Abusan’s Journey

Photography, Drive, Journey, Camera, Audio, IM@S

音質評価用プレイリストに登録している147曲を全て紹介します

おはこんばんちは、あぶさんです。
今回はレビューではなく、オーディオの音質評価に使用しているプレイリストの中身をご紹介しましょう。
それぞれの楽曲について、どこに注目してどのように聞こえればいいのかを解説します。

私のレビューでは手持ちのローカルライブラリから厳選したFLACとDSDとSpotifyで作成した音質評価用プレイリストの2つを使用しています。
Spotifyのプレイリストは公開していますので誰でも利用できます。レビューでも一部の楽曲は紹介していますが、今回はプレイリストに含まれるすべての楽曲について解説しようと思います。読者の方々が店頭での試聴などで利用する際に少しでも役に立てればと思います。

周波数帯域の分け方

プレイリストの紹介に移る前に、レビューで登場する「高音」「中音」「低音」という言葉についてはっきりさせておきましょう。

私の場合は基本的に Sound on Sound の Audio Frequency Chart を参考にしています。
www.soundonsound.com 右上からPDFファイルがダウンロードできます

ほとんどの場合、私がレビューで中音と呼んでいるのはこのチャート上での「250Hz ~ 2kHz」のことを指しています。
低音と高音についてはさらに2段階に分かれています。低音は20Hz ~ 60Hzをサブベース、60Hz~250Hzをミッドベースと呼び、高音は2kHz ~ 6kHzを高音、6kHzより上を超高音と呼んでいます(レビューの時期によってはこの基準に当てはまらない場合があります)
中低音、中高音と呼ぶ場合はやや曖昧な使い方をしています。はっきりと決まった周波数帯域ではなく、それぞれの周波数帯域を跨いでいる一定の範囲と言えばわかりやすいでしょうか。中音と呼ぶには高すぎるが、低音と呼ぶには低い、そんな中間の印象を受ける時に中低音という呼び方をしています(中高音も同様)
この記事でも「高音」「中音」「低音」という言葉が頻繁に出ると思いますが、上記の基準で言っていると思っていただければ良いかと思います。

音質評価用プレイリスト紹介

Sparks - by Nikonn, Maroula

open.spotify.com 初期から使用している曲です。プレイリストの最も古参な楽曲です。レビュアーの森あざらしさんが紹介していたのを見て自分の使うようになった覚えがあります。
出だしから100Hz → 60Hz → 50Hzのベースラインが入っています。この3つが同じ量感でフラットに聞こえるかどうかで低音全体の出来が7割わかります。多すぎても少なすぎてもいけません。よくあるのが100Hzは十分聞こえるのに60Hz → 50Hzと下がっていくように聞こえてしまうタイプです。フラットに聞こえない場合は、この楽曲を聞いた時点で低音の評価は落第点です。
このベースラインは楽曲全体で入っていますが、15秒からミッドベースが混じり、33秒からはボーカルが入ります。音の数では低音が多めですが、低音の定位や分離が標準的であればボーカルがしっかりと広がりながらベースラインを追い続けられます。ベースラインを追えるなら1分30秒からのリズムの変化に乗れるでしょう。

Doin' it Right - by Daft Punk, Panda Bear

open.spotify.com Sparksで低音のバランスを確認した後はDoin'it Rightで低音の質を確認します。
サブベースの鳴らし方によって大きく印象が変わります。深く沈み込みながら染みるように広がらなければいけません。23秒付近から入る4つの低音はそれぞれ音程が違います。同じ音に聞こえたならサブベースが出ていません。3つ目の低音が最も低く、4つ目の低音までわずかに残ります。最も低い音は20Hz付近まで下りますので難易度の高い低音です。
ボーカルや中音よりも目立つ場合は膨らみすぎています。沈み込みが足りていない場合はサブベースが出ていません。減衰が速すぎると不自然に聞こえます。
SparksとDoin'it Rightで満足に聞こえれば低音は合格としても良いと思います(実際は他の楽曲も含めてレビューしていますが)

Movie girl - by Novika

open.spotify.com 低音を確認した後は高音という流れで3番目に入っています。
全体を通して鉄琴の音が入っていますが、全て同じバランスで聞こえなければいけません。金属的な質感がはっきりと感じられなければいけません。キンと響きながら残響が心地よく残るなら合格です。
ありがちなのは強く響きすぎることで質感が吹っ飛んでしまうことです。そのような場合は女性ボーカルの歯擦音も強く感じる印象があります。

My Best Life (Club Mix) - by KSHMR, Mike Waters

open.spotify.com 刺激の強いEDMは音圧の強い音を多く鳴らすため、不快な刺激を抑えながら圧を保つようなチューニングを要求されます。
高音の刺激と低音のリズムがしっかりと感じ取れるか,。細かいディティールや変化まで再現されているか。この楽曲は音が強すぎれば不快な刺激になりやすく、抑え過ぎれば雰囲気を損ねてしまうためバランスを保ちながら聞かせるチューニングが必要となります。

Enchantment - by Nora En Pure

open.spotify.com イントロからサブベースの低音が入り、弦楽器の生演奏と自然の環境音、そしてエレクトロニックな電子音が見事にミックスされています。
イントロのサブベースは「ドン」というキックから入り、その後は深く広がります。弦楽器は滑らかに倍音までしっかりと聞こえなければいけません。電子音はEDMのような刺激が必要ですが、他の音と比べた時に全体として統一されていなければいけません。ジャンルの違う音が見事に調和するようにミックスされていますので違和感があってはいけません。

Pizza - by Martin Garrix

open.spotify.com 見事に重なった音が広い空間へ広がっていけば合格です。音が重なると言っても混ざり合ってはいけません。それぞれにはっきりとした定位があり、確かな音像があります。どちらかだけがあってもいけません。どちらもしっかりと感じ取れる必要があります。

Spotifyに限らず非可逆圧縮された音源ではどこが失われるでしょうか。可聴域を超える高音は言わずもがな、最も差が出るのは空気感です。ひどい場合だと奥行きや立体感が完全に失われてしまい平面的でつまらないサウンドになります。空気感と言うとホール録音の生演奏でないといけないように思えますが、電子音楽でも優れた空気感を持ち立体感を出すことは可能です。いや、どちらかというと電子音楽のほうが当たり前かもしれません。
martin GarrixのPizzaはユーロ系のプログレッシブハウスらしい空気感と立体感に富んだ楽曲です。Spotifyの非可逆圧縮音源でも損なわれないように作られています。

Welcome To St. Tropez - DJ Antoine VS Mad Mark Mix - by DJ Antoine, Kalenna, Timati

open.spotify.com My Best Life と同様にEDMならではの刺激かあるかどうか。低音のベースラインをしっかりと追いながら刺激の強い高音をどうならすかです。低音が膨らみすぎるとボーカルに被りますし、高音が強すぎると不快感が生まれます。

Innocent (Club Mix) - by Groove Coverage

open.spotify.com イントロから強い刺激を持ったクラップ音が入ります。この音は中音の粗が非常にわかりやすく、低価格イヤホンではすぐに馬脚を露す部分です。乾いている必要はありますが、乾きすぎてしまうと音が割れます。 低音は刺激の強い高音と調和するバランスを超えてはいけません。ボーカルは中央やや上に定位する必要があり、他の音とは一切被りません。ボーカルと低音が被る場合は音場が狭いことが多いです。

放課後のダンスフロア - KOTONOHOUSE remix - by somunia

open.spotify.com ここに来てやっと日本語ボーカルです。ヨーロッパ産の本場EDMに負けないガチのEDMです。
終盤のボーカルは複数のトラックをミックスしているようです。歌っているのはsomunia本人だけなのですがセンター以外に左右が増えます。前半はエコーをかけているのですが、終盤だけエコーではありません。
多数の音をしっかりと分離させて鳴らしきれるか、特に高音のチューニングが甘いと耳が痛くなります。

Breaking Dawn - Short Version - by Getty, Kobaryo, 棗いつき, Itsuki Natsume

open.spotify.com 圧の強い音を刺激たっぷりに鳴らしながらボーカルは完全に分離されている必要があります。僅かですがボーカルの息遣いも残っています。
個人的にこの曲を最も良い感じに聞けるのはUnique Melodyの3D Terminatorです。

Hyper Bass - by 桜乃美々兎 (CV: 小坂井祐莉絵), 水上 雛 (CV: 大森日雅), 犬吠埼紫杏 (CV: 長谷川玲奈), Yunomi, DENONBU, DENONBU

open.spotify.com サブベースの確認用楽曲です。曲名の通り強い低音が入っています。深く重たい低音が大地から生えてくるように聞こえなければいけません。サブベースを軽く鳴らしてしまうと沈み込みが足りないように感じるでしょう。

