Abusan’s Journey

Photography, Drive, Journey, Camera, Audio, IM@S by abusan3225(あぶさん)

TKZK TK01 レビュー「ただ面白いだけで終わらない低価格イヤホン」

おはこんばんちは、あぶさんです。
今回は2,000円以下という超低価格で購入可能なイヤホン「TKZK TK01」をレビューします。
既に上位機(後継機?)となるTKZK TK02が発売されています。TK02も購入済みでして後日レビュー予定ではありますが、諸事情でTK01が塩漬けになっていました。

外観・特徴・スペック

クリックで展開

パッケージング

TK01のパッケージはどこかで見たことがある質素なタイプです。実はこのパッケージ、KBEARの低価格イヤホン「Storm」や「Flash」で使用されているものと同じサイズ・同じ構造をしています。おそらく製造を委託している工場が同じなのでしょう。簡易な構造のパッケージで特に見るべきところはありません。

本体

本体は低価格イヤホンでよくあるプラスチック製のシェルとフェイスプレートを張り合わせた構造です。
シェルの内部は非常にシンプルで2pin端子とドライバー、それらを接続する内部配線のみです。2pin端子とドライバーの周囲には支えとなる構造がありますが、それら以外の部分には突起物がありません。不要な反響を抑えるために内側の不要な突起を少なくしているのでしょうか。
フェイスプレートにはTKZKのロゴがプリントされています。成形時にグリッターのようなものを入れることでレジンを使用したかのような立体的なデザインを施しています。

シェルには音圧調整用の小さな穴が2箇所に設けられています。ノズルはプラスチック製でイヤーピースを保持するための出っ張りがあります。

カラーバリエーションはブラック、グリーン、パープル、ホワイトの4色です。パープルはフェイスプレートとシェルで色が違い、フェイスプレートがパープルでシェルがブルーとなっています。
マイク付きケーブルが付属したバリエーションもありますが、この手のマイクは期待しないほうが良いでしょう。音質面でもマイク無し版をおすすめします。

スペック

TK01はダイナミックドライバーを1基のみ採用する1DD機です。
ダイナミックドライバーには「Nanoscale Composite diaphragm」を使用した振動板と「Tesla magnetic circuit」を採用したとされています。テスラは磁石の強さを数値化するときに使用する単位の1つで磁束密度を示すだけですし、振動板も珍しいものではなく品質も定かではありません。 このように平凡なカタログスペックや何でも無いコンポーネントの名前を並べて良く見せようとするのは中華低価格イヤホンの常套手段です。

インピーダンスは22Ωと比較的低めで感度も106dBと高めです。スマホや1万円以下のDACドングルでも音量が不足するということはないでしょう。

付属品

ケーブルは2芯構造のOFC線です。SGOR VENUSなどにも採用されていた構造のもので、少しタッチノイズがありますが癖のつきにくいケーブルです。

イヤーピースはグレーの汎用品が3サイズ付属します。なぜかLサイズのみ黒に近い色となっています。
柔軟性が悪く、装着感は褒められたものではありません。最低限使用に耐えうるというレベルですので、耳の形によっては何かしら他のイヤーピースを用意する必要があるかもしれません。

その他の付属品は取扱説明書のみです。説明書にはサンキューカードや保証書、持ち運び用のポーチも含まれていると記載されていますが入っていませんでした。箱の底に日付入りの合格印が押されているため一応の品質保証はされているようです。

価格

TK01はAmazonにてYinyoo-JPより定価1,999円(税込)で販売されています。ほぼ常に10~15%オフクーポンが配られている状態でしたが、2024年11月29日時点ではブラックフライデーセールが行われていますのでクーポンに頼らずとも25%オフの価格で購入可能です。 中国からの輸入ではAliExpressのWooeasy Earphones Storeを利用することになりますが、差額はほんの僅かなのでAmazonでの購入をおすすめします。

グリーン, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 1,499円(定価1,999円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0CLL8CSZ2

パープル, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 1,499円(定価1,999円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0CLL97L3F

ブラック, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 1,499円(定価1,999円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0CLL94RP6

ホワイト, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 1,499円(定価1,999円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0CLL8MCGF

音質の評価条件について

クリックで展開

エージング(慣らし)について

100時間以上のエージングを終わらせた状態の個体を使用しています。
エージングには手持ちのFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストを使用しています。

付属品について

ケーブル、イヤーピースはどちらも付属品を使用します。イヤーピースの交換やケーブルの取り換え(リケーブル)を行った場合は、その旨を明示します。

評価で使用する言葉について

原則として、音質評価に使用する言葉は ITU-R から発行された Report ITU-R BS.2399-0 に準じた単語・表現を使用するようにしています。
ITU-R BS.2399-0 については以下のPDFにて詳細を閲覧可能です。コミックマーケット105(C105)では ITU-R BS.2399-0 を解説した同人誌を頒布する予定です。

R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
https://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/rep/R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf

評価に使用する音源について

音質評価に使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。

音質評価用プレイリスト内の楽曲については以下の記事で解説しています。
abusan3225.jp

評価に使用する再生機器について

以下の機器を使用してでTKZK TK01のレビューを行っています。

機種名 ※1 ゲイン 音量 ※2 フィルター 備考
HiBy R6 Pro Ⅱ(R6P2) Low 28 Low Dispersion Delay Filter ABアンプ
HiBY FC6(FC6) ※3 --- 8 Darwin Ultra NOSモード
HDRオフ
SONY NW-ZX707 (ZX707) Low 30 --- HiBy Musicアプリを使用
ソースダイレクトON

※1. 括弧内は記事中で使用する略称です。
※2. 音量の調整にはSpotifyで配信されている WONDER POP by Moe Shop を使用しています。音量の均一化を有効化し、音量レベルを低音量にした状態で、私が普段の音楽鑑賞で使用する音量設定に合わせた場合の値です。
※3. FC6はmotorola eddge 50 ProにDDHiFi TC09Sを用いて接続し、スマホ側の音量設定を100%に設定しています。

客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には可能な限り実際に試聴されることをおすすめします。

レビュー

良い点

  • 低音強めなU-Shapeで個性がある周波数特性
  • 音の質に粗はあるが価格相応

良くない点

  • 中高音で擦過音が目立つ
  • 全周波数帯で感じるノイズ
  • 高さが出ない空間表現
  • 装着位置によって変わりやすい周波数特性

音質というものは僅かな違いが大きな差を生み出す領域であり、3,000円以下という低価格はチューニングだけでなく部品や材料の選定、製造時の品質管理など、音質を良くすることができる要素を見つけることが難しい価格帯です。低価格イヤホンが音の良さではなく音の面白さで勝負してきた理由でもあります。
低価格イヤホンは聞き始めこそ面白さが勝るので楽しめるのですが、長く使っていくうちに面白さよりも質の低さによる歪みや粗によって不快感が勝ってしまいます。そこでリケーブルなどで延命を試みたとしても、安いイヤホンに安いケーブルを組み合わせても安い音であるという事実は覆せません。
TK01の音質にも歪みや粗はありますし細かい部分を挙げていけばキリがありませんが、大きく目立つようなものではなく、価格相応という枕詞は必要なものの不快ではない範囲に収まっています。低価格イヤホンならではの面白さがありながら質の良さでも光るところがあり、音楽として破綻させない範囲で楽しませようとしています。
普段は50,000円クラスを使っていたとしても、時折思い出したように箱から出して聞いてみると「これも良いな」とは思えるでしょうし、今日使うイヤホンの選択肢から外れない最低限の音質はあると感じました。
とは言え価格相応で低価格イヤホンマニア向けであるということもまた事実です。初心者が手を出して良い製品ではありません。

高音

TK01の高音は中音より強く低音より少し弱いと感じますが埋もれることはありません。
不快な刺激とまではならないもののシャープ過ぎると感じたり、開放的でスッキリしているため聴きやすいとは思いますが、どこか雑味が混じっていてクリアではなかったり、価格相応な印象ではあります。

中音・ボーカル

中音は少し凹んでいます。粗はありますが大きく目立つようなものではなく、音楽を楽しむうえで最低限のレベルはクリアしている音質だと感じました。
ボーカルも同様に凹んでいて、少し鼻にかかるような印象があります。バラード曲などのボーカルを主体としてゆったりと聞くような楽曲では目立ちますが、アップテンポな楽曲ではそれほど気になりません。

低音

低音はサブベースまで出ていて最低限の品質はクリアしています。
TK01の低音における問題は、響きや深さについてのバランスがミッドベースとサブベースの間で取れていないところに原因があります。
ミッドベースは硬すぎますし、サブベースは不要な残響を制御できていないのか滲みやすい傾向があります。そこに高さが足りない空間表現が影響することで低音の深さが足りなくなり、中音や高音よりも目立ってしまっています。
個性として認められる範囲の音質ではありますし、好みの違いやよく聞く楽曲のジャンルによって評価が変わりやすいところでしょう。音楽を破綻させてしまうようなレベルの問題ではありません。

装着感

TK01の装着感はお世辞にも良いとは言えません。その大部分はケーブルとイヤーピースが原因です。
ケーブルは耳掛け部分に熱収縮チューブによる癖付けがされていますが、これがまた耳の形を一切考慮していないようなカーブを描いていることで耳介に引っ張られる形でイヤホンの装着位置が安定しません。これはTK01に限らず低価格イヤホンで多く見られる欠点です。
イヤーピースは質の良さを微塵も感じさせないグレーの安物が付属します。これがまた安定した装着を阻害しています。イヤーピースをKBEAR 07などの定番品に交換するだけで装着感は大きく改善します。
最大の問題点は装着する位置によって音質が大きく変わることです。耳の穴に入れる深さによってサブベースの強さが大きく変わります。低音、特にサブベースが強すぎると感じる場合は浅めに装着すると良いでしょう。

総評

TK01は低価格イヤホンマニアに向けた製品としては良いイヤホンでしょう。面白さだけで終わらない音質の良さを感じさせてくれますし、細かい粗も個性として割り切って楽しめるレベルです。
TK01というイヤホンを簡潔に表現しますと、良い点と良くない点が同居していて、ちょっとだけ良い点が勝っているイヤホンです。個人的に低価格イヤホンは製品寿命が短い印象があったのですが、TK01は少し長く使えそうだなと思いました。

TK01の良くない点についてはイヤーピースの交換だけでも大きく改善します。ノズルが最近のイヤホンとしては細いことから軸が細いイヤーピースも使用できます。
面白い方向なら軸が太めのものを、質の良さを求めるなら軸が細めのものを選ぶと良いでしょう。おすすめは装着感と音質を両立しながら安価で手に入るfinal Eタイプです。低価格イヤホン全般に言えることですが、付属イヤーピースをちょっと良いものに変えて+500円くらいの価格で販売すれば良いのになと思うことが多々あります。
リケーブルについては2,000円くらいの純銅線などの最低限のものを選択しましょう。銀メッキや純銀線はケーブルの癖が出やすく、変化は大きくなりますがバランスを壊しやすい傾向があります。

既に後継機(上位機?)が世に出ていますが、あえてこちらを購入するという選択肢もアリなのではないでしょうか。