Abusan’s Journey

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THIEAUDIO Hype 2 レビュー「非常に広いダイナミックレンジと歪みのない至高のサウンド」

おはこんばんちは、あぶさんです。
最近は低価格イヤホンのレビューが続いていましたが、今回は国内正規価格で約5万円という高価格帯のイヤホン「THIEAUDIO Hype 2」をレビューします。
HypeシリーズはTHIEAUDIOが培ってきた技術を結集させた同ブランドの新しいIEMシリーズで、Hybrid Performanceを意味する名前からもその自信が表れています。今回はエントリーを担うHype 2の実力をじっくりとレビューしていきます。

外観・特徴

パッケージング

Hype 2は5万円クラスということでパッケージにも力が入っています。購入した瞬間に驚くのはそのパッケージの大きさでしょう。FiiO M11 Plus LTDやHiBy R6 Pro ⅡなどのDAPよりも巨大で、私が購入したことのあるイヤホンの中ではトップクラスの大きさです。さすがにオーバーイヤーのヘッドホンは入らなさそうですが、WhizzerやSeeAudioのパッケージよりも大きな容積を持っています。
パッケージの巨大さとは反比例するように中の構造は至ってシンプルです。ケーブルが接続された状態のイヤホン本体と、イヤホンどころかDACドングルや小さなローエンドDAPくらいなら入りそうなケースが入っています。イヤーピースなどの細かな付属品はケースの中に納められており、高額な価格とは裏腹に初心者でもわかりやすく使いやすいパッケージングとなっています。

本体

Hype 2の本体は3Dプリントで作られた医療用レジンです。一昔前は高級モニター機のみに許されていた製法と素材でしたが、最近は1万円以下のイヤホンでも採用例があり(TKZK Ouranouなど)、5万円クラスでは当然と言ったところでしょう。
フェイスプレートに相当する部分はあえて装飾を控えめにしています。これはHype 2がスタジオ・ステージモニターのコンセプトも持っているためかもしれません。カラーバリエーションはZicao(パープル)とIndigo(ブルー)です。Zicaoは光の当たり方で綺麗なグラデーションを魅せ、Indigoは油彩画で描かれたような蒼い鳥の羽根が散りばめられています。どちらもプリントではなくレジンによる立体的な造形が行われています。
装着感は最上ではありませんが良好です。筐体のサイズがやや大きいため圧迫感を生みやすく、TKZK OuranousやSeeAudio Yumeなどの極上の装着感を持ったイヤホンと比べると一歩劣ります。

スペック

Hype 2は2BA+2DDの4ドライバー構成です。5万円以下クラスのハイブリッドイヤホンとしてはドライバー数は少なめです。

BAドライバーは2つともSonion製の最新型ドライバーを採用。中低音から中音までをP2356HF/4、高音から超高音をE25ST001/Dでカバーします。2356とE25STはSonion製BAドライバーの中でも定評のあるドライバーで、その中でも最新型を採用していることからもチューニングの本気度が伺えます。

低音をカバーするために2つのダイナミックドライバーを採用していますが、THIEAUDIOは単純にドライバーを配置するのではなく、スピーカーのサブウーファーなどで使用されているアイソバリック構成を採用し、IMPACT²(インパクトスクエアード)という名前を付けました。
アイソバリック構成とは、2基のドライバーを同方向または逆方向の向かい合わせに接続して配置するドライバー構成のことです。アイソバリック構成となった2基のドライバーは正相または逆相で駆動され、2つで1つのドライバーかのように振る舞います。
アイソバリック構成のメリットは筐体サイズによる音質への影響を少なくすることで小さな筐体でも歪みのない音を実現するためです。周波数特性は筐体(イヤホンで言えばシェルやフェイスプレート)の形状や材質の影響を受けやすく、特にイヤホンは耳の穴に装着するという前提があるため筐体サイズに限界があり、特に低音の歪みや周波数特性の向上において課題となっていました。
アイソバリック構成をイヤホンに採用すること自体は以前からありましたが、5万円以下のクラスでの採用例はかなり珍しいと思います。

Hype 2はインピーダンス25Ωに感度108dBです。5万円クラスのDDを2基も採用したハイブリッドイヤホンとしては感度が高めで扱いやすいスペックです。さすがに低価格イヤホンの1DDと比べれば音量は上げ気味となりますが、アンプの性能が低くても音量が不足するということは無いと思います。ただ、低音用のアイソバリック構成ドライバーをしっかりと動かすには相応の出力が必要なのも事実です。
DAPだけでなく小型のDACドングルやスマホ直差しでも十分に使える汎用性も持っています。3.5mm専用ケーブルとしたのも様々な環境で使用することを前提とした汎用性を重視したからかもしれませんね。

付属品

付属ケーブルは5N純度のOCCに銀メッキを施し4芯のリッツ線構造としたもので、編み方は右回りの撚線というシンプルな構造を採用しています。
このケーブルはTHIEAUDIOの上位機種としてESTドライバーを採用した「Monarch」「Clairvoyance」に付属していたケーブルと同等の線材・構成としながら交換式プラグではなく3.5mm専用としたものです。少し巻き癖が付きますが、取り回しには問題なくタッチノイズも少ないケーブルです。

イヤーピースはAET07のような形状をしたシリコン製のものと、ウレタンを使用したフォームタイプがそれぞれ3サイズずつ付属します。
イヤーピースそのものの装着感は非常に良好ですが、サイズが3サイズしかないため耳の大きさによっては合わないかもしれません。5万円という価格を考えるとシリコン製イヤーピースは5サイズほど付属してほしかったところです。

音質の評価条件について

クリックで展開

100時間ほどの慣らしを終わらせた状態の個体を使用し、ケーブルとイヤーピースはどちらも付属品を使用しています。

再生機器は以下の3つを使用します。音量の設定値はSpotifyにて音量の均一化ON、音量レベルを低音量にした状態で、私が普段の音楽鑑賞で使用する音量に合わせた場合の値です。
UA100の音量はmotorola g52j 5Gに接続しスマホ側の音量設定を7段階目(約50%)にした状態において、上記の条件と同等となるようにEddict Playerで設定した値です。

  • FiiO M11 Plus LTD(以下M11PL)
    • ローゲイン、音量72、Low Dispersion Delay Filter
  • HiBy R6 Pro Ⅱ(以下R6P2)
    • ローゲイン、音量45、Low Dispersion Delay Filter、ABアンプ
  • EarFun UA100(以下UA100)
    • スマホとの接続にはDDHiFi TC07Sを使用
    • ローゲイン、音量82、Brick wall filter

音質評価の使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源と、Spotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。

客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には店頭にて実際に試聴されることをおすすめします。

音質

聞き始めはIMPACT²による強い低音によって低音重視なのかなと感じるでしょう。特に慣らしをしていない箱出しでは低音のぼわつきが気になりますし、クロスオーバーのチューニングに失敗したんじゃないかと思ったほどです。3~4時間ほどの慣らしで低音のバランスが整って非常にバランスの良い音へと変化します。慣らしにかかる時間が意外と短く20時間ほどで大丈夫です。十分にエージングを行った個体なら可聴域全体でバランスよく本当に過不足の無いと言えるフラットなサウンドを感じられるでしょう。

一部のイベントで箱出し状態のHype 2が試聴機として使用されていた疑惑があります。私自身が当該のイベントに行っていないため断言はできないのですが、友人の間で私の持っている個体やeイヤホン日本橋店での試聴機とは音が全く違ったという情報がありました。

等ラウドネス曲線に沿った極めてフラットなバランス

THIEAUDIOはHype2の音質についてスタジオ・ステージモニターを標榜しているだけあってか、Hype 2自体は等ラウドネス曲線に沿った人間の聴感覚上において極めてフラットに聞こえます。高音から低音まで突出するような部分が無く、かと言って聞きどころのない退屈な音ではありません。癖を徹底的に排除した、音源や再生機器の音をありのまま鳴らします。
イヤホン側に癖がほとんど感じられないため、楽曲のジャンルや音源の出来、再生機器の癖がはっきりと出ます。このようなサウンドは音源や再生機器の影響を受けやすく、試聴環境や好みの音楽ジャンルによっては好みに合わないかもしれません。

songwhip.com 冒頭から再生機器の性能を試すかのようなレンジとエコーが入ります。ピークは高音で11kHz前後、低音では可聴域ギリギリの21Hzです。そこにホール録音でたっぷりと捉えられたエコーが入ります。音のダイナミックレンジ、空間表現、解像度など、再生機器の性能を試す音源です。
この楽曲を聞けばTHIEAUDIOの技術力がいかに優れているかがわかるでしょう。Hype2は2DD+2BAというドライバーの数が控えめな構成ですが、超高音から超低音まで一貫したバランスで、パイプオルガンが持つ強い圧を歪み無く鳴らします。

音源のミックス・マスタリングを再現する空間表現

音場は特別広いわけではありませんが、原音に忠実で音源が持っている空気感を表現するには十分に豊かな空間表現を持っています。
Hype 2の空間表現はミックス・マスタリングにおいて行われた音作りを忠実に再現します。音源次第で音の広がりや分離が大きく変わるため、普段聞かれている楽曲によっては非常につまらない音だと感じるかもしれません。優秀なマスタリングエンジニアの手で作りこまれた音源であればオーケストラのホール録音を2chでミックスした音源でも一つ一つの楽器の位置や距離感がはっきりとわかります。
特に差が出やすいのは音の前後(Z軸)・上下(Y軸)の定位でしょう。2chのステレオでは左右(X軸)の定位が強調されることが多いのですが、実はステレオでも前後(Z軸)や上下(Y軸)の定位を再現することはできますし、欧米のマスタリングエンジニアでは常識と言っても良いくらいに当たり前なことです。そのようなマスタリングが行われた音源では音に包まれる非常に豊かな空間表現を楽しむことができます。
ハイエンドのモニターヘッドホンやマルチチャンネルを正確にセットアップしたスピーカーシステムには到底かないませんが、5万円クラスのイヤホンではHype 2の空間表現に匹敵するものはまだまだ少ない印象です。
解像度は非常に高く、リファレンス系モニターのように全体を一つの音楽として俯瞰しながら個々の音を容易に聞き取ることができるタイプです。チェック系モニターのような分離感を強調して個々の音をはっきりと聞き取らせるタイプではありません。音源や上流の再生機器の特性をそのまま再現するサウンドはリファレンスとしての使用も可能です。

songwhip.com スタジオ録音で作られていますが、まるでジャズ・クラブにいるかのようにステージや空間が見えます。それもそのはずで、スタジオに100人ほどの人間を入れて本物のジャズ・クラブで演奏したかのような表現を目指したそうです。
冒頭の拍手が起きる場面では左右だけでなく奥行きや高さがはっきりとわかります。先に書いたように2chのステレオでも奥行きや高さは表現できます。

songwhip.com 冒頭のボーカルが左上から降り注ぐように聞こえます。上ではなく左上から聞こえなければいけません。左右と高さのバランスが優れているなら明確に左上から聞こえるはずです。

高音

高音のチューニングは外耳道共鳴も大きく関係するため非常に難しい部分です。不快な刺激を抑えながら耳に届かせて聞かせる音に仕上げる必要がありますが、抑えすぎると中低音に埋もれてしまい物足りなくなり、聞かせすぎると不快で聞き疲れしやすい音になってしまいます。
Hype 2の高音は刺さらず埋もれずなちょうど良いと感じるバランスを実現しています。Sonion製BAドライバーらしい繊細できめ細やかな質の良い音を鳴らし、透明感がありながら明るすぎることのない極めて自然かつ聞き所を持った高音です。美しくシズるシンバル、心地よい余韻を伴う金属音、弦楽器や女性ボーカルの倍音成分、シンセサイザーが放つ強い刺激など、ありとあらゆる高音でHype 2は優れた質の良い音を鳴らします。

songwhip.com 冒頭のシンバルや電子音、そして美しいボーカルの倍音などの高音成分を多く含み、そのどれもが心地よく、夢のような空間を浮遊しているかのようです。中盤からはサブベースの低音で支えられ世界が更に広がります。

songwhip.com 冒頭の高音は非常に鋭く刺激的でなければいけませんが、同時に不快な刺激となってもいけません。高音のチューニングが甘い機種では耳から外したくなるほどの不快感がでます。
Hype 2は正にちょうど良いと言える刺激と不快感のど真ん中の音を鳴らします。

中音

Hype2の中音はSonion製BAドライバーの大きな特長であるディティールの表現力に優れたクリアで濁りのない音を鳴らします。高音や低音とは明確に分離されながら聴覚上でフラットに聞こえるようにチューニングされています。

songwhip.com ジャズというジャンルは再生機器によって中音の濁りが出やすくトータルでの質の良さを要求します。高音や低音と比べて音の強さで誤魔化すこともできないため、中音域を聞けばイヤホン全体のレベルがわかります。

ボーカル

私もレビューで書くことがあるのですが、ボーカルが近い遠い凹む凹まないという表現があります。他の音と比べてボーカルがどれくらいの距離感やバランスで聞こえるかどうかを表現しているのですが、どんな音源であっても同じような距離感で聞こえるようなイヤホンもあれば(Yanyin Moonlightなど)、音源によって差異が生まれるイヤホンもあります。ボーカルの定位というのは必ずしも中央にあるわけではありませんし、距離感だけでなく上下左右の位置も音源の作り、特にマスタリングによって大きく変わります。

先に書いたようにHype 2はマスタリングエンジニアによる音作りを忠実に再現するかのような音質を持っています。それはボーカルの定位においても同様で、インストがボーカルに被るような音作りをしていればHype 2でも同様にインストがボーカルに被るため「遠い、凹む」といった音になりますし、逆にインストとボーカルの定位や分離がはっきりとしているならボーカルが「近い、凹まない」という音になるでしょう。つまり、Hype 2のボーカルは遠くも近くもあり、凹むこともあれば凹まないこともあります。

もちろん空間表現だけでなくボーカルの質も素晴らしく、ボーカルの声域を問わず滑らかで艶のあるボーカルを楽しめますし、掠れや上ずりのような不快な音はほぼ感じられません。特に優秀なハイレゾ音源ではボーカルの立体感や生々しさがありありと感じられ、ただし、ボーカルを楽しめるかどうかは音源次第というところは変わりません。

songwhip.com ホリー・コールのボーカルが正確に中央にあり、ボーカルの喉が見えながらはっきりとした定位感を持っています。左右の個体差があるとボーカルが左右どちらかに振れますので一発でわかります。
Hype2は正確に中央へ定位させながらしっかりと喉が見えます。

songwhip.com 語りかけてくるようにやや上から来るボーカル。艶のある優しい声に包まれる感覚が非常に心地よく、一日中聞いて浸っていたいと思わせます。
このアルバム、というよりも藤田恵美さんのcamomileシリーズはハイレゾ音源で聞いて欲しいシリーズです。僕はCD音質で十分、なんならレビューで使用しているようにSpotifyの圧縮音源で十分だと考えていますが、ハイレゾを否定するわけではなくDSD音源も所有しています。camomileシリーズの音は本当に素晴らしく、それは非可逆圧縮であっても失われていません。それでもハイレゾをおすすめしたいのは、camomileシリーズの音質がハイレゾで聞かないなんてもったいないと思ってしまうほどに素晴らしいものだからです。
ただ単に高音成分を増やして「ほら、高音出てるでしょ」と言ってくるハイレゾではありません。96kHz/24bitという数字が持つ性能を追求した音源だけが持つ音の良さを是非感じてください。

低音

低音はミッドベースから人間の可聴域の下限となる20Hzまで聴覚上でフラットに感じる極めて優れたバランスを持っています。タイトでキレの良さがありながら深く沈み込む重さや滑らかに広がっていく残響も歪み無く自然に鳴らします。
Hype2の低音はイヤホンという枠の中ではトップクラスに優秀です。3倍の価格を持ったイヤホンの低音が不自然に感じてしまうということもありました。レビュー用のチェック用音源以外も含めて様々な楽曲を聞きましたが、不自然だと感じる楽曲は一つもありません。

低音はタイトさや沈み込みの重さよりもミッドベースからサブベースまでフラットに聞こえるバランスかどうかが重要だと思っています。特に西洋音楽では低音の「音程」でリズムを取っています。低音パートの「音程」の変化が正確に聞き取れなければ音楽が迷子になります。量感がどうとか、タイトさがどうとか、キレや締まりがどうとかというのは後から付いてくるもので、低音全体におけるバランスが優れているかどうかで低音の質は決まります。
ちなみに、低音のバランスが崩れると特定のジャンルや楽曲でのみ良い方向に感じられる変化が起きます。ミッドベースが強くサブベースが弱くなるとキレや締まりが良くなったような錯覚を起こし「タイト」な低音に聞こえます。逆にミッドベースよりもサブベースを強くすると低音の沈み込みや残響が強くなるため「雰囲気のある」低音に聞こえるでしょう。試しにイコライザーで31Hz、62Hz、125Hz、250Hzを弄ってみてください。そして元に戻せば低音のバランスが優れていることの重要性が理解できるかと思います。もちろん、個人の好みによってわざとバランスを崩すことを否定するわけではありません。

songwhip.com ベースの付帯音がはっきりと聞き取れること、「音程」の変化が感じ取れること、そして全体のリズミカルなコード進行に乗ることができるかが肝です。
Hype2の低音はバランスに優れていることと歪みが少ないことが両立されている他、中音との分離も優れているためリズムを容易に聞き取ることが出来ます。

おすすめイヤーピース

Hype 2のイヤーピースは装着感こそ良いもののサイズが3つしか用意されておらず、イヤーピースのサイズが合わないことに起因する装着感の悪化が起こりやすい製品です。
サイズが耳に合えば問題ありませんが、私のようにMとLの中間がちょうど良いというようなサイズの耳を持っている場合は付属するフォームタイプ、もしくはサードパーティのイヤーピースに交換することを考える必要があります。

まずは装着感と音質の両方で定番と呼ばれるAET07とKBEAR 07、NICEHCK 07が候補に上がるでしょう。AET07がディスコンになった今では後者の2つは有力な選択肢です。音質は付属イヤーピースとほぼ変わらないため、とりあえず交換してみると良いでしょう。
他にはJVCスパイラルドット(無印)やWhizzer ET100、TRI Clarionが挙げられます。Hype 2のノズルはやや太く、JVCスパイラルドットの内径とほぼ同じです。軸の細いfinal Eタイプなどは避けたほうが良いでしょう。

おすすめリケーブル

Hype 2は2pin端子によるリケーブルに対応しています。シェル側の端子部は僅かに凹んでいるため一見するとCIEM 2pinにのみ対応しているように見えますが、付属ケーブルは通常のフラットタイプの2pinが採用されており、凹みはCIEMタイプよりも浅いことがわかります。
付属ケーブルは扱いやすさや音質も申し分ないため無理にリケーブルをする必要性はありません。単品でも販売されていますのでバランス化も容易です。もしリケーブルする場合は、余った付属ケーブルを他のイヤホンへ流用するのも良いでしょう。
リケーブルによる変化はわかりやすく、狙った通りの変化を得られます。裏を返せばケーブルの粗が見えやすいということでもあり、安い銀メッキケーブルではバランスを崩しやすい印象です。

総評「至高のサウンドが5万円で手に入る驚きのパーフェクトIEM」

良い点

  • 超高音から超低音までフラットで歪みのない極めて自然な音
  • 細部まで行き届いた粗が見えない音質
  • スタジオ・ステージモニターらしい素直で雑味がない

良くない点

  • イヤーピースのサイズが少ない
  • ハウジングやノズルがやや大きいため耳の大きさによっては圧迫感が出る
  • 上流の再生機器や音源の質に左右されやすい

今までの基準で5万円の2BA+2DD機を想像すると「独特なサウンドで攻めてくるタイプかな」と思うでしょう。「5万円だったらあと2つくらいBAを増やして欲しい」と思うかもしれません。
Hype 2の音質は今までの基準を大きく塗り替えるようなものです。非常に広いダイナミックレンジ、ほとんど感じられないほどに抑えられた歪み、細部にまで行き届いた滑らかで自然な音、超高音から超低音まで一貫したバランスなど、リファレンス系モニターに匹敵するようなサウンドです。今までの基準では10万円を大きく超えるような金額を支払う必要がありましたが、Hype 2の登場によりそれは過去の話となりました。
裏を返せば特徴のないところが特徴と言える音ですので上流の再生機器や音源の質に左右されやすい部分もあります。元気な音を鳴らすV字バランスのイヤホンのようにどんな曲でも楽しく聞けるものではありません。良い音を良い音として聞きたいという欲求には応えられるが良くない音を楽しく聞くことはできないという、とてもステージ・スタジオモニターらしい素直なイヤホンです。初心者には全く勧められませんが、耳が肥えたオーディオファイルにはとても刺さるイヤホンです。国内正規価格で5万円というのは決して安価な価格ではありませんが、その金額を払う価値は確かにあります。

先に書いたようにHype 2は音源や上流の再生機器が持つ音質を再現するかのようなリファレンス的なサウンドです。上流の再生機器が音質とバランスに優れていればいるほど真価を発揮するでしょう。そのような懐の深さがHype 2の最大の魅力かもしれません。
手元にある機材ではR6P2やUA100との組み合わせが良好でした。この2つは周波数特性のバランスが優れており、Hype 2のリファレンス的なサウンドとの相性が良いのでしょう。M11PLは1~2世代前の中華DAPにありがちな欠点が目立ちました。

先にも書きましたが、一部のオーディオ系イベントで箱出し状態のHype 2が試聴機として使用されていた疑惑があります。私自身が当該のイベントに行っていないため断言はできませんが、友人の間で私の持っている個体やeイヤホン日本橋店での試聴機とはイベントの試聴機は音が全く違ったという情報がありました。イベントにてHype 2の音質が価格相応ではないと思われた方はeイヤホンやヨドバシカメラなどの店頭でもう一度試聴されることを強くおすすめします。