The Melody - by NWYR, Andrew Rayel

open.spotify.com Innocent (Club Mix)やWelcome To St. Tropezと同様の刺激強めなEDMです。こちらも全体の調和が取れていることが最低条件ですが、強い矩形波が多数使われているためバランスを取るのは難しいと思います。
アンプの性能が低い場合は音場の立体感が失われてしまい刺激だけが残る疲れやすい音になります。

Love Music - by Shaun Baker, Carlprit

open.spotify.com チェックするポイントは基本的にThe Melodyと同様です。
Breaking DawnやInnocent (Club Mix)とのようにボーカルはしっかりと分離されていなければいけませんし、適度な距離感を保つ必要があります。ボーカルの距離が近い場合は立体感が失われています。

Trance ReBorn (FYH100 Anthem) - by Andrew Rayel, David Gravell

open.spotify.com タイトル通りにこれぞまさにトランスだよなと思える名曲です。
イントロのピアノはやや右寄りに定位し(高音しか無いからですね)、残響は無限かと思えるような空間に広がってほしいところです。中盤でメロディーが切り替わるとことも滑らかで自然に響かなければいけません。
後半の低音はややタイトな方向で鳴らす方が良いでしょう。他の音と一緒に鳴らす低音は過度に膨らまないほうが良い印象を受けます。

RAMelia (Tribute To Amelia) - by RAM, Susana

open.spotify.com 優しく響かせるピアノのイントロから始まり、見事な流れで繋げていくメロディーをどこまで美しく描写できるかが勝負です。
EDMはただ刺激の強い音を鳴らせばいいものではありません。最も大事なのは空間表現です。立体感のある音場に正確な定位を持った豊かな空間表現を高いレベルで要求します。低価格イヤホンでは厳しいでしょうね。
アンプの性能や電源回路でも大きく変化します。エントリークラスのDACドングルではピアノの定位が怪しくなります。

グミ超うめぇ - by ピーナッツくん, PeanutsKun

open.spotify.com 特にここがこうだからというのではなく、単純に好きで良く聞いているから入れています。普段から聞いている楽曲ってとても大事で、試聴用だからといってチェック用音源ばかり入れてもダメなんですよね。普段から好きで聞いているからこそわかることもあります。

Rave After Rave - by W&W

open.spotify.com イントロの低音でミッドベースからサブベースまでのバランスがわかります。タイトすぎるならサブベースが出ていない、膨らみすぎているならサブベースが多すぎます。
ミッドベースからサブベースまでのバランスがフラットであれば全体の量感が変わっても破綻することはありません。大事なのは低音の中でのバランスです。中音高音に比べて多いか少ないかは後でいいんです。

レーザービーム - by Perfume

open.spotify.com イントロに入っている目覚まし時計を模した超高音がどう聞こえるか。強すぎてはいけませんが、刺激が残っていないと楽曲として破綻します。キンという音が強く耳に届きながら不快な刺激にはならない絶妙なところを突くようにミックスされていますので、この音が綺麗に聞こえないのは再生機器の性能が原因です。

Lights Code - by KhoMha

open.spotify.com まずは中音域全体で鳴るイントロが十分な空間に広がるかどうか。15秒からの低音はリズムを刻む50Hzと下支えで広がる60Hzの2つ、これが聞き分けられるかどうか。サブベースが足りない場合は軽くタイトに聞こえます。
1分9秒から50Hz付近のサブベースが軽く入り、1分17秒で更に強く、1分22秒では30Hz付近で重いサブベースがズガーンと響きます。高音と同時に入りますが高音よりも目立ってはいけませんし、しっかりとフロアを揺らすように響かなければいけません。

summer leap - by somunia

open.spotify.com ベースラインは全てサブベースで30~50Hzの範囲にあります。この低音がタイト過ぎるならサブベース不足です。そもそも聞こえないのはありえません。
右から聞こえる金属の高音は10kHzを超えています。主張する音と主張しない音を交互に鳴らします。前者は後者に金属的な音を追加しています。確かな分離感があればはっきりと聞き取ることが出来ます。

Planet Dada - by Yello

open.spotify.com イントロの電子音は倍音のピークが13~14kHzに達します。耳に軽くジャブを打つように響きますが刺さりすぎてはいけません。
ベースラインは30Hzまで入っています。かなりの量感を持った太い低音ですが中音や高音をかき消してしまうなら低音が多すぎます。

StarShine (I Don't Want This Night To End) - by W&W, AXMO, SONJA

open.spotify.com イントロの超高音は10kHz付近を中心として12kHz付近まで伸びます。超高音のチューニングが甘いと強く響きすぎることがあります。
1分付近から入る低音は50Hz付近で非常にタイトな音を鳴らします。減衰が終わる前に次の低音が鳴っているためです。低音の量感が膨らみすぎているとボワ付いて聞こえるでしょう。

Xplode (Graham Bell & Yoel Lewis Remix) - by Avancada, Darius & Finlay, Graham Bell, Yoel Lewis

open.spotify.com Innocent (Club Mix)やWelcome To St. Tropezと同様に刺激の強い音を鳴らします。前半はミッドベースから中音を中心としてサブベースをアクセントにしていますが、1分33秒付近で50Hzのサブベースがドォーンと響いてからが本番です。終盤にもう一度50Hz付近のサブベースが響きます。

The World We Left Behind - by KSHMR, Karra

open.spotify.com この曲は広い空間に音が広がるかどうかです。近すぎるのはダメで、ちょっと遠いなと思うくらいがちょうど良い距離になります。
歌いだしのところで8kHzくらいの倍音が入ります。ここが響きすぎるものは他の楽曲でも歯擦音が気になったり高音の刺激が強すぎると感じることが多いです。
38秒付近からサブベースのベースラインが入ります。ベースラインが聞こえないとリズムが掴めません。低音は量感ではなく音程の変化が聞き取れるかどうかで決まります。よくEDMやトランスは低音マシマシが良いと言われがちですが、ライブならともかく普段の趣味の範囲で聞くのであればベースラインが追えるくらいがちょうど良いバランスです。

Around the World [Official Sunburn Goa Anthem 2021] - by KSHMR, NOUMENN

open.spotify.com The World We Left Behindと同様に空間表現が試されます。機器側の音場が狭い場合は明らかに天井が低くなります。天井はホールのように高くある必要があります。

In Your Arms - by Andy Moor, Jessica Sweetman

open.spotify.com 超高音からサブベースまでバランス良く鳴らせないといけません。The World We Left BehindとAround the Worldで問題なければこちらも特に違和感なく鳴らせるはずです。

Aura - by Kalki

open.spotify.com ライブ会場にいるような空間表現と低音の確かな分離を要求します。 イントロは広大な空間に音が広がっていきます。豊かな空間表現がなければいけません。
54秒付近から強い低音が入ります。低音のバランスはもちろんのこと、分離が悪い製品では満足に聞くことはできないでしょう。

Colour - by Marshmello

open.spotify.com ベースラインを追えるかどうかの確認で使用しています。
ここまで紹介した楽曲で1つも低音が破綻せずにベースラインを追えるならパーフェクトと言っても過言ではないでしょう。ベースラインは低音のバランスが良いこと、過度に膨らまないこと、他の音に混ざらない分離の良さがあることが必要です。ベースラインが追えなければリズムが掴めません。EDMの低音で問題なければロックやクラシック、ジャズのベースで問題が出ることはまずありません。

WONDER POP - by Moe Shop

open.spotify.com In Your Armsと同様に全体のバランスの実力が試されます。終盤ではストリングスの広がりで空間表現も試されます。

Axel F - by Harold Faltermeyer

open.spotify.com イントロは中音を基音として10kHz付近まで響きます。2回目のイントロはややLが強く聞こえれば左右のバランスは正常です。
低音は最も低いところで32Hzが入っています。十分な量感を持っていなければいけませんが、何度も書いたように中音や高音を邪魔してはいけません。

ヴァイオリン・ミューズ(バッハ:シャコンヌより) - by Ikuko Kawai

open.spotify.com ヴァイオリンの倍音は6~8kHzまで入っています。一部の低価格イヤホンでは倍音が消え去ってしまい違う楽器のように聞こえます。
60Hz付近の低音が全体を包み込むように入っていますが、決してヴァイオリンよりも目立ってはいけません。

Espace - by Hajime Mizoguchi

open.spotify.com 低音から中音にかけて適度な厚みを持ちながら弦の震えがハッキリと感じられるような空気感がなければいけません。
26秒で入る低音は約100Hzです。ミッドベースが過度にブーストされていると弦の質感が失われてしまうことがあります。
作り込むのが難しい中音の空気感が試される楽曲です。

