おはこんばんちは、あぶさんです。
今回は久しぶりにイヤホンをレビューします。約4ヵ月、イヤホンという製品カテゴリでは約5ヶ月ぶりとなります。実のところ、買ったはいいけどレビューしていないイヤホンがいっぱいありまして、今回レビューさせていただく CCA CRA+ も、その中の1つです。
CCA CRA+は2022年に発売された製品です。約4年前の製品ですが、中華ブランドの格安イヤホン、いわゆる Chi-Fi IEM というカテゴリの中で発売当時に高い評価を受け、今でもおすすめされる製品の1つです。私も4年前に購入を検討したものの、購入する機会を逃したまま月日が経ってしまいました。
発売から4年が経った製品をわざわざ購入してレビューを行うなんて意味がないのではと思われるかもしれません。しかし、故きを温ねて新しきを知るという言葉があるように、過去の製品をレビューすることで得られることもあると私は考えています。特に、CCA CRA+というイヤホンは、発売当時だけでなく今となってもおすすめされることがあるほどの製品です。製品サイクルが非常に速いChi-Fi IEMにおいて、4年の時を経ても評価され続ける製品というのは珍しいものです。その価値を見極めることは、Chi-Fi IEMというジャンルを理解することにも繋がり、CCR CRA+のレビューを通してChi-Fi IEMを評価できるのではないでしょうか。

- CCA CRA+ の概要
- CCA CRA+の音質評価条件について
- CCA CRA+の音質
- 総評「4年前のChi-Fi IEMは、もう通用しない」
CCA CRA+ の概要
CCAとはKZのサブブランドです。KZはChi-Fi IEMの代表格とも言える低価格イヤホンブランドですが、そのサブブランドがCCAです。サブブランドも同じような価格帯で同じような製品を出しており、ブランドの差別化がうまくできていない印象があります。
CCA CRA+は、その名前から想像できる通り、CRAという製品が先に発売され、そのアップグレード版がCRA+となっています。PlusやらUltraやらのサブネームでアップグレード版を出す商法はChi-Fi IEMの代名詞とも言えるものですが、KZやCCAから始まったような気もします。
さらに、約2年前には振動版の材質を変更したCCA CRA Proが発売されています。別の名前で出すべきではと思いますが、そもそもKZやCCAのイヤホンにオーディオ的な良さなど求めるべきではないのですから、このようなアップグレード商法がまかり通るのでしょう。
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CCA CRA+ のパッケージ

Chi-Fi IEMではお馴染みの安っぽいパッケージです。KZと同じものであり、このあたりからもブランドの差別化ができていないことが伺えます。
CCA CRA+ の本体

パッケージと同じく、Chi-Fi IEMでよく見かける形をしています。KZブランドは癖の強いデザインが多いのですが、CRA+のデザインは非常に目立つゴールドのメッキカラーにブランド名が大きくプリントされており、KZとは違うベクトルで癖の強さを感じさせます。
複合ポリマーの極薄振動板を採用した10mmのダイナミックドライバー
CRA+はダイナミックドライバーを1基のみ使用する1DD構成です。ドライバーは10mmサイズで複合ポリマーの極薄振動板を採用し、通常版のCRAからアップグレードされたポイントとして大きく宣伝されています。
KZの従来製品や通常版CRAと比較して、より薄い振動版を採用することで高性能をアピールしています。
ケーブルはqdcタイプ2pinを採用

ケーブルはリケーブル可能なqdcタイプの2pinを採用しています。線材は高純度の銀メッキ線としています。
中華ブランドは宣伝するメリットがあることは些細なことでも無駄に書く傾向があるため、素材の詳細を書かないということは、オーディオグレードですらないかもしれません。
いつものフジツボ型イヤーピース(3サイズ)

イヤーピースはKZブランドで広く採用されているフジツボ型イヤーピースです。ハウジングがブラックのスケルトンなので、イヤーピースもそれに合わせてブラックにしてほしかったところです。
イヤーピース自体のクオリティは安物としては悪くないものの、サイズが3サイズしかないため、良いフィット感を得るためにはイヤーピースを変える必要があるでしょう。
CCA CRA+の価格
CCA CRA+(マイクなし)の価格は、国内AmazonのCCA Official Storeが販売するもので3,699円です(2026年2月時点)
そもそもKZやCCAの製品に定価という概念があるのかどうかすら怪しいのですが、とりあえず国内Amazonでは3,699円で手に入れることが可能です。
発売当初は37ドル前後で販売され、国内アマゾンでは約4,700円だったようです。今回のレビューでは、現時点でのAmazon販売価格である3,699円を基準とします。
CCA CRA+の音質評価条件について
エージング(慣らし)について
100時間以上のエージングを終わらせた状態の個体を使用しています。
