当に音質が良いのか疑問になりません?
私も波形だけの話じゃろと思ってました。ANW01のレビューもaptxでやってましたけど特に違和感なく聞いていました。
では実際の音源にどのように影響があるのかを聞いてみましょう。
aptxが及ぼす影響
あんなに違うんだったらユーザーも気が付くだろうと思いますよね。実際、気が付いていないユーザーが大多数だと思います。aptxによって歪んだ音が、多くの音源では音が良くなったと感じるユーザーが多いからです。
悪い方向の影響がわかりやすいのはEDM系です。
1分0秒あたりからの強い高音がとてもわかりやすいと思います。
aptxだと高音がはっきりと前に出てきて強く刺さりバシバシといった音に叩かれるような鳴り方ですが、これをAACにしてみると高音が少し収まりバシバシ叩かれることは無くなります。aptxは音圧も上がっている印象を受け、AACのほうが自然で解像感も高く感じられます。
ちょっとした差ですがaptxで高音が強すぎるなと思っていた人はAACにすると刺さらないと感じるようになるんじゃないかと思います。
ANW01のレビューをしていた時は高音が刺さる刺さらないのギリギリを攻めているからこんな感じになるんだなと思って特に何も思っていなかったのですが、aptxでAACで聞き比べてみるとEDM再生時の評価はガラッと変わりますね。クリアで綺麗に鳴らしながら聞きやすくEDMの雰囲気がしっかりと再現されています。
EDM以外であっても聞き比べると違いがわかります。音というものは最終的に個人の好みになりますのでどちらが良いかはそれぞれの判断になりますが、aptxは音圧が強く激しい音に、AACは原音に近く解像感が高いクリアな音になります。有線イヤホンと聞き比べてもAACは有線イヤホンとほぼ同じ音が出ていることからもAACは原音に忠実であることは間違いないと思われます。
それでもaptxを推奨する記事が多くあり実際にaptxで聞いているユーザーが多いということは、そういった音が世間一般的に好まれるようになっているということなのかなと思います。
- 音圧が強い音は苦手
- 解像感を重視
- EDMをよく聞く
これらに当てはまるのならAACで聞いてみるとより良い音楽鑑賞ができると思います。
どうしてこんなことが起こるのか
先に書いたようにBluetoothのコーデックではaptxはAACよりも音が良いとされていて、自動でaptxが優先して選択されるのも多くの人が音が良いと感じやすいコーデックだからです。これは間違いありません。
じゃあ何でこんなことが起こるかというと、aptxの開発では当時の音楽データを用いてエラーを低減させているそうなんですが、当時はまだEDMが世に多く出ていなかったということが原因のようです。
入力レベルが大きい場合に歪みを感じやすく酷い場合は音割れしているような音になります。元から音圧が強い音源も酷いことになるでしょう。
aptXのみEDM系の曲で歪みが発生する原因、やはりaptXの仕様っぽい?https://t.co/ZzMmI4B18J
— Azalush “森あざらし” (@align_centre) 2019年9月4日
aptX(ADPCM)では周波数カットオフをしないのでクォンタイズエラーでノイズが付加されるが、開発時(80年代)、音楽データを元に作った因数テーブル?を用意してエラーを低減させているとか。で当時電子音楽は… pic.twitter.com/PgeYVCHSXa
aptxが高音が歪んでしまうのは仕様なのでaptxを使わない以外に回避方法はないということになります。
aptx対応ワイヤレスイヤホンでaptxを回避する方法
aptxの音圧が高すぎると感じたり、AACの解像感の高さが好みであればaptxではなくAACで聞いたほうが幸せですよね。
AndroidのスマホやAndroid搭載DAPであれば開発者オプションからコーデックを切り替えることができるため、ユーザー側からAACを選択することが可能です。
ただし、デバイスを接続するたびにリセットされ自動選択されるため毎回変更が必要です。
AndroidではないDAPでは変更するオプションがあれば変更できますが、変更できる機種はそんなに無いんじゃないかなと思います。
私はXDP-20を使っていますが変更はできません。aptx HDを使用するオプションはありますが……。
iOSについてはあまり詳しくないのですが、あれ標準でAAC選択されるようになってたりするんですかね。以前にそんな話をちらっと聞いたような気がする。
このようにaptx対応のデバイスでaptxをユーザー側で回避することは現実的ではありません。
個人的にはどうしでもaptxを回避したいならaptxに非対応なワイヤレスイヤホンを選ぶか、aptxより上位のコーデックとなるLDACに対応したワイヤレスイヤホンを選ぶことが最適解だと思います。
LDACという救世主
LDACはソニーが開発したコーデックです。とりあえずこいつを見ればわかります。
・コーデック :LDAC
— 重良 (@shigeyoshi_XG) 2019年12月15日
・出力サンプルレート:96kHz/24bit pic.twitter.com/ajcV0O8g4i
一目瞭然です。LDACはハイレゾにも対応したコーデックなので、最適解はLDACを使う、使えなければAACを使うで決まりですね。
問題はLDAC対応の完全ワイヤレスイヤホンはまだ普及しておらず、ANW01もLDAC未対応です。2021年8月7日時点で対応している完全ワイヤレスイヤホンはソニーのWF-1000XM4しかありません。実はANW01とWF-1000XM4で迷っていたんですが、XM4は大きくて耳に入らなさそうだったのと初期の不具合がいくつかあったので見送っていました。実際に試聴したら耳への収まりが悪かったのでANW01を選んで大正解ではありました。ノイズキャンセリングがついていない小型のLDAC対応完全ワイヤレス作ってくださいソニーさん。