イエスタデイ・ワンス・モア - by John Bettis, Richard Carpenter, Ayako Takagi

open.spotify.com 一部の低価格イヤホンでは倍音が消えると先に書きましたが、この楽曲もその影響を強く受けます。ひどいものだとオーボエのように聞こえることがあります。
Spotifyの非可逆圧縮音源でもディティールがかなり忠実に残っています。数万円クラスのイヤホン・ヘッドホンなら息遣いや空気感が聞き取れなければいけません。

EARTH (アース) - by Ayako Takagi, Takatsugu Muramatsu

open.spotify.com イエスタデイ・ワンス・モアよりもエアが多く含まれていますが、エア(ホールトーンの残響など)は楽器の音よりも目立ってはいけません。ピアノとフルートの距離感が把握できるようであれば上出来です。

Birdland - by Buddy Rich, The Woody Herman Band

open.spotify.com 超人ドラマーとも言われるBuddy RichのハイスピードなドラミングをSACDにリマスターしたものです。リマスターによってフルマラソンを全力疾走するかのように最初から最後までハイスピードで叩き続けるドラミングを1音1音まで聞き取ることが出来ます。もちろん解像度が十分に高い機材でなければ音が混ざり合ってしまいます。これは最初の10秒でわかります。
Spotifyの非可逆圧縮音源でも音の粗はほぼありません。この1曲でイヤホン・ヘッドホンの実力がはっきりと出てしまいます。

Blue Rondo à la Turk - by The Dave Brubeck Quartet

open.spotify.com ピアノ、ドラム、サックス、ベースというオーソドックスなカルテットです。4つの楽器には完全な定位があり、その配置まで再現されなければいけません。ベースはやや裏にありますが分離の良い環境であればベースラインを追うことは難しくないでしょう。

Monkey Bars - by Ray Gallon, Ron Carter, Lewis Nash

open.spotify.com このような楽曲はとにかく音が豊かでなければいけません。空気感や空間表現が優秀であれば演奏している映像が目の前に浮かぶような感覚で聞くことができるでしょう。シンバルやハイハットの揺れ、ピアニストの動き、ベースの弦の震えが明確な形となって見える必要があります。

Dear Family - by Shun Ishiwaka, ai kuwabara, 桑原あい

open.spotify.com 優秀な録音とミックス、マスタリングが行われた音源であればステージを目の前に再現することは造作もないことです。2chのステレオミックスであってもたっぷりとエアを含ませたマスタリングは空気感が全く違います。そして再生機器にも優れた空間表現を要求します。
この楽曲は空間表現(音場や定位など)が優れていればステージが再現されます。

Caravan - by John Wasso

open.spotify.com ジャズのスタンダードである「Caravan」を映画「WHIPLASH(邦題:セッション)」のラストシーンで演奏したもの。特に後半の4分以上続くドラムソロは圧巻です。
Spotifyにある音源はサウンドトラックに収録されているもので、CDから取り込んだFLAC音源も持っています。
全体の調和が取れていることはもちろんのこと、Spotify音源であっても分離感は大きく損なわれていないため1音1音が聞き取れる必要があります。
ドラムは皮の張りが聞こえるくらいのディティールが欲しいところです。バスドラムもしっかりと弾む音でなければいけません。

FIRST NOTE - by Hiromi, Shun Ishiwaka, 馬場智章, Tomoaki Baba

open.spotify.com 開始数秒で全体のバランスが見えます。まずイントロのピアノはズガーンと重たく鋭い響きがなければいけません。軽く聞こえるなら低音が不足しています。テナーサックスの力強さと合わさってノックアウトするような音が出なければいけません。
サックスは中央に定位しますがピアノは少し低めで、ドラムは全体に広がるというアニソンっぽさがあります。ピアノソロの豊かな空気感も再現できれば優秀だと思います。

I Can See Clearly Now - by Holly Cole Trio

open.spotify.com まずはベースとその残響がどのように広がるかで空間表現がわかります。後ろに回り込むように広がり、ホリー・コールのボーカルを中心としたサラウンドのような表現が感じられれば非常に優秀です。
ボーカルの定位がはっきりと出ている音源ですのでブレてはいけません。ボーカルは本当に中央から全く動きません。僅かに遠く感じるくらいがちょうど良いでしょう。ボーカルの定位が中央に張り付いていないと周りにある小さな音が定まらないため空間表現に影響を及ぼします。
ピアノは右側に寄った位置で空中に浮かぶような場所にあります。ベースとピアノは音程の変化が聞き取れる必要があります。ただし量感が多すぎて膨らみすぎるのはNGです。

So And So - by Holly Cole Trio

open.spotify.com I Can See Clearly Nowと同じアルバムからもう1曲。この2曲はかないまる氏のおすすめソフトでも紹介されていたものです。
こちらもベースラインを追うことで楽曲全体のリズムがはっきりとします。I Can See Clearly Nowとの違いはボーカルの定位です。基本はセンターですが少し右にずれる場面があります。ステージ上を動きながら歌っているのでしょう。

モダン・ジュズのテーマ - by ポンタ・ボックス, PONTA BOX

open.spotify.com とにかく音が良い。音が良いから再生機器が持つ癖や粗がはっきりとわかります。90秒にも満たない長さですが、どこを見ても粗のない音を出すというのは難しいと感じます。
まずばドラムのブラッシングから、軽快なピアノのリズムと豊かでノリの良いベースが続き、気がつけば音の世界に引き込まれています。個々の音にはしっかりとした実在感が必要ですし、細部まで正確に描写できなければ破綻します。

ローザンヌのサンフラワー - by ポンタ・ボックス

open.spotify.com モダン・ジュズのテーマとは同じアルバムで、あちらが1曲目でこちらは2曲目です。アップテンポで引き込んでくる1曲目に対して、ゆったりと静かな波に乗せてくる2曲目の違いがまた良さを感じさせます。
1曲目よりも小さい音を細部までしっかりと描写する必要があります。音質というものは様々な指標で評価できますが、そのほとんどは「違い」と「差」のどちらかに分類されます。この曲は「差」がはっきりとわかります。

I'M A FOOL TO WANT YOU - by MALTA

open.spotify.com マルタのサックスは息遣いまで聞き取れます。そしてドラムスがまた本当に良い。シンバルのシズル感が本当に素晴らしく、以下に滑らかに響くかで高音の特性がわかります。目の前にマンハッタンが浮かび上がれば文句なしです。

Danny Boy - by Jacintha

open.spotify.com 2分以上に及ぶジャシンタのアカペラから始まりますが、ここのエコーをいかに鳴らすかで再生機器の実力がわかります。エコーはステージ全体に響き渡るように回り込みます。
ボーカルのディティールはとても素晴らしく、その動きまで表現されているかのように聞こえなければいけません。

Green Flower Street - by M. Sasaji, L.A. Allstars

open.spotify.com ゴールドディスクにも選定されたことのあるビッグバンドジャズです。とにかく演奏、録音、ミックス、マスタリングの全てでレベルが高く、本当はSACDのマルチチャンネルが至高ですが、Spotifyの非可逆圧縮音源であっても良い音というのは片鱗を魅せるんですよ。
音の質そのものが良くなければいけません。歪みが大きい機器では聞くに耐えないでしょう。個々の楽器どうしの間には明確に距離がありますが、そこが無音であってはいけません。

Freedom Jazz Dance - by M. Sasaji, L.A. Allstars

open.spotify.com 同じアルバムの楽曲が3曲続きます。こちらはイントロからブラスが一斉に吹きます。違う周波数帯の音が混ざり合わないのは当たり前で、こういうビッグバンドで同じ楽器が同じタイミングで一斉に吹くような場面で本当の解像度が見えます。解像度が低い場合は音が団子になってしまい1本で吹いているような音になります。

Gymno Pedie - by M. Sasaji, L.A. Allstars

open.spotify.com また同じアルバムから、今度はゆったりとした比較的スローテンポの楽曲です。
ジャズには様々な楽曲がありますが、大事なのは小さい音をしっかりと表現できているかです。各パートの技法がしっかりと細部まで再現できているかどうかで機器のレベルが分かります。

モーメンツ・ノーティス - by M. Sasaji, L.A. Allstars

open.spotify.com まずイントロが拍手から始まりますがライブ音源ではありません。スタジオに関係者を100人くらい入れて即席のジャズ・クラブを作ってしまいました。
拍手はLAの空気を感じさせるように乾いていなければいけませんし、ジャズ・クラブの空間を感じさせるように奥行きのある空間が再現できている必要があります。
青いアルバムと同じスタジオで同じアーティストのはずなのですが全く違う空気感があります。この違いを再現できていれば素晴らしい演奏を堪能できるでしょう。

Lanyard Loop ‑ - by アラン・ホールズワース

open.spotify.com ギターの巨匠と呼ばれるアラン・ホールズワースが六本木のピットインにて日本公演を行った際、ピットインのミキシングルームにて演奏をそのままダイレクトにミックスして仕上げられた至極の音源です。ライブ音源とはまた一味違う会場の熱気を感じるができます。

Loves Parting - From "Circle Waltz" ‑ by Don Friedman, Chuck Israels, Pete La Roca

open.spotify.com ドン・フリードマンを代表するアルバムから1曲を選びました。演奏はピアノはドン・フリードマン、ベースはチャック・イスラエル、ドラムはピート・ラロカのトリオです。向かって左からピアノ、ベース、ドラムと並んでいます。
ピアノは低音よりも高音がやや近く感じられなければいけません。ベースは右から聞こえますが、ドラムよりも中央にある必要があります。ピアノの音色がどう聞こえるかでダイナミックレンジの広さや音の質そのものがわかります。

時代の風-人が人でいられた時 - by Joe Hisaishi

open.spotify.com 好みで入れている楽曲ですが、左右に広がるステージにそれぞれの楽器の位置がはっきりと出ているので定位のチェック用としても使っています。
電源やGNDが弱い環境ではステージに広がりがなく音にハリが出ません。

1144 A type - by Shiro SAGISU

open.spotify.com 時代の風と同じく好みで入れています。ホールのようなエコーの広がりが要求され、空間表現が乏しいと音がダイレクトに近くなる傾向があります。

UNICORN - by Hiroyuki Sawano

open.spotify.com 時代の風よりも広く、1144よりはやや狭く聞こえれば音場、空間表現、定位は正確と言っていいと思います。
低音がしっかりと下支えをしないと全体的に軽く聞こえます。

Wings of Piano / 琴之翼 - by V.K

open.spotify.com Deemoというリズムゲームに収録されていた楽曲です。当時から好きで何度もプレイしていました。V.Kは台湾のピアニストで、作曲や編曲、プロデューサーも手掛けています。
ピアノは独特な浮遊感があり、電子音も混ざっています。この浮遊感がしっかりと出るかどうか、そしてラストの低音がしっかりと響くかどうかです。

Silence In The Storm - by 馮羿

open.spotify.com 台湾の天才ウクレレ少年フェン・イーが2019年に出した1stアルバムのタイトルにもなっている1曲。彼のことは2018年頃にYouTubeへ投稿されていた動画で知ったのですが、当時は父親が運転する車の中で演奏していました。

www.youtube.com この演奏が本当に素晴らしい。技術だけでなく引き込まれるような魅せる演奏ができるんですよね。
当時は再生回数も少なく隠れた存在でしたが、この数年で一躍有名になり2023年には日本でライブも行っています。

彼の魅力が詰まった1stアルバムの中で私がお気に入りなのはアルバムタイトルと同名のSilence In The Stormです。結構難しい曲なんですけど、彼の手にかかればさらっと演奏してしまう。弦を弾く指まで見えるかのような実在感が感じられれば最高ですね。
2分15秒付近からはウクレレのボディを叩く音が心地よく響きます。確かな音像があり、残響が適度に広がるかどうかが重要です。

The Kiss - by PHILDEL

open.spotify.com 録音が非常に素晴らしく、ピアノの音像が非常にはっきりと出ています。そしてそれを潰さずに最大限生かしたうえで全体を仕上げてくるミックスとマスタリングが本当に素晴らしい。
ピアノは一つ一つの音が確かな音像を持っているかどうか。よくあるのは高音が潰れることで平坦な音になってしまったり、強く響きすぎてしまうことです。はっきりとした音像を持って自然な残響とともに聞こえることが条件です。

Organ Symphony No. 6 in G Minor, Op. 42, No. 2: I. Allegro - by Jan Kraybill, Charles-Marie Widor, Pascal Pilloud

open.spotify.com Organ Polychromeはパイプオルガンという巨大な楽器が持つダイナミックレンジと音圧を素晴らしい録音とマスタリングで閉じ込めたアルバムです。
パイプオルガンは20Hzの超低音から10kHzを軽く超える超高音までという非常に広い範囲をカバーします。この楽曲でも低音のピークは21Hz、高音のピークは19kHzまで入っており、再生機器の性能と人間の可聴域の限界に迫るような音を楽しむことが出来ます。
ピークと合わせて倍音とホールいっぱいに広がるエコーを余すこと無く収録されています。開始10秒で周波数特性のバランスが見えますし、1音1音のピークを確実に聞き取れなければいけません。

Vado giù - by Musica Nuda

open.spotify.com コントラバスとボーカルの異色ユニットです。こちらもかないまる氏が推薦されていたアルバムで、艶の良いボーカルと多彩な演奏で盛り上げるベースが良い味を出しています。
ボーカルはやや右にずれています。ややノイズがありますが細かいところまで再現されています。コントラバス奏者の動きで服が擦れる音までリアルに入っています。意図したものかどうかはわかりませんが、これがまた実在感を増すのか目の前に2人のステージが浮かび上がります。
コントラバスはハーモニクス奏法から始まり、中盤からアルコ奏法へと変わります。これがまたリアルで目の前で引いているかのように感じられます。

Come Together - by Musica Nuda, Ferruccio Spinetti

open.spotify.com こちらもVado giùと同じくMusica Nudaです。何度も言いますがコントラバスとボーカルの2人しかいません。途中で「ホワホワホワ」という音が入りますが、これもコントラバス奏者が鳴らしています。

www.youtube.com

Slow Orbit - by yaya3

open.spotify.com 3連のベースラインが追えるかどうかです。何度もベースラインという言葉が出てきますが、ベースラインとはなんぞやと言うと「低音によるパターン」を指します。低音によってコードを補完することでリズムの変化を確実に捉えることができます。特に西洋音楽においては非常に重要です。あちらはベースラインを用いて全体のリズムを取りますから、低音が出ている出ていないという話ではなく、音程の変化を的確に捉えながら他の音を邪魔しないようなバランスが必要となります。
Slow Orbitのベースラインを確実に捉えられない(1音だけ小さく聞こえづらいなど)イヤホン・ヘッドホンは低音のしつけがなっていません。

Marble Machine - by Wintergatan

open.spotify.com 鉄球を利用した装置で演奏されるというちょっと変わった楽曲です。こちらの動画を見てもらえればわかりやすいかと。

www.youtube.com

出だしの鉄琴の音が重要です。特に8kHz付近での外耳道共鳴を起こしやすく不快な刺激となりやすい音です。高音の質感と刺激を失わずに心地よく響かせることが出来ているかどうかで高音の特性がわかります

愛は静かな場所へ降りてくる(2011リマスター・バージョン) - by ZABADAK

open.spotify.com この曲を染み入るように聞かせるなら女性ボーカルについては満点です。中高音で優れた特性を要求し、7~10kHzの歯擦音も入っているので心地よく聞かせるには相応の性能が要求されます。他の楽曲では満足のいく音を鳴らすのに、この楽曲だけ不合格なんてこともあるくらい難しいのです。
透き通った高音が特徴ですがハイ上がりや上ずった音はNGです。一般的なボーカル域の枠を少し超えるような音域のため、BAの数が少ないイヤホンでは倍音やエコーが荒れてしまうことがあります。かと言って抑えすぎてしまうと染み入るようなボーカルにはなりません。
下支えとして50Hzの低音が入っています。この低音がしっかりと聞こえなければ全体的に浮ついた印象を受けるでしょう。

Spotifyにある音源はベスト盤に収録されている2011年にリマスターされたものです。私の手元には1990年に発売されたアルバムCDがありますが、Spotify音源は僅かに高域が抑えられている印象があります。

遠い音楽 -20th Version - by ZABADAK

https://open.spotify.com/intl-ja/track/2w7gK9KKTKG- by0IS8J8SxZ?si=48e2f0cc6b9a4654open.spotify.com ZABADAkからもう1曲。ZABADAKというユニットを象徴する曲とも言われます。Spotifyにあるのは20thというアルバムに収録されたバージョンですが、私が持っている音源は愛は静かな場所へ降りてくると同じアルバムの1990年版です。20th versionは再録のためマスタリングなどに違いはないと思います。
オリジナル版と20th Versionはメインに女性ボーカル、サブとして男性ボーカルが入ります。この2人のボーカルがどのように聞こえるかでボーカル域の特性がわかります。

ちなみに、アイドルマスターシリーズのCD「MASTER SPECIAL 03」にて如月千早の歌うカバーバージョンがあります。如月千早役の今井麻美は遠い音楽を聞いたことがなかったものの、数あるアイマスでカバーされた楽曲の中で特に印象深い曲として遠い音楽を挙げています。

人魚 - by 宇多田ヒカル

open.spotify.com この曲は知っている人も多いと思います。とにかく録音の質が良く、マスタリングもJ-POPとは思えません。宇多田ヒカルのボーカルがどのように聞こえるか、インストがボーカルと確実に分離されているかどうかです。

風の祭日 - by Hiroko Sohma

open.spotify.com こちらもJ-POPとは思えない音の良さが光ります。正直なところ人魚を超えているかもしれない。
全てのインストは明確な定位を持って立体的に広がります。左右だけではなく前後や上下にも明確な定位があり、イヤホン・ヘッドホンの空間表現が試されます。ボーカルは中心にありインストとは明確な分離感があります。

When I Look In Your Eyes - by Diana Krall

open.spotify.com ボーカルのバックにあるストリングスの立体感、これがホールで録音したのかと思うくらいの広さで空間全体に広がります。このストリングスがどこまで広がるかで空間表現が丸裸にされてしまいます。
ダイアナ・クラールのボーカルも素晴らしい。喉の奥までしっかりと捉えた録音が活きています。

I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter - by Paul McCartney

open.spotify.com 張りのあるスネア、空中に浮かぶピアノ、弦を弾く音が残るベースが豊かに入ります。スネアとベースの音で中音から低音までの特性がはっきりとわかります。
ピアノはダイアナ・クラールの演奏です。1音1音に明確な定位があるため横に広がります。これがどこまで正確に把握できるかどうかで左右の定位感がわかります。
ボーカルはポール・マッカートニー。しゃがれた声が混じりますが、これがまた楽曲全体として完成していてとても心地よいのです。

Where Do You Start? - by Sophie Milman

open.spotify.com ピアノはやや高い位置に定位しています。特にイントロのピアノの高音が十分な高さを持っているかどうかをチェックしています。
ボーカルもやや高い位置から降り注ぎます。2chのステレオでも高さをしっかりと表現できている音源なのです。この高さ感がいかにしっかりと鳴らすことができるかどうかで空間表現がわかります。

Eternal Flame(カバー) - by Emi Fujita

open.spotify.com まずはボーカルとアコースティックギターがしっかりと分離されているかどうか。アコースティックギターは右にあり、ボーカルは中央やや上から降りていきます。この上からくるボーカルをいかに鳴らせているかどうかで空間表現のレベルがわかります。
ボーカルは藤田恵美さんの口元がわかるかのようなディティールがあります。やや近い位置に置かれていますが、近すぎるてはいけません。

A Tisket A Tasket - by Natalie Cole

open.spotify.com イントロから入るベースは豊かでキレがあり、楽曲全体のリズムがはっきりとわかるように支えている必要があります。
トランペット、シンバル、ボーカルが続けて入りますが、歯切れよく軽快に進んでいきます。全体的に「しゃれている」と言えるくらいのリズムを刻んでいるかどうかです。

Just A Little Lovin' ‑ by Shelby Lynne

open.spotify.com Shelby Lynneは北米でグラミー賞の最優秀新人賞を受賞したほどの実力を持つ歌手です。素晴らしい演奏の中で染み入るような歌声が聞こえます。
ステージの上でボーカルを中心としたスポットがあたっているかのような深く澄んだ空間に音が消えていきます。

一途 ‑ by King Gnu

open.spotify.com ジャズとは一味も二味も違いますが、ロックやポップスの音が良くなればジャズやクラシックの音も良くなります。本当に良い音というのはジャンルを選びませんが、音源の質は選ぶ傾向があります。
イントロのギターとドラムは1つ1つの音に明確な音像がありますが、一つの大きな連続したまとまりとして聞こえなければいけません。

HOLY LONELY LIGHT ‑ by Fire Bomber

open.spotify.com まずはイントロのシャウトがどこまで高く伸びるかどうか。楽器はラウド感のある厚い音があります。スピード感とラウド感の強い激しめなサウンドですが、1曲全体を通して聞くと不思議な心地よさも感じます。この1曲が最後までスピード感とラウド感のあるサウンドで鳴らせるかどうかです。

Echoes in Rain ‑ by エンヤ

open.spotify.com 言わずとしれた女性ボーカルの名曲。歌声は「世界を癒す奇跡の歌声」とも評され、ニッキー・ライアンのプロデュースによって数々の名曲が生み出されています。
ボーカルは左右に優しく包み込むように広がり、滑らかで艶があり、心地よく響かなければいけません。

Watermark - 2009 Remaster ‑ by エンヤ

open.spotify.com 57秒付近に入る37Hzの低音が聞こえるかどうか、その前には約8kHzのコーラスも入ります。ピアノの音は豊かで硬すぎても柔らかすぎてもいけません。
57秒に37Hzが入った後、32Hz~45Hzまでのサブベースが楽曲全体で10回以上入ります。1988年のCD版ではしっかりと聞き取れるように入っていますが、Spotifyなどの配信サービスで聞ける2009年のリマスター版では確かな音像と量感はそのままに控えめなバランスに抑えられています。可能であれば1988年版を聞いて欲しいところですが、リマスター版でもサブベースのチェック用としては使えるでしょう。この深い低音は下から支えていなければならず、ピアノやボーカルに被るようであれば低音の定位に問題があります。

Caribbean Blue - 2009 Remaster ‑ by エンヤ

open.spotify.com ボーカルの美しさだけでなく音作りでも魅せるのがEnyaの楽曲です。美しいシンセサイザーのサウンドとボーカルの繋がりが美しく、舞踏曲のようなリズムでカリブ海の碧を表現しています。
この楽曲を正しく鳴らすのは容易ではなく総合的な音質の良さが求められます。4分間が爽やかな碧い世界で染まります。

Only Time ‑ by エンヤ - ボーカル、音の質、空間表現

open.spotify.com 音作りとしてはEchoes in Rainに似ているところがあります。包み込むように広がる女性ボーカルに、ゆったりとしたリズムを刻むインストが繋がります。

The Flame ‑ by チープ・トリック

open.spotify.com ロックフェスの会場に響かせているように伸びるボーカルは距離感が大事です。奥行きの表現が苦手な場合はボーカルが近く感じるでしょう。
楽器が出す音は一貫していなければいけません。ボーカルがいてもいなくても、同じように聞こえなければいけません。

Losing My Mind ‑ by チャーリー・プース

open.spotify.com イントロのボーカルは左上から降り注ぎます。このボーカルの定位で音場の広さや空間表現のレベルがわかります。

living inside the shell ‑ by Steve Conte, Shanti Snyder

open.spotify.com 攻殻機動隊で使用されているボーカル曲はどれも音質含めて本当に素晴らしいのですが、SACのエンディング曲が特に好みです。
男性ボーカルを含めた中音の質がわかりやすく、見えやすい粗をどこまで整えられるかどうかが重要です。

lithium flower ‑ by Scott Matthew

open.spotify.com イントロの低音が演奏している指の動きまで見えるような豊かさを持っています。低音のバランスが悪いと豊かさが感じられないことが多く、living inside the shellと合わせて全体の音質を見るときに使用しています。

Better Days Are Coming ‑ by Neil Sedaka

open.spotify.com 洋楽では往年の大スターであるニール・セダカの名曲です。日本ではZガンダムのオープニングとしてアレンジされたバージョンが使用されたことでも知られていますが、権利関係やらなんやらかんやらで色々とあるそうです。
ノリの良い軽快なリズムとともに進行していき、その中に浮かぶボーカルが素晴らしく「洒落た」感を出してくれます。

Blurry ‑ by Puddle Of Mudd

open.spotify.com 高音や低音はわかりやすく質が出やすいのですが、中音は高音や低音で誤魔化しやすいというのもあって聞き込まないとわかりづらいんです。こういう激しくないけれど音の数がそれなりに多いポップスやロックは中音の質を見るには重宝します。そして普段からよく聞いている好みな楽曲というところが一番大事で、普段から聞き込んでいるからちょっとした違いにも気づきやすい。

I Believe ‑ by Blessid Union Of Souls, David Kershenbaum

open.spotify.com 哀愁や切なさという言葉がとても似合う1曲です。
音質はピアノに強いコンプがかかっているような印象もありますが、全体を通して聞くともう一度聞きたくなる楽曲です。音質的にどこがどうというわけではないのですが、楽曲の持つ雰囲気や感情という部分でどのように聞こえるかが大事な1曲です。

Hallelujah ‑ by ペンタトニックス

open.spotify.com ボーカルの音質をチェックするならまずはこの曲から聞いています。喉の奥を捉えた録音は圧倒的な実在感があり、染み入るように聞こえます。

Undercover Martyn ‑ by トゥー・ドア・シネマ・クラブ

open.spotify.com UKロック・ポップスといえばTwo Door Cinema Clubが真っ先に出てくる人も多いでしょう。
試聴で使用するのはUndercover Martynです。どのアルバムも音の良さは当たり前ですが、Undercover Martynは聞き込んでいることと3分以下と再生時間が短いので1曲を通して聞くのに時間がかからないため使いやすいんですよね。
音についてはジャズやクラシックのような良さではなく、あくまでもロック・ポップスの範疇にありながら細かな部分まで手が入っています。

Come into My World - Radio Edit [Radio Edit]

open.spotify.com CGを使わずに地道な手作業で作られたMVも有名です。
優しく包み込むボーカルでカイリー・ミノーグの世界に誘われます。息遣いまで感じられるようであればボーカル域のチューニングはなかなかのものでしょう。

Every Hour ‑ by Spencer Groves, ショーン・キングストン, リック・ロス

open.spotify.com 弾むようなサブベースが入っています。低音の質は言わずもがな、中音との分離が良い環境でなければ聞くことが難しい1曲です。

Good Enough ‑ by Evanescence

open.spotify.com この楽曲はイヤホンやヘッドホンなどの下流よりもアンプやDACなどの上流側で音が大きく変わる印象があります。
まずはピアノがしっかりと低く左右に広がるかどうか。ピアノはストリングスに合わせて広がることで音場を作り出し空気感を演出します。そして58秒付近から始まるピアノの低音は重く響かなければいけません。縮こまってしまってドライバーの内側にしか音がない状態は鳴らしきれていません。
ボーカルは中央に定位します。音源での定位ズレは全くと言っていいほどありません。汚れてはいけませんし、滑らかでダイナミクスのあるボーカルです。リバーブなどのエフェクトを多用しているようで、ボーカルは10kHz付近まで入ります。
この楽曲だけでなくアルバム全体として聞くこともおすすめします。Evanescenceというバンドを堪能できる1枚です。

Good-by morning - Self Cover Version ‑ by 宇徳敬子, 中西圭三

open.spotify.com それぞれの楽器が高さのある空間に正しく配置されているかどうかが大事です。そしてボーカルもやや高い位置にあり、その音像にも高さがあります。
Spotifyにあるのはセルフカバーされたもので、男性ボーカルが変わっていたり、楽器のバランスも変えられています。カバー版でも音の良さは十二分にありますが、できればCDを手に入れて聞いて欲しいところです。宇徳敬子さんのボーカルが染み入るように聞こえます。

The Kids Aren't Alright ‑ by ザ・オフスプリング

open.spotify.com イントロのギターで楽曲のテンポに入り、ドラムやギターの厚みとスピード感でさらに盛り上げていき、そしてシャウトするボーカルは歌っている顔すら想像できそうです。
スピード感のあるテンポを維持しながら音の厚みを出すのは意外と両立しづらいんですよね。特に個々の楽器の音がしっかりと分離されながら隙間なく鳴らせているかどうかがキモです。

Heart Of Fire - U.S. Album Version ‑ by Innerpartysystem

open.spotify.com Innerpartysystemはアメリカのエレクトロニックロックバンド。日本国内での活動はあまりないのですが、Heart Of Fireはゲーム「Burnout Paradise」に使用されたこともあるため日本人でも聞いたことがあるという人はいるでしょう。
イントロからパワーと重さのある音を響かせ、それほど早いテンポではないものの運転中に聞いていたらアクセルを少し踏み込みこんで夜の街の光を流して行きたいと思う、そんな1曲です。
The Kids Aren't Alrightと同様に音の厚みがしっかりと再現されているかどうか。音場が狭いイヤホン・ヘッドホンでは聞いてられません。

Soil the Stillborn ‑ by Infant Annihilator

open.spotify.com とにかくスピード感とレスポンスを要求する楽曲です。激しいドラミングがもたついてはいけませんし、ボーカルやギターの分離もはっきりと感じれなければいけません。

Seven Years ‑ by セイオシン

open.spotify.com エモやスクリーモというジャンルにおいてSaosinというバンドを外すことはできないでしょう。私が洋楽にハマるきっかけになったバンドでもあり、非常に思い入れがあります。
スタジオの空気感が絶妙に再現され、男性ボーカルらしくない高音の伸びが感じられなければいけません。ドラムのシンバルがシャリ付くなんてのはもってのほかです。

Collapse ‑ by セイオシン

open.spotify.com Seven Yearsからボーカルが変わりながらも、エモ/スクリーモというジャンルの最終形態とも言われるほどのクオリティにまで昇華されてます。アルバムの中ではYou're Not AloneやVoicesに次いで3番人気です。エモ/スクリーモらしさはそれらに譲りますが、疾走感や爽快感は負けていないと思うんですよね。
Seven Yearsよりも音が詰め込まれているため解像度が低いと聞けたものではありません。隙間はないけれど分離されているという塩梅で鳴らす必要があります。

Road of Resistance ‑ by BABYMETAL

open.spotify.com アイドルとメタルを融合させたBABYMETALの楽曲。イギリスのメタルバンドであるDragon Forceからギタリスト、サム・トットマンとハーマン・リが参加していることでも話題となりました。
イントロからズバーンと強い音を出します。ここでしっかりと低音が入っているかどうかで200Hz前後の特性がわかります。シンバルと同時にバスドラムが聞こえなければいけません。
シンバル系の高音には確かな主張が必要ですが、シャリ付いてはいけません。強い高音とシャリ付いた高音は全くの別物です。

Distortion (feat. Alissa White-Gluz) ‑ by BABYMETAL, アリッサ・ホワイト=グラズ

open.spotify.com イントロやサビのツーバスで低音のバランスがわかります。武道館ライブverと合わせて空間表現や定位感、解像度のチェックでも使用します。

Distortion (feat. Alissa White-Gluz) - 10 BABYMETAL BUDOKAN ‑ by BABYMETAL, アリッサ・ホワイト=グラズ

open.spotify.com 武道館ライブverです。イントロから武道館の空気感が再現できるかどうか。そしてCD版よりもツーバスの低音は見えやすいのですが、低音が抜けすぎていると軽く聞こえます。
間奏ではドラムと一緒にクラップが入ります。このクラップがしっかりと武道館ならではの広さで広がるかどうかです。

Shine ‑ by BABYMETAL

open.spotify.com Road of ResistanceやDistortionとは一味違うややスローテンポなバラード系メタル。METAL GALAXY Disc2のトリとしてArkadiaと合わせて聞いて欲しい曲です。
イントロでシンセの音が広がり、ボーカルと楽器の繋がりも見事。SU-METALのボーカルは透き通っていてどこまでも伸びていきます。

Arkadia ‑ by BABYMETAL

open.spotify.com イントロはShineと同じくスローテンポですが、全てを解放するかのようなスピード感マシマシのドラムとギターで引き込みます。
Road of ResistanceやDistortionと同様に素早いレスポンスを要求しますが、レスポンスだけでは鳴らせないのもまた事実。個々の音の音像を歪ませずにスピード感を維持しつつ最後まで鳴らしきれるかどうかです。

Monochrome ‑ by BABYMETAL

open.spotify.com まずはイントロのドラム。キックには確かなアタック感と音像が必要ですが、音の消え際までしっかりと鳴らす必要があります。イントロだけで低音の質は8割くらい判断できます。
シンバル系は先にも書いたようにシャリ付いてはいけませんが、中音や低音にかき消されてもいけません。シャリ付いて聞こえるなら高音のチューニング不足です。

Monochrome ‑ by BABYMETAL

open.spotify.com 一つ上の曲と全く同じもので、こちらはシングル盤です。シングルとアルバムで音が違うということはなく本当にどちらも同じです。じゃあなぜ2つも入れているのかというと、まだ入れていないと思い込んで入れたら既に入っていまして、削除するのが面倒でそのままになっています。

To the Hellfire ‑ by Lorna Shore

open.spotify.com 音数マシマシでこってりと仕上げられたゴリゴリのデスコア。とにかく音を詰め込んだいわゆる海苔波形音源ですが音として破綻していたり歪んでいるような印象は皆無です。
広いダイナミックレンジを要求し、素材に頼ってチューニングを疎かにしている機材ほど鳴らしきれません。

Eye of Algol ‑ by セリオン

open.spotify.com 荘厳なサウンドを鳴らすシンフォニック・メタルです。音数が多く音圧も強く、ダイナミックレンジの広さや超低音や超高音での歪みの少なさがわかりやすい楽曲です。
ドライバーの性能だけでなくチューニングそのものの実力が出やすい曲だと思います。

My Curse ‑ by キルスウィッチ・エンゲイジ

open.spotify.com ジャンルとしてはメタルコアですが、プログレッシブやオルタナティブらしさも感じさせるKSEらしいサウンドが魅力的な楽曲です。
音質評価では、メタルならではの激しさやレスポンスの速さ、男性ボーカルの伸びや大地に根を張るような太さをチェックします。

Master of the Universe ‑ by ANGUS McSIX

open.spotify.com イギリスのパワーメタルバンド「グローリーハンマー」の元ボーカリストによって誕生した「ANGUX McSIX」の船出を飾ったのがこのMaster of the Universeです。この曲のMVは最高なのでとりあえず見て欲しい。

www.youtube.com

プレイリストに入れた理由の9割は好みです。ジャンルはバリバリのパワー&シンフォニック・メタルで、厚みのある音を詰め込みまくっているためラウドネスノーマライゼーションにガッツリ引っかかっています。

divine intervention ‑ by fhána

open.spotify.com この記事を書くためにいろいろと調べていて初めて知ったのですが、アニメ「ウィッチクラフトワークス」の主題歌です。
こういうJ-POPやアニソンというジャンルにありがちな音を詰め込みすぎている印象が強く、ダイナミックレンジもやや狭く、特に低音が不足していると感じます。こういう楽曲だけにフォーカスしてチューニングを行っているイヤホン・ヘッドホンが稀にあり、半分はそういった製品での音質評価用として入れています。

Symphony No.9 In E Minor, Op.95, B. 178 "From The New World": 4. Allegro con fuoco ‑ by アントニン・ドヴォルザーク, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, ヘルベルト・フォン・カラヤン

open.spotify.com クラシックをよく知らない人でも聞いたことがある新世界より第四楽章です。こちらはカラヤンの指揮でウィーン・フィルが演奏した音源です。
クラシックの聞き方をここで論じるつもりはありませんが、個人的に大事にしているのは音と音の隙間にホールの響きがあるかどうか、音が団子にならず厚みを持っているかどうか、そして左右だけでなく奥行きや高さがあるかどうかです。

Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178 "From the New World": IV. Allegro con fuoco ‑ by アントニン・ドヴォルザーク, レナード・バーンスタイン, ニューヨーク・フィルハーモニック

open.spotify.com こちらはレナード・バーンスタインの指揮によるニューヨーク・フィルの演奏です。指揮者と演奏が違うため印象もガラリと変わっています。
個人的にはこちらのバーンスタイン指揮のものが好みです。ニューヨーク・フィル時代におけるバーンスタインの最高傑作とも言われています。

Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178 "From the New World": III. Molto vivace ‑ by アントニン・ドヴォルザーク, レナード・バーンスタイン, ニューヨーク・フィルハーモニック

open.spotify.com こちらはバーンスタインの新世界より第三楽章です。疾走感のある激しくダイナミックでスピード感があるかと思えば、深く叙情的なゆったりとしたスローテンポでも楽しませてくれます。周波数特性の優れたバランスは言わずもがな、ダイナミックや解像度、レスポンスなどでも高い性能を要求します。

Star Wars Main Title and Ambush on Coruscant ‑ by ジョン・ウィリアムズ, ロンドン交響楽団

open.spotify.com 映画「スターウォーズ」のメインテーマであり、聞いたことのない人はいないと言えるほど有名な楽曲です。
クラシックは楽器の音だけでなくホールそのものを鳴らすことによるホールトーンが醍醐味だと思っています。荘厳で厚みのある音とともに広がる計算され尽くした反射音は、楽器が出す音と合わさって一体感のあるサウンドとして聞こえなければいけません。

5 Anniversaries: No. 5, For Susanna Kyle ‑ by レナード・バーンスタイン, Warren Lee

open.spotify.com レナード・バーンスタインが作曲したピアノソロで、イギリスはイングランドのWyastone Concert Hallにて録音された音源です。ホール全体に響くトーンまでしっかりと収録されています。
ピアノの音には全ての音階にはっきりとした定位が存在します。その微妙な定位がわかるかどうかは当たり前でなければいけません。
1分3秒付近にピアノではない小さい音が入っています。譜めくりの音か、スタッフの誰かが動いてしまったのでしょう。

Somewhere - From 'West Side Story' ‑ by レナード・バーンスタイン, Michael Ball, アルフィー・ボー, Nick Ingman, Czech National Symphony Orchestra, Prague, Royal Philharmonic Orchestra

open.spotify.com 映画「ウェスト・サイド・ストーリー」で歌われた「Somewhere」は、2人の男性ボーカルによる情緒を揺さぶる歌声がとても素晴らしい。メロディーは朗々としていて声を張り上げて歌いたくなりますが、歌詞は「誰にも知られない場所に行こう」という逃避行が書かれています。逃避行という悲しい題材でありながら曲調は明るく、最後には新生活の出発点であるかのような明るさと広がりを見せます。

Maria ‑ by レナード・バーンスタイン, Stephen Sondheim, デイヴ・ブルーベック, The Dave Brubeck Quartet

open.spotify.com 映画「Silver Linings Playbook」で使用された楽曲の一つです。ピアノ、サックス、ベース、ドラムのカルテットの演奏です。
音質のチューニングで最も難しいのは中音だと私は思っています。同時に評価するのも難しい部分が中音です。まず大事なのは音の質に粗が無いかどうか。高音につられてハイ上がりになっていたり、低音に隠れてしまっていてはいけません。

Missa solemnis, Op. 123: Kyrie. Assai sostenuto (Mit Andacht) ‑ by ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン, Eileen Farrell, Carol Smith, Richard Lewis, Kim Borg, Westminster Choir, ニューヨーク・フィルハーモニック, レナード・バーンスタイン

open.spotify.com まず冒頭で一斉に管楽器を吹くところで音の広がり、音場の広さ、解像度がわかります。全体を通して聞くと音の質やダイナミックレンジ、バランスの良さがだいたいわかるのは他のクラシック曲と同様です。

Violin Concerto No. 3 in F Major, RV 293 "L'autunno": I. Allegro ‑ by アントニオ・ヴィヴァルディ, Janine Jansen, Candida Thompson, Henk Rubingh, Julian Rachlin, Maarten Jansen, Stacey Watton, Liz Kenny, Jan Jansen

open.spotify.com ヴィヴァルディの春を主となる独奏楽器としてヴァイオリンを用いた協奏です。主となるヴァイオリンは中央にありますが、周りの管弦楽と見事に合わさった演奏が魅力です。
ヴァイオリンの倍音がいかに美しく出ているか。中音から高音までのバランスと音の質が鍵でしょう。

Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125 "Choral": I. Allegro ma non troppo, un poco maestoso - Live ‑ by ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, レナード・バーンスタイン

open.spotify.com レナード・バーンスタインとウィーン・フィルによるベートーヴェン交響曲第9番、その第1楽章です。日本では第九として年末の風物詩となっていますし、第4楽章は歓喜の歌、喜びの歌として小中学校の音楽の授業でも使用されている知名度の高いクラシックです。
冒頭は非常に小さな持続音から始まり、徐々に音量が上がります。この小さな音がどこから聞こえるかどうかでダイナミックレンジがわかります。店頭での試聴では周囲の環境音があるため使いにくいのが難点です。

Orchestral Suites No.2 h moll BWV1067 - 7. Badinerie ‑ by J.S.バッハ, LYNX

open.spotify.com LYNXというフルート4人組による四重奏です。LYNXは非常に高い演奏技術と、名だたるクラシックの名曲の演奏解釈により国内外から高い評価を受けています。
はっきりと感じられなければいけないのは、ホールそのものを楽器の一部として鳴らしているかのようなホールトーンです。楽器が出す音そのものははっきりと聞き取れるのですが、まるで一つの楽器であるかのようなホールトーンが絶妙なバランスで空間そのものを鳴らしています。この空気感が表現できているかどうかです。それぞれの楽器とホールトーンが一体となれば、他のクラシック音源とは全く違う新しい世界を魅せてくれるでしょう。

Symphony No.25 g moll K.183 I Allegro con brio ‑ by ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト, LYNX

open.spotify.com LYNXの楽曲はFLAC音源も合わせると計5曲を使用しています。これら全てでLYNXの演奏がしっかりと鳴らせていなければいけません。楽器の存在感とホールトーンの融合は、ホールトーンに包まれる以上のサウンドを体感できるでしょう。

Symphony No.6 III Allegro molto Vivace ‑ by ピョートル・チャイコフスキー, LYNX

open.spotify.com 楽器とホールトーンが融合していると言っても、定位やステージ感のある空間表現が無いわけではありません。4つのフルートはしっかりとした定位を持っていますし、高さや奥行きの表現は必須です。
個々の楽器の音とホールトーンには境目がありそうでないような絶妙な繋がりが保たれていますから、4つのフルートの間には確かな隙間がありながら音が無い部分は一切ありません。
筐体内でのエコーがしっかりとチューニングされていなければ不要な反射音が生まれてしまいホールトーンが過剰になるでしょう。逆もまた然りで、小さな音の表現ができなければホールトーンを再現できません。

Violin Concerto in D Minor: I. Allegro con fermezza ‑ by アラム・ハチャトゥリアン, Julia Fischer, Russian National Orchestra, Yakov Kreizberg

open.spotify.com ヴァイオリンをメインに据えたコンチェルトです。ユリア・フィッシャーは日本では一般的に広く知られてはいませんが世界的に有名で高い評価を受けているヴァイオリニストです。
オーケストラによる前奏から始まり、隙間なく流れるようにスッとユリア・フィッシャーに渡ります。2chの可逆圧縮音源というネガティブな要素がありながら十二分に実在感のあるサウンドが詰まっています。オーケストラでステージを見せ、ユリア・フィッシャーのヴァイオリンはその中にふわっと浮かび上がります。

Violin Concerto in D Minor: II. Andante sostenuto ‑ by アラム・ハチャトゥリアン, Julia Fischer, Russian National Orchestra, Yakov Kreizberg

open.spotify.com ユリア・フィッシャー2曲目です。先程とは打って変わって小さな音量かつスローテンポです。小さな音をどこまで表現できているか、終盤の盛り上がりが破綻しないか。小さな音を細かいところまでしっかりと表現するのは意外と難しいんです。特に安い中華イヤホンでは、チューニングにかけられるコストの少なさもあり、手が回っておらず粗が見えやすい部分です。

Violin Concerto in D Minor: II. Andante sostenuto ‑ by アラム・ハチャトゥリアン, Julia Fischer, Russian National Orchestra, Yakov Kreizberg

open.spotify.com 冒頭からババーンと派手な前奏が入ります。解像度の低い機器では鳴らしきれないでしょう。本当の意味での解像度が試されます。
オーケストラと独奏楽器の繋がりは極めてスムーズです。周波数特性のバランスが悪いと不自然になるでしょう。ユリア・フィッシャーが演奏するヴァイオリンが中央にふわっと浮かび上がり、これが本当に素晴らしい。オーケストラと比べると小さい音ですが何倍もの実在感・存在感があります。基音と倍音のバランス、つまり中音に対しての高音のバランスが優れている必要があります。

All-night Vigil, Op. 37, "Vespers": Bogoroditse Devo (Virgin, Mother of God) ‑ by セルゲイ・ラフマニノフ, St.Petersburg Chamber Choir, Nikolai Korniev

open.spotify.com オランダの教会を使用して録音されたアカペラのコーラスです。
冒頭は非常に小さい音から始まり、教会という荘厳な空気を感じさせます。聖歌隊はひな壇でパートごとに分かれています。そして教会の天井が高いため音は縦に長く伸びます。この左右と高さがしっかりと表現できている必要があります。終盤は音量が上がり天高く登るような伸びがあります。ここで天井が見えてはいけません。どこまでも高く伸び、一杯に広がらなければいけません。

All-night Vigil, Op. 37, "Vespers": Slava v vyshnikh Bogu (Glory to God in the highest) ‑ by セルゲイ・ラフマニノフ, St.Petersburg Chamber Choir, Nikolai Korniev

open.spotify.com 同じアルバムからもう1曲。聞きどころはBogoroditse Devoと変わりません。

Concerto for Organ, Strings and Timpani in G Minor ‑ by フランシス・プーランク, Gillian Weir, English Chamber Orchestra, David Hill

open.spotify.com パイプオルガンの音というのは非常に広いダイナミックレンジと優れたバランスを要求します。たった一つの楽器で高音から低音まで、小さな音から大きな音までを鳴らせるからです。
実際の教会で録音されたこの楽曲は、教会ならではの高さが上手く表現されています。2chステレオの限界を試すかのような音源です。マルチチャンネルならもっとすごいんだろうなと思いながらまだ聞けていません。

Agapē ‑ by メロキュア

open.spotify.com アガペーと読みます。アニメ「円盤皇女ワるきゅーレ」の挿入歌です。個人的には好きな楽曲ですが、音質面で見ると問題作です。
音質としてはJ-POPやアニソンによくある音を潰しすぎています。まずドラムの音が聞くに耐えません。スネアはまだ大丈夫ですが、サビのシンバルは酷いとしか言いようがない。シャリ付くというよりもジャリジャリと歪んだ音を出しています。おそらくボーカルに被らないようにコンプやリミッターをゴリゴリにかけたんでしょう。ピアノはとても良いのですが、ボーカルは遠く、全体的に平面的な印象があります。
じゃあ音質評価のどこに使用するかと言うと、このような酷い音をどう鳴らすかでいろいろと見えるものもあるんですよ。アニソンに特化したようなチューニングを行ったイヤホン・ヘッドホンは一発でわかります。

青春コンプレックス ‑ by 結束バンド

open.spotify.com よくあるアニソン系の音を詰め込んだ海苔波形音源ではあるのですが、聞いてみると意外と悪くない印象を受けます。もちろん良い音とは別物なのですが、音と音の間にはしっかりと隙間があり、聞いていて嫌になる音ではありません。
満足に鳴らせるなら合格点かなと言える楽曲の1つです。

Stellar Stellar ‑ by 星街すいせい

open.spotify.com 「彗星の如く現れたスターの原石」ことアイドルVTuber星街すいせいのソロ曲です。すいちゃんの艶と伸びのあるボーカルと、ボーカルと上手くつなげて広がりを持ったインストが魅力的な1曲です。
女性ボーカルの伸びやダイナミックレンジの確認に使用しています。

schwarzweiβ 〜霧の向こうに繋がる世界〜 ‑ by 霜月はるか†Revo(Sound Horizon)

open.spotify.com 2世代前くらいのオタクなので霜月はるかがめっちゃ好きなんですよ。同じ世代のオタクはみんな好きだと思っていますが、インターネットの摂取が偏っていますね。

リライト ‑ by ASIAN KUNG-FU GENERATION

open.spotify.com ロックの低音がしっかり出るようになるとクラシックやジャズの低音はもっと良くなるんですよ。そういう意味で確認用として使っていますし、単純に好きだから入れている楽曲です。
冒頭の数秒間で低音チェックはほぼ完了です。音が軽い場合はサブベースがしっかりと出ていないことが多いですね。

winning the soul ‑ by オグリキャップ (CV. 高柳知葉), スーパークリーク (CV. 優木かな), サクラチヨノオー (CV. 野口瑠璃子), メジロアルダン (CV. 会沢紗弥), ヤエノムテキ (CV. 日原あゆみ)

open.spotify.com こちらも音質としてはよくあるアニソンです。9割くらいは好きだから入れていますが、音の厚みが足りていなかったり、解像度不足な機器では満足に鳴らせないことが多いです。

KABANERI OF THE IRON FORTRESS ‑ by EGOIST

open.spotify.com カバネリの続編はまだですかね

さまよえる蒼い弾丸 ‑ by B'z

open.spotify.com B'zで好きな曲を挙げろと言われたらこの曲かFRICTIONのどちらかで迷うと思います。その2曲しか知らないだけなんですがね。
自分は生演奏と打ち込みの間にはまだまだ壁があると思っていまして、空気感や熱の入り方がやっぱり違うなと。それを感じさせてくれる曲です。

花ハ踊レヤいろはにほ ‑ by チーム“ハナヤマタ”

open.spotify.com 主題歌となったアニメが好きだからというのもあるのですが、曲としても音質としても結構好きです。周波数特性のバランスとか、音の質そのものがかなり反映されやすいと思います。

瞳の中のシリウス ‑ by Takane Shijou (CV: Yumi Hara), 高坂海美 (CV.上田麗奈), 徳川まつり (CV.諏訪彩花), Miya Miyao (CV: Choucho Kiritani)

open.spotify.com 高音と女性ボーカルの確認用で使っていました。過去形なのは今はあまり使わなくなったからでして、単純に好きだから残っています。
僕が本格的にポタオデというものにハマった頃はこの楽曲のボーカルが刺さるイヤホンがそこら中に残っていました。2024年現在ではそんなイヤホンは淘汰されたように思いますが、家電量販店に行くとまだちらほら見かけますね。

約束 ‑ by 如月千早 (CV: 今井麻美)

open.spotify.com ピアノ、ドラム、ベースに女性ボーカルというオーソドックスなバラード曲です。女性ボーカルの伸びと楽器のサウンドがいかに融和しているかどうかです。ボーカルの歌唱力を活かしながらバラードとして破綻せずに鳴らす必要があります。

目が逢う瞬間(とき) ‑ by 如月千早 (CV: 今井麻美)

open.spotify.com ポタオデにハマった初期の頃から低音の確認用で使っています。冒頭でドーンと響く低音はミッドベースをキックとしてサブベースが広がります。この低音がしっかりとした存在感を持っているかどうかと同時にボーカルがどれくらい伸びるかを見ています。

Snow White ‑ by 如月千早 (CV.今井麻美)

open.spotify.com 約束と同様のスローテンポなバラード曲です。こちらのほうが音数が多く、やや詰め込まれている印象があります。音の隙間の表現力が要求されます。

千本桜 ‑ by 和楽器バンド

open.spotify.com 音場が狭く、位相の狂いも目立ちます。音にはしっかりと厚みがあるのですが全体的に浮ついた印象が拭