エージングには手持ちのFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストを使用しています。
付属品について
ケーブルは変更できないのでそのままとして、イヤーピースも付属品を使用します。イヤーピースの交換を行った場合は、その旨を明示します。
評価で使用する言葉について
音質評価に使用する言葉は ITU-R から発行された Report ITU-R BS.2399-0 に準じた単語・表現を使用するようにしていますが、Report ITU-R BS.2399-0 の言葉だけでは、音質を表現するには足りていない部分があります。そのため、独自の表現を使用することもあります。
音質を言葉で伝えることには限界がありますが、その手段を選択している以上、わかりやすい表現を使用して齟齬なく伝えようとする努力を行っています。
ITU-R BS.2399-0 については以下のPDFにて詳細を閲覧可能です。
R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
https://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/rep/R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
評価に使用する音源について
音質評価に使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。
音質評価用プレイリスト内の楽曲については以下の記事で解説しています。
abusan3225.jp
また、Spotify で最大24bitのロスレス配信が始まったことに合わせて、24bit音源のみに限定したプレイリストも作成しました。
イヤホンの装着について
Chi-Fi IEMではケーブルを耳にかけやすくすることを目的として、2pin端子側に熱収縮チューブを使用した曲げ加工が施されています。
この曲げ加工は適切に行われていれば問題ないのですが、多くのChi-Fi IEMでは装着感を悪化させる原因となっています。不適切な曲げ加工は、外耳道に対してイヤホンを適切な角度で装着することを妨げ、音質を大きく変化させてしまいます。これでは、音質のレビューを行うことが困難になります。
このような不適切な曲げ加工が行われた製品をレビューする際は、ケーブルを耳にかけないことで外耳道とノズルの角度を一致させることができ、音質の変化・劣化を最小限とすることが可能です。
CCA CRA+のケーブルでは不適切な曲げ加工が行われているため、耳掛けで装着してしまうと音質が著しく悪化します。このレビューではケーブルを耳にかけない状態で装着することで最適な状態で音質を評価できるようにしています。
評価に使用する再生機器について
CCA CRA+ のレビューでは以下の機器を使用しています。
| ジャンル | 名称 ※1 | ゲイン | 音量 ※2 | フィルター | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 据え置き | SMSL PO100 PRO + SONY STR-AN1000 + iFi-Audio ZEN CAN Signature Standard |
0dB | 17 | --- | ZEN CAN側のボリュームの部を12時位置で固定 AN1000のゾーン3出力で音量を調整 |
| DAP | SONY NW-ZX707 (ZX707) | Low | 35 | --- | ソースダイレクトON 機内モード |
| DAP | HiBy R6 Pro Ⅱ(R6P2) | Low | 28 | Low Dispersion Delay Filter | ABアンプ 機内モード |
| DACドングル | HiBY FC6(FC6) ※3 | --- | 9 | Darwin Ultra | NOSモード HDRオフ |
| スマホ | LG V60 ThinQ 5G | --- | 13 | クリーン | 機内モード |
※1. 音量の調整にはSpotifyで配信されている WONDER POP by Moe Shop を使用しています。音量の均一化を有効化し、音量レベルを低音量にした状態で、私が普段の音楽鑑賞で使用する音量設定に合わせた場合の値です。
※2. FC6はmotorola eddge 50 ProにDDHiFi TC09Sを用いて接続し、スマホ側の音量設定を100%に設定しています。
上記に加え、機器間のインピーダンス差による音質変化を吸収するためのバッファーアンプとして Umbrella Company HP-ADAPTER を使用しています。
客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には可能な限り実際に試聴されることをおすすめします。
CCA CRA+の音質
やや高音寄りの周波数応答
