おはこんばんちは、あぶさんです。
今回はEKSAtelecomのS30というオープンイヤーワイヤレスヘッドセットをレビューします。
発売当初は本製品以外にオープンイヤー & ワイヤレス & ヘッドセットという組み合わせはなく、ありそうで意外と無かったタイプの製品です。2025年5月に final から KDT3000 が登場したことで唯一無二ではなくなりました。
EKSAtelecomとは
EKSAtelecom は Nonabyte Group を母体とする業務用通信機器に特化したブランドであり、これまで長距離ドライバーやオフィス向けの通話用ヘッドセットを多く作ってきました。系列にはゲーミング向けの EKSA があります。
2023年に Kickstarter にて S30 のクラウドファウンディングが開始され、2024年3月頃に発売されました。日本国内では特に話題になっていなかったのですが、周囲の音を直接効きながら通話する必要がある人には最良の選択肢であり、高い評価を受けています。
S30 の概要
クリックで展開
パッケージ
少々大きめなサイズですが、特に奇をてらったようなものではありません。特に言うことがないパッケージです。
本体
収納ポーチ
製品は収納用のポーチに入っていますが、このポーチが非常に大きいため持ち運び時に難があります。
ポーチの中には充電ドッグと充電用USBケーブルが入っており、長時間の運用には充電ドッグが必須となります。そのため、必然的にポーチも持ち運ぶ必要があります。


ZX707 や Aerox3と比較すると大きさがよくわかるかと思います。


カバンの中に入れておくには邪魔になってしまうサイズ感です。同ブランドの他の製品と同様に長距離ドライバーやオフィス向けであり、ポータブルという要素はあまり考えられていないのでしょう。
イヤホン本体

本体は耳掛け型のオープンイヤーそのものな形をしています。左側にあるブームマイクがヘッドセットであることを主張しています。
耳掛け部分はある程度の調整が可能です。素材もシリコンを採用して装着感が考えられています。

