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Kiwi Ears Cadenza レビュー「5000円台でベリリウムドライバー(自称)搭載イヤホン」

今回はKiwi EarsのCadenzaというイヤホンをレビューします。

CadenzaはKiwe Earsの中で最も安価なイヤホンで、ベリリウムドライバー採用を謳いながら日本円で5000円ほどという破格のお値段で話題になりました。
振動板にベリリウムを採用すると音質を飛躍的に向上させることができます。しかし、ベリリウムという素材は非常に高価で、純粋にベリリウムのみで振動板を成形したイヤホンは最低でも3万円オーバーの価格がつけられています。
そんな中でベリリウム採用を謳いながら180ドルで販売されたKBEAR Believeなど、怪しさを感じるレベルで安価なベリリウムドライバー採用イヤホンがありました。Cadenzaも商品ページでは「ベリリウムドライバー採用」と謳われています。

10mmベリリウム振動板という文言が使用されています

通常、ベリリウム振動板というとベリリウムそのものを振動板の素材として使用することを指しますが、CadenzaはBelieveよりも遥かに安価です。はてさてどういうことでしょう。
真偽の程はわかりませんが、とりあえずベリリウム振動板を採用した10mmダイナミックドライバーを1基構成としたイヤホンとしてレビューします。

外観・特徴

見た目はかなりかっこいいです。フェイスプレートの模様はやや立体感が出るようになっていて純粋にいいなと思います。
カラーリングはグリーン、パープル、ブルー、レッドの4色用意されているので色を合わせたリケーブルをすると統一感が出て良いと思います。

ケーブルは黒くて細い何の変哲もない4芯ケーブルです。
2pinでのリケーブルに対応しています。

イヤーピースは3種類3サイズの計9ペアが付属します。
イヤーピースごとになにか特性が変化するということはなく、とりあえず汎用品の安物をいっぱい入れただけという印象です。

音質

この価格帯の中華格安イヤホンでよくあるタイプのはっきりと鳴らす元気系タイプです。
僅かにV字、もしくはフラットなバランスを持っています。個々の音の分離感がかなり高いため、レジンシェルのため少し抜けが悪い部分があれど全体的にはスッキリとしたサウンドです。
元気系のいわゆるドンシャリでありながら分離の良さによってボーカルにフォーカスしやすいためボーカル曲が聞きやすい印象を受けます。
言ってしまえばちょっとお高めのイヤホンの音をドンシャリ方向へ味付けしてみました的な音ですね。細かく聞いていくと価格なりの粗はあるので価格以上とは言えませんが、楽しく聞けますしアリよりのアリな音です。

高音

Cadenzaの高音はやや控えめで刺激が少なめなバランスですが、硬質な質感を持っていて楽しめる高音だと思いました。 クラッシュやハイハットなどで過度にシャリシャリすることはなく、細かいところまでしっかりと鳴らしてくれます。ただ、超高域までとなるともう少し刺激感が欲しいなと思ってしまうのもまた事実です。

中音

特に変な癖は無く、質感は非常に滑らかで音の繋がりも自然です。
やや腰高感と言いますか浮ついたような定位が気になりますが、価格を考えれば上出来と言ったところでしょう。
個人的な好みでいうともう少し音に厚みがあったほうが生演奏の録音などが聞きやすいかなと思います。

ボーカル

「ベリリウム振動板」によるものなのか、高い分離感によってボーカルが埋もれること無くしっかりと聞かせてくれます。
元気系サウンドでありながら極端なV字傾向の印象を受けないのは、おそらくこのボーカルにしっかりとフォーカスできるような音作りによるものだと思います。
ボーカル自体の質感は価格相応クラスで、刺さりは抑えられていて聞きやすい印象です。欲を言えばもう少し伸びてくれればいいなと思います。

低音

低音も高音と同じく少し控えめな印象があるものの、しっかりとした量感があり、十二分にタイトで分離の良い音を鳴らします。やっぱりダイナミックドライバーから出る低音はこうでなくっちゃと思える良い低音です。
質の良い低音を他の音を邪魔しないようにしっかりとした分離感を持って鳴らしてくる、本当にちょうどいい塩梅で楽しめる低音だと思いました。

リケーブル

Cadenzaは2pinでのリケーブルに対応しています。
付属ケーブルでも十分満足できる音質ですが、いくつかのケーブルを試してみました。

JIALAI JLY2(2芯 銀メッキOCC)

単純なOCC線の銀メッキという最も扱いやすいタイプです。銀メッキ線は全体的にスッキリとした方向への変化を期待できます。
こちらにリケーブルしたところ、中低域の厚みが少し増したような印象を受けましたが、全体の解像度や高音のバランスは特に違いを感じませんでした。

JSHiFi D4G(4芯 金メッキ)

3000円台で購入可能なコスパ最強金メッキケーブルです。しかもちゃんと金メッキの音がする。
付属ケーブルと比べると、僅かに全体の音の厚みが増したような変化と、ボーカルの帯域が少し強調されるような印象を受けました。
音の厚みが増したことによって下支えがしっかりとするためか、中音の浮ついたような印象が弱まります。
個人的には結構好みな音ですね。

NICEHCK CT1(8芯 OFC)

NICEHCKの低音強化ケーブルその1。
現状はバランス接続タイプのものしか入手できませんが、2000円以下で購入できるため1本持っていて損はしないと思います。
こちらのケーブルは低域の厚みが増しますが、中音から高音にかけて相対的に減衰しやすくなる印象です。

NICHCK BlackCat(4芯 亜鉛銅合金線 オイルコーティング)

こちらは絶縁対策のためにオイルコーティングを施したケーブルです。
帯域バランスのピークがやや低音寄りにシフトするような印象です。特に中音とボーカルの質感がワンランクアップするような変化があり、ほんの僅かに残っていた女子ボーカルの尖りがほぼ消えます。
音はかなりおすすめですが、正規価格で1万円するケーブルをCadenzaに使うのはもったいない気がしてしまいます。

NICEHCK H4-1(4芯銀メッキ)

NICEHCK Loftyの高域強化ケーブルとして用意されたものです。通常の銀メッキケーブルよりもメッキが分厚くなっています。
かなりはっきりと高音域が強化されます。さすがLofty用ケーブル。
相対的に低音から中音はやや弱く感じるようになるため、好みが分かれるところですね。

総評

良い点

  • 元気系でありながらフラットで分離感の良いサウンド
  • しっかりと聞かせてくるボーカル
  • 質の良い低音
  • 見た目がかっこいい

悪い点

  • 全体としてみれば価格相応
  • ベリリウム振動板かどうかはちょっと疑問

Cadenzaは良い音質とかっこいい見た目を5000円で提供してくれます。これは本当に素晴らしい。
もうちょっと予算をかけられるならワンランク上のイヤホンを買ったほうがいいような気もしますが、元気系でありながらフラットでボーカルをしっかり聞かせてくれる音質は良いと思いました。
ただ、ベリリウム振動板かどうかと言われるとちょっと疑問は感じます。そういう製品であることを前提として買うならアリだと思います。