KZのイヤホンから出る音というものは、基本的に特定の周波数帯域を過度にブーストすることで音作りをしています。チューニング方法もドライバーやハウジングの設計によるものではなく、内部配線に抵抗を配置するというオーディオ的な観点からは想像もできない設計を採用しています。以前レビューさせていただいたKZ CastorやKZ Vaderでも抵抗を配置するという手法は採用されており、その音質は褒められたものではありませんでした。
それらと比べると、CCA CRA+の周波数応答は、フラットと言えるほどではないものの概ねバランスの良い印象を受けます。やや高音寄りのU-Shape傾向ではありますが、特定の帯域を過度にブーストしている印象はありません。
CCA CRA+が高評価となった背景には、従来のChi-Fi IEMの常識を覆すバランスの良さを感じさせたことにあるようです。今となってはバランスの良い周波数応答を持つChi-Fi IEMも増えていますから特段驚くようなものでもありませんが、1万円以下の価格帯では非常に珍しいものであったのが4年前だと記憶しています。当ブログでもレビューさせていただいたKBEAR LarkやSGOR Venusなど、Chi-Fi IEMの常識を覆すような音の良さを持った製品が登場したのも4年前の2022年でしたね。
とはいえ周波数応答という要素は音質の入り口でしかありません。CRA+の良いところも悪いところも「やや高音寄りのU-Shape傾向」という周波数応答にあります。より深く、細部まで見ていくことにしましょう。
程よい伸び感があるがシャリ付きが残る高音
巷では通常版CRAよりも高音の伸びが良いという評価を多く見かけました。私は通常版を聴いていないためわかりませんが、確かに女性ボーカルの倍音やフルート、パイプオルガンなどの高音パートが出ていると感じます。
ただし、その伸びが良い伸びかどうかは別の話です。ハイハットやクラッシュなどの鳴り物はシャリ付き、女性ボーカルも粗と刺さりの両方を感じます。確かに伸びはあるものの、質の良さが追いついていません。
個性と捉えることも可能ではありますが、私個人の感覚としては音質の粗として感じます。高音にチューニング不足な部分があるにも関わらず、周波数応答をやや高音寄りのU-Shape傾向としてしまったことも原因でしょう。いわゆるドンシャリタイプなイヤホンなら良いのですが、CRA+のようなバランスの良い周波数応答との相性は良くありません。
基本的には癖のない中音
基本的に癖の少ない音色を鳴らします。ただ、シャリ付いた高音が同時に鳴っているような場面では、中音の中でも高い周波数を持つ帯域(1~2kHz)で中音に高音が付加されるような、いわゆるハイ上がりな印象を受けました。
女性・男性を問わずボーカルでは高音に関わらず顕著に感じられます。これは、ボーカルという音の成分が持つ倍音が影響していることや、人間の聴覚が人の声に対して高い感度を持つことで目立って聞こえていることが大きな要因でしょう。
特に女性ボーカルは明確な音の粗となって感じられます。女性ボーカル曲を聴くには致命的な欠点です。私も女性ボーカルの楽曲を多く聞きますが、CRA+で女性ボーカルを聴くのは難しい印象があります。ボーカル曲への適性はTANGZU wan'er S.Gに軍配が上がります。wan'er S.GはCRA+よりも高音寄りのバランスですが、中音から高音にかけての音質を緻密にチューニングし、女性ボーカル特化型イヤホンとして細部へのこだわりを感じます。CRA+のサウンドは細部に粗ばかり見えてしまい、安物であるという印象が拭えません。
程よく下支えをする低音
低音は個人的な好みではちょうど良いと感じますが、低音をブーストする傾向が強いChi-Fi IEMに慣れていると弱いと感じるかもしれません。
高音のような目立った歪みはありません。ポップスやロックでは特に問題にならないでしょう。しかし、サブベースや立ち上がりから減衰の正確さが求められるようなジャンル(エレクトリック系など)では物足りないと感じます。特に40Hz以下のサブベースは量感が感じられず、EDMやトランス、ユーロビートは苦手です。
空間表現はやや狭く、分離と解像度は価格相応
空間表現はやや狭く、高さや奥行きはほとんど感じられません。よくある左右だけの音場を持つタイプです。緻密な位置関係や距離感の表現にも乏しく、これは空間表現に重要なエアや残響が足りていないことも関係しています。
分離や解像度も価格相応であり、悪くはないものの特段良いと思えるものではありません。
※空間表現:左右だけでなく高さや奥行き、音の位置関係、距離感を表現できているか
※分離:違う、または近い周波数の音を鳴らし分けることができているか
※解像度:音の細部をどこまで描写できるか
詳細分析
Danny Boy by Jacintha
ノイマンのM49で録音された Here's To Ben. A Vocal Tribute To Ben Webster は、優れた女性ボーカルを持つアルバムとしてオーディオファイルから高い人気を誇る名盤です。このアルバムに収録された Danny Boy は、CRA+で聞いてはいけない楽曲の1つでしょう。
本来であれば艶やかで美麗なサウンドを楽しめるはず。しかし、CRA+の中音から高音にかけての帯域は音を歪ませ、Jacintha の美しい絶唱を楽しむには役不足です。
失星 - Layla.
現代の音楽ソフト制作においてコンプやリミッターを使用することは当たり前です。もちろん、音の美しさを追求するのであればコンプやリミッターを使用しないことが最善ですが、現代においては使用しないという選択はほとんど無いでしょう。
CRA+が鳴らす女性ボーカルは、コンプやリミッターがかかった現代の音楽との相性が最悪です。女性ボーカルの艶が無くなり、不快な歪みを鳴らします。
Somewhere - From 'West Side Story' by Leonard Bernstein, Michael Ball, Alfie Boe, Nick Ingman, Czech National Symphony Orchestra, Prague, Royal Philharmonic Orchestra
男性ボーカルにも粗はあるものの、女性ボーカルほどではありません。ただ、ボーカルを楽しむことに耐えられる音質かとなると、やや厳しいと言わざるを得ません。
Attacca Scenery - Altessimo
ポピュラー音楽において粗が強くなる傾向も女性ボーカルと同様です。ボーカル曲を楽しみたいのなら、違う製品を検討すべきでしょう。
モダン・ジュズのテーマ - ポンタ・ボックス
ボーカルを伴わないジャズやR&B、サウンドトラックとの相性は悪くありません。ただし、空間表現には期待できないため、ステージやライブの感覚を楽しみたいのであれば候補から外しましょう。
総評「4年前のChi-Fi IEMは、もう通用しない」
「買う価値なし」「検討の余地あり」「購入候補に入る」「即買い」の4段階で評価します。
私の結論は 買う価値なし となります。
良い点
- やや高音寄りだがU-Shapeでバランスの良い周波数応答
良くない点
- 女性ボーカルの粗
- サブベースの減衰
- 装着感を悪化させるケーブル
好みがわかれるところ
- 高音のシャリ付き
- 低音の減衰不足
CCA CRA+は、登場から4年が経った今となっては買う価値の無い製品です。
高音のシャリ付きや低音の減衰が弱いなどネガティブな部分はありますが、それらはまだ個性として許され、人によっては好ましいと言えると思います。しかし、私の評価としては歪みと呼ぶべきものだと思います。
特定の周波数帯域を過度にブーストする行為をしなかったことは良い点ではありますが、肝心のチューニングにコストをかけるという発想は無かったようで残念です。結局のところ、名前を変えてもやることは大きく変わらず、実態は価格相応か価格以下という有様です。
そして残念なことにKZやCCAブランドは、この4年前のイヤホンにすら劣るような新製品が矢継ぎ早に発売されています。大言壮語な宣伝やスペックを使用しながら、実際のサウンドが乖離し、サウンドの方向性すらあやふやです。
宣伝に使用される謳い文句やスペック表の数字では音質は決まりません。実際に聴いた結果が全てです。いくら高音質やハイレゾという言葉で飾っても、サウンドにそれが含まれ表現できているかどうかは別問題です。残念ながら、KZやCCA以外の中華オーディオブランドでも、良いサウンドではなく宣伝とスペックを聴かせる偽物が増えている印象があります。
安いイヤホンを多く集めて違いを楽しむという趣味は否定しませんが、そのサウンドが本当に良いものかどうか、考え直す時が来ているのではないでしょうか。CCA CRA+のレビューを行いながら思ったことです。