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KBEAR Rosefinch 朱雀 レビュー「リケーブル前提だが、ウォームサウンドで深く沈み込む低音が楽しめる雰囲気重視イヤホン」

おはこんばんちは。今回はKBEARの朱雀というイヤホンをレビューします。

KBEAR 朱雀は同ブランドのKS2というハイブリッドイヤホンから派生したシリーズの1つで、KBEAR Larkのブラッシュアップ版という位置づけです。
LarkやKS2が1DD+1BAのハイブリッド構成だったのに対し、朱雀は新しい素材を採用した新型10mmダイナミックドライバーを採用することで1DD構成となっています。
AmazonではWTSUN Audioから定価3299円で販売されています。ほぼ常時15%オフクーポンが使用可能ですので実質3000円以下で購入可能です。

外観・特徴

パッケージはLarkやRobinのような大きいものではなくKS2のような小さいものになりました。

Larkや上位機のRobinと同じく、ベースとなったKS2と同じ形状のハウジングを流用していることは変わりません。
フェイスプレートも金属製で、LarkやRobinとは違うデザインが施されています。金属製のフェイスプレートを採用したことでKS2と比べるとやや厚みのあるデザインとなっていますが、装着性に関してはLarkやRobinと同様に非常に良いと感じました。

左からRobin、朱雀、Lark、KS2、VENUS、DB1です。
共通のハウジングとフェイスプレートが使用されていることがよくわかります。

ケーブルはKBEARの低価格機でお馴染みの安っぽい4芯OFCです。KS2やRobinと同じものかと思ったのですが編み方が変更されていました。
イヤホン側の端子にはカバー付きのTFZ 2pinコネクタが採用されていますが、朱雀のケーブルは2pin端子がやや短くなっています。
イヤーピースは3サイズ計3ペアが付属するはずなのですが、本体に最初からMサイズが装着されていたため合わせて3サイズ系4ペアが付属していました。
こちらも格安中華イヤホンでお馴染みの汎用品です。

音質

朱雀の音質は中低域が強い暖色系で、全体の響きや滑らかな繋がりを重視したムーディーなサウンドです。低音寄りで高音が弱いバランスのためか、全体的に少し曇ったような印象もあります。
1DD構成ということでKS2シリーズの中では異端児だと思っていたのですが、Larkのようなはっきりとした鳴らし方ではなくKS2やRobinと同様の傾向を持っています。言ってしまえばKS2の高域用BAを取っ払ってDDでフルレンジを鳴らしているという音です(実際にはKS2とは別物のDDを使用しているはず)
格安中華イヤホンで多く見られる個々の音をはっきりと鳴らす元気系ドンシャリではなく雰囲気や空気感を重視した聞きやすいサウンドです。低価格機でこういう音を出すと特に中音域で粗が見えやすいのですが、同価格帯と比べて中音の粗は控えめな印象でした。
定位感は思ったより悪くありませんが、分離が悪い音源をしっかりと分離してくれるような解像度は持ち合わせていません。あくまでも標準的な解像度にとどまります。

高音

朱雀の高音はかなり控えめなバランスです。刺激はかなり少なく、どうしても曇りがなくならない音のため物足りなさは感じますが、硬質な質感を持った音を一つ一つ丁寧に鳴らします。
超高域となると流石に鳴らしきれていない印象があります。倍音成分も苦手なようで、フルートやバイオリンなどの倍音成分を楽しむ音を聞きたいなら朱雀は選択肢に入らないでしょう。
もう少し超高域まで鳴らしてくれていれば曇りの取れた上質な音になったのではと思うのですが、この価格帯の1DD機ではまだそのレベルを求めてはいけないのかもしれません。

中音

特に変な癖はなく聞きやすく整えられています。高音と低音の刺激で誤魔化すようなサウンドではないため中音の粗が目立つかと思ったのですが、同価格帯のライバルと比べても良いと感じる鳴らし方をします。
無論、100ドルオーバーの価格帯と比べれば個々の音の質感は劣ります。やや湿っぽさを感じる滑らかな質感は素直に良いと感じますが、やはりどこか曇ったような鳴らし方が気になります。

ボーカル

全体的に低音寄りのバランスで鳴るためボーカルもやや低音側が強いのですが、女性ボーカルの伸びも十分に楽しめる印象です。
尖っていたり刺さったりザラつきがあったりと、ボーカルは低価格機で最も粗が見える部分です。
朱雀のボーカルは中音と同様に滑らかな質感があります。やや凹みがちなところはありますが、十分にボーカルを楽しめる音質だと思いました。

低音

低音はミッドベースからサブベースまでバランス良く鳴らし、高音と違ってはっきりと前に出てくる印象があります。
しっかりとした量感があり、十二分にタイトで分離の良い音で、やっぱりダイナミックドライバーから出る低音はこうでなくっちゃと思える良い低音です。深く沈み込むように響くサブベースもしっかりと鳴らします。
他の音と比べてちょっと前に出過ぎな印象があり、分離自体は良いのですが他の音と被り気味なところが気になります。

リケーブル

朱雀は他のKBEARブランドと同様に2pin端子でのリケーブルに対応しています。
付属ケーブルはTFZタイプの2pinですので、通常タイプやCIEMタイプでもリケーブルは可能です。ただし、2pin端子がかなり緩めに調整されているためできる限りはTFZタイプを選びたいところです。
付属ケーブルでも十分満足できる音質ですが、いくつかのケーブルを試してみました。

JSHiFi Shadow

単純な銀メッキ線という最も扱いやすいタイプで、お値段も2000円以下と手頃なため低価格機と合わせやすいケーブルです。銀メッキ線は全体的にスッキリとした方向への変化を期待できます。
全体的に感じていた曇りが取れてスッキリ感が出ました。音のバランスもやや高音側へシフトするような印象です。少し音の質感が荒れる印象があるところが欠点でしょうか。

KBEAR KBX4905 韻

単結晶銅と銀線をミックスしたケーブルです。
Shadowと同様に高音側へバランスがシフトする印象と全体がスッキリするような変化があります。
Shadowと違うところは湿っぽい滑らかな質感はそのまま残してくれます。個々の音の繋がりや空気感を重視した朱雀のサウンドはそのままに、全域で曇りが取れて見通しの良さを感じる方向へと変化します。
朱雀と合わせることを前提としたのではと思うほどに好印象です。朱雀を買うならこのケーブルも必ず同時購入して欲しいと思うくらい相性が良い組み合わせです。

KBEAR KBX4913

KBEARの低価格純銀線ケーブルです。通常価格5360円でも純銀線としては破格なのですが、セール時は3000円台後半で購入可能というコスパ最強ケーブルです。
Shadowや韻と同様の変化がありますが、特に中音域で音質の改善が顕著に感じられました。
全体のバランスとして低音が強いことに変わりはありませんが、高音の刺激も十分楽しめるようになります。

総評

良い点

  • 空気感と繋がり重視なムーディーサウンド
  • 全体的に湿っぽく滑らかな暖色系

悪い点

  • リケーブル前提の音質
  • 付属ケーブルだと価格相応感がある

朱雀は付属ケーブルでの評価は同価格帯と比べてちょっといいねくらいなのですが、リケーブルした際の音質は非常に良いと感じました。
本体にプラスしてリケーブル代を考えなければいけないという弱点はありますが、2000円以下のケーブルでも十分に音質の向上を感じられます。
音質とコストのバランスをとるならKBX4905が最も良い選択肢でしょう。セール時の価格であればKBX4913でも良いと思います。
リケーブル後の音質であればKS2シリーズの中では最もおすすめできるイヤホンです。リケーブルを考えないのであればLarkのほうがいいでしょう。