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NICEHCK DB1 レビュー「癖のないスッキリとしたサウンドで格安イヤホン入門として最適な1DDイヤホン」

今回は格安イヤホンブランドとして人気が高いNICEHCKが2021年10月に出したDB1というイヤホンをレビューしていきます。

以前、NICEHCKのDB3というイヤホンをレビューしました。

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DB1はDB3の弟分にあたり、NICEHCKブランドの中で最も安価なイヤホンとなります。
DB3は2DD+1BAのハイブリッド構成ですがDB1は1DDとなっていて、DB1はDB3よりも1000円ほど安価な価格設定がされています。実際、DB3はAmazon通常価格で3250円ですがDB1は2150円で販売されています。
DB1はセール対象で2000円以下で購入できる場合が多く、オーディオマニアでなくても手を出しやすい価格帯でしょう。

外観

パッケージはNICEHCKでおなじみの白箱に商品画像を大きく見せるものではなく、メイド風の衣装を着たいわゆる萌え系キャラクターのイラストになりました。最近の格安中華イヤホンで増えてきている萌え系イラストの採用ですが、正直なところDB1のパッケージデザインは流行に乗っかってみた感を強く感じてしまい好ましくありません。

1DD構成によって中身に空洞が増えているためDB3よりも僅かに青が薄い印象を受けますが、鮮やかで綺麗だなと思う青です。内部構造にも目立った粗はなくビルドクオリティは高いと感じました。
DB3と比較して本体サイズはやや大きくなりましたが装着感に大きな影響はなさそうです。形以外にはフェイスプレートがプラスチックになっていることが挙げられます。かと言ってオールプラスチックではなく、ノズル部分はDB3と同じく金属製が採用されています。

付属品はケーブル、クリップ、イヤーピース(S, M, L)、説明書、保証書です。
イヤーピースはいつもの汎用イヤーピースなので交換推奨です。今回はAcoustune AET07を使用しました。
ケーブルの材質は純銅線で、TFZ 2pinが採用されています。

音質

DB1はややV字傾向の帯域バランスながら、全体としてはちょうどよいバランスに整えられており、個々の音を丁寧に上手く鳴らすような印象です。
寒色系で全体的に線の細い音ですが、歪みは特にありません。音場はやや狭く感じますが、モニターイヤホンのような正確さはないものの十分な定位感があります。
解像度はそこそこですが、一つ一つの音をある程度はっきりと鳴らしてくれるため分離感は悪くありません。
格安中国製イヤホンは各社で特徴を競っているようなところがあり、その中でDB1は悪く言えば特徴のないことが特徴だとも言えるサウンドです。個々の音を丁寧に鳴らすということに注力したサウンドは、2000円という価格を考えればお値段以上の音質だと思います。
あくまでも特徴が無いことが特徴ですので面白い音ではありませんが、特にネガティブな部分が無く1DDならではの破綻していないバランスも相まって、これはこれで良いなと思えるイヤホンです。

高音

DB1の高音は線が細い鳴らし方が気になりますが、刺激感や伸びは十分感じられます。
刺さりは適度に抑えられていますが、ややドライバー性能の限界を感じる部分があります。価格を考えれば十分でしょう。

中音

中音は価格なりの粗を感じますが、変な癖はなく聞きやすい音質です。
プラスチック筐体ですので中音域で僅かに共振を感じますが、価格を考えれば十分すぎるほどに滑らかな質感を持っています。

ボーカル

ボーカルは少し埋もれますが、自然に伸ばしてくれる印象です。
どちらかというと女性ボーカルよりも男性ボーカルのほうが良いと感じました。全体的に線の細い鳴らし方のため、女性ボーカルだと細くなりすぎるのかもしれません。

低音

低音はやや弱いバランスで鳴らしますが、質自体は特に問題は感じません。しっかりと中高音を下支えしてくれる印象です。
ミッドベースからサブベースにかけて素晴らしいバランスで低音を鳴らします。分離感も悪くなく、音自体に滑らかな質感も感じられます。個人的にはもう少し前に出てくるような強さが欲しいと思いました。

リケーブル

DB1はTFZ 2pinの他に、通常の2pinやCIEM 2pinでのリケーブルに対応しています。
純正ケーブルは何の変哲もない4芯の銅線です。ドライバーの性能を考えると高音側の余裕はあまりないと思われ、銀メッキや16芯など大きくスペックアップさせると破綻してしまう懸念があります。どちらかというと中低音に厚みを持たせることができる銅線の8芯や4芯ケーブルをおすすめします。

JSHiFi-D4G

音場の広がりと全体的に音の響きが良くなって少し音に厚みが出た印象でしたが、聞きこんでみると高音域が強くなりすぎてしまい刺さりが強くなってしまいました。刺さらない範囲でもストイックすぎて明らかにドライバーの限界を超えてしまっています。

KINBOOFI KBF4851

こちらは16芯の銀メッキです。こちらもD4Gと似たような印象でオーバースペックでした。

NICEHCK TDY4

同じメーカーの8芯銀メッキです。D4GやKBF4851よりも高音の刺さりが少なくストイックさは抑えられていますが、どうしても高音が強くなりすぎてしまう傾向があります。TDY4でも高音が刺さりすぎると感じるなら8芯や4芯の銅をおすすめします。

NICEHCK CT1

8芯のOFC線を採用したケーブルです。自然なバランスはそのままに中低音の厚みが増し、全体的に音の質感も向上します。
試した中では最も良い印象でした。下支えとなる低音がワンランクアップしたような変化があり、全体的にどっしりとした安定感のあるサウンドへと変化します。

総評

良い点

  • 全体的にスッキリとした脚色のない自然なサウンド
  • 1DDならではの統一されたバランス
  • 刺さりが少なくストレスのない高音

悪い点(というより気になった点)

  • 個々の音の厚みに乏しい
  • 低音は少し弱め(悪いわけではない)

DB1は中国製格安イヤホンらしくない特徴が無いことを特徴としているサウンドを楽しめるイヤホンです。ぱっと聞いて驚くものではありませんが、NICEHCKだけでなく格安イヤホンの入門機としておすすめしやすい自然なサウンドは好印象です。特徴が無いといっても決して悪い音ではなく2000円という価格を考えれば十分に良い音質を実現しています。
DB1のサウンドを聞いて「低音が物足りない」「もっと派手な音が欲しい」と思ったならNICEHCK CT1などへのリケーブルや、KZなどのドンシャリ傾向のイヤホンを購入するといいでしょう。逆に「もっと音に厚みが欲しい」「クリア感はそのままに質をアップさせたい」と思ったなら同じNICEHCKのDB3やMoondropのイヤホンがおすすめできます。自然な音が気に入ったのならそのままDB1を使い続ければいいだけです。