マイクは回転させて収納することが可能です。充電ドッグでの充電時は、この状態で行う必要があります。
マイクにはマイクミュートボタンがあるため、ホスト機器を操作しなくてもマイクミュートが可能です。
S30のスペックについて
S30のスペックについて氷にまとめました。
| 機能名 | 概要 |
|---|---|
| スタイル | オープンイヤー |
| サイズ | 約60 x 60 x 35mm |
| 重さ(ケース含む) | 約112g |
| 重さ(右) | 約14.5g |
| 重さ(左) | 約17.5g |
| 防塵・防水規格 | IPX5 |
| ドライバー | 16.2mmダイナミック |
| 再生周波数帯域 | 20Hz ~ 20 kHz |
| 通信規格 | Bluetooth 5.3 |
| 対応コーデック | SBC, AAC |
| 対応プロファイル | A2DP, AVRCP, HFP, HSP, SPP |
| 連続再生時間 | 最大16時間(ボリューム70%) / 70時間以上(ケース充電含む) |
| 連続通話時間 | 最大9時間(ボリューム70%) / 48時間(ケース充電含む) |
| 充電時間(ケース) | 不明 |
| 充電時間(本体) | 約2時間 |
| 充電方法 | USB Type-C |
| ノイズキャンセリング | なし |
| マイクノイズキャンセリング | あり |
| マルチポイント接続 | 対応 |
| 専用アプリ | なし |
| パッケージ内容 | 本体, ケース, 充電ドッグ, 充電ケーブル, 説明書 |
スペックからわかることとしては
- IPX5なので屋外での使用でも問題なさそう
- 9時間の連続通話はドライブ通話などでも十分なスペック
- イヤホンとしてはやや重い
- 専用アプリが無いため操作方法のカスタマイズなどはできない
などが挙げられるでしょう。
価格
EKSAtelecom の公式サイトでは日本円で22,500円となっていますが、Amazon の EKSAtelecom 公式ストアでは16,980円で購入可能です。Amazon倉庫発送となっているため、特に理由がない限りはAmazonでの購入をおすすめします。
音質の評価条件について
クリックで展開
エージング(慣らし)について
レビューでは原則として100時間以上使用した個体を使用しています。
今回は製品の特性に合わせて通話を200時間以上使用した個体でのレビューとさせていただきます。
付属品について
ドッグの充電のみAnkerの充電器と充電ケーブルを使用しましたが、それ以外で付属品以外を使用してはいません。
評価で使用する言葉について
原則として、音質評価に使用する言葉は ITU-R から発行された Report ITU-R BS.2399-0 に準じた単語・表現を使用するようにしていますが、必ずしも一致するとは限りません。
ITU-R BS.2399-0 については以下のPDFにて詳細を閲覧可能です。
R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
https://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/rep/R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
評価に使用する音源について
音質評価に使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。
音質評価用プレイリスト内の楽曲については以下の記事で解説しています。
abusan3225.jp
評価に使用する再生機器について
以下の機器を使用してレビューを行っています。
ワイヤレスのヘッドセットということでDAPではなくスマートフォンを使用してのレビューとなります。スマホ側のサラウンド設定などは全てオフにしています。
| 機種名 | 音量 ※1 | 備考 |
|---|---|---|
| motorola edge 30 pro | 50% | Low Dispersion Delay Filter | --- |
| Apple iPad mini 7 | 8 | Darwin Ultra | --- |
※2. 音量の調整にはSpotifyで配信されている WONDER POP by Moe Shop を使用しています。音量の均一化を有効化し、音量レベルを低音量にした状態で、私が普段の音楽鑑賞で使用する音量設定に合わせた場合の値です。
客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には可能な限り実際に試聴されることをおすすめします。
音質
いつもであればオーディオ再生における音質からレビューを行うのですが、S30はオーディオ的な用途を目的としたものではなく、あくまでも 周囲の音を聞きながら快適に通話ができること を目指した製品です。そのため、いつもと違いオーディオ的観点からの音質評価は最小限とし、通話における品質において重点的にレビューします。
通話品質 - スピーカー
S30を使用して友人との通話や多人数が参加するビデオ会議など様々な環境での通話を行いました。
結論として、S30での通話音質面は非常に快適でした。人の声が聞き取りやすいようにチューニングされているため通常の通話で問題になることは無いでしょう。ボリュームの調整範囲も大きく取られているため、ターミナル駅のホームやドライブ中など、騒音が大量にある状況でもボリュームを大きくすることで容易に対処できます。多人数が参加するようなビデオ会議でも全く問題ありませんでした。
通常のカナル型ワイヤレスイヤホンでは耳を塞いでしまうため自分の声が不自然に聞こえますが、S30は耳を塞がないためそのような違和感もありません。ゲーミングヘッドセットのサイドトーンや、オーディオインターフェースを利用したマイクモニタリングよりも自然に声を出すことが出来ます。
通話品質 - マイク
次はマイクです。マイクの音質は非常に重要です。ビデオ会議での音質は認知機能に負荷を与え、ストレスを引き起こすことで内容の理解が阻害されてしまうという研究結果もあります。(1)
また、周囲の騒音がマイクに入ってしまうと、相手に声が届かず、通話が成り立たなくなる可能性もあります。通話によるコミュニケーションにおいてマイクの品質は非常に重要なのです。
S30のマイク音質は一般的なワイヤレスイヤホンを遥かに凌駕します。ブームを持つことでマイクが口に近くなっていることや、声を拾うためのマイクとは別にノイズキャンセル用のマイクを4つ持っていること、そしてAI技術を利用した独自のノイズキャンセルアルゴリズムが効果的に働いているのでしょう。
S30を使用した通話時にマイク音質が悪いという指摘を受けたことはなく、むしろワイヤレスとは思えないほど良いという評価が多かったです。
オーディオ的な音質
オーディオ的な観点から見た音質は、悪くはないが同価格帯のオープンイヤーワイヤレスと比較できるようなものではないと言ったところです。当ブログでもレビューさせて頂いた SOUNDPEATS GoFree2 と比較すると少し良いと感じますが、約1万円弱の価格差を考えるとオーディオを目的として購入する製品ではないでしょう。
全体的に明瞭度が低く感じられ、特に高音の音質は厳しいものがあります。ボーカルの聞き取りやすさやタイトに感じられる低音など良い部分もありますが、総じてオーディオ的な観点で評価すべきではありません。とは言え音楽を聞けないという程でもなく、音楽を破壊しないレベルの音質は持っています。音楽を聞きたいと思える最低限のレベルはクリアしている音質です。
利便性
利便性は非常に重要です。音質が優れていたとしても、バッテリーがすぐに無くなってしまっては意味がありません。装着感が悪ければ使いたいとも思わなくなってしまいます。
装着感は良いが最良とは言えない
装着感は良いと感じました。ただ、耳掛け部分(イヤーループとも言います)が少し太いため、SOUNDPEATS GoFree2 や final KDT3000 と比べると耳につけているという感覚が強くなります。12時間ほど付けっぱなしにしたことがありますが、流石にちょっと耳が痛くなりました。
イヤーループは手で曲げることが出来ます。うまく調整することで装着感を改善することが可能です。しかし、ライバルである KDT3000 に対して装着感で勝ることができない理由は他にあります。それは S30 の重量が重たいことです。
KDT3000 は片耳で約9gなのに対し、S30 の重量は片耳で14.5gあります。マイクが付いている左側では17.5gに達します。10gを大きく超える重量は無視できず装着感に大きな影響を及ぼしています。また、長時間の使用では汗により徐々に位置がズレてしまうことがありました。
バッテリー
メーカーは通話での連続使用時間について9時間と公表しています。これは概ね正しく、最長で9時間強の連続使用を記録しました。
また後述する S30 ならではの機能によって通話と通話の間に充電することが容易です。
意外と便利な充電ドッグ
充電ドッグの機能は充電だけではありません。写真に写っているオレンジ色のボタンを使用して、本体の電源ON/OFFやマルチポイント接続の操作が可能です。

S30 の非常に便利な仕様の1つに、充電ドッグに戻しただけでは電源がOFFにならないというものがあります。通常のワイヤレスイヤホンではケースに戻して充電状態にすること = 電源OFFを兼ねています。逆にケースから取り出すことは電源をONにすることです。しかし、S30 はケースから取り出しただけでは電源はONにならず、戻しただけでも電源はOFFになりません。イヤホン本体、もしくはドッグのボタンを操作して電源ON/OFFを操作する必要があります。
なぜこれが便利なのかと言いますと、スマホなどのホスト機器との接続を維持したまま充電ができるという点にあります。ポーチからドッグを取り出して机の上に置いておき、通話が終わったらドッグに指しておく。そして電話がかかってきたり、新しく通話を始めるときにはドッグから取り出して耳につけるだけで良いのです。
片耳だけの使用は難しい
片耳だけの使用にも対応はしています。ただ、ブームマイクは左側にしかついていないため右側だけを使用して通話することはできません(通話用マイクがついていない)
また、充電ドッグでの電源ON/OFFは左右両側がドッグに入っている場合のみ動作します。
KDT3000 はブームマイクを左右どちらでも装着できるため、片方ずつ使用することが可能です。
KDT3000との比較
お互いに意識しているかどうかは不明ですが、実質的なライバルである final KDT3000 と比較してみましょう。
なお、KDT3000 については試聴や友人からのレンタル、また友人の評価が含まれます。
音質
S30 のほうが優れています。KDT3000 の音質は非常に悪く、特にオーディオ的な観点での音質は final の製品であることを疑うレベルです。
また、KDT3000 は音量が上がりづらく、ボリュームを最大まで上げなければ実用レベルの音量を得られません。
マイク音質
どちらも優れています。通話において相手からマイク音質についての指摘を受けることは無いでしょう。
装着感
KDT3000 のほうが優れています。S30 は長時間の使用において耳が痛くなる可能性があります。
操作
S30 は物理ボタン、KDT3000 はタッチ操作になります。KDT3000 はブームマイクを装着した側でのタッチ操作ができません。
S30 はブームにマイクミュートボタンがありますが KDT3000 にはありません。
バッテリー
S30 は通話にて9時間強の使用が可能です。友人によると KDT3000 は1時間半しかバッテリーが持たないようなので、S30 の圧勝ということになります。
KDT3000 は短時間の通話であれば問題ありませんが、長時間の通話には全く使えません。KDT3000 は片耳だけで使用できるため、左右を交互に使用することで3時間ほどに伸ばすことは可能ですが、それでも厳しいものがあると思います。
価格
S30 は Amazon での公式価格で16,980円です。final KDT3000 は定価15,800円ですが、売れ行きが芳しくないのか値下がりが続いており、eイヤホンにて13,509円、最安では13,390円で購入可能です。
約3500円の差は大きいのですが、様々な要素を考えてコスパを判定すると S30 に軍配が上がるかと思います。
総評「ドライブ通話に最適なオープンイヤーワイヤレスヘッドセット」
良い点
- ノイズに強いマイク
- 人の声を聞き取りやすい音質
- オープンイヤーならではの開放感
- 周囲の音がそのまま聞こえる
- マルチポイント接続対応
- イヤホン側でマイクミュートが可能
- 実用的なバッテリー持続時間
- 接続を維持したまま充電が可能
良くない点
- オーディオ的な観点での音質は価格相応ではない
- 長時間の使用では装着感に難がある
- 片耳だけでは使用できない
- ポータブルに適さない
EKSAtelecom S30 は非常に優れたヘッドセットです。ノイズに強いマイクに、通話に適した音質のスピーカーが付いています。そして何より、耳を塞がないことが最大の利点です。
特にドライブ中に通話をすることが多い人であれば購入する価値があります。今すぐAmazonにアクセスしてカートに入れましょう。良いマイク音質は通話相手にも良い印象を与えるでしょう。
購入してから約5ヶ月に渡って使用しましたが、特に相性が良いと感じたシチュエーションはドライブ中の通話です。それまでは車の内装に埋め込まれたナビと接続されたマイクを使用していましたが、ノイズを拾いやすいため良い環境とは言えませんでした。S30 に切り替えたことで自身の通話環境だけでなく、通話相手へ与えるストレスも大幅に軽減されました。
ライバル商品として final KDT3000 がありますが EKSAtelecom S30 と比べると難があります。本当に final のブランド名を冠した商品なのか疑いたくなるほどにダメなところが多く、定価である15,800円で購入を勧められるものではありません。final KDT3000 を購入した友人は「finalの製品であることを疑うレベル」と評していました。
EKSAtelecom は中国製ですので、どうしても国産メーカーが良いというのであれば final KDT3000 を購入することを止めはしません。ただ、私個人の評価としては EKSAtelecom S30 の購入を推奨します。
参考文献
(1) 株式会社NTTデータ経営研究所, "WEB会議における疲労感の原因が判明:認知機能に負荷を与え、ストレスを引き起こすオンライン会議の音質〜NTTデータ経営研究所とShureが共同で実証実験を実施〜 | ニュースリリース | NTTデータ経営研究所", "株式会社NTTデータ経営研究所 | 新しい社会の姿を構想し、ともに情報未来を築く", https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/220613/, 2022, (2025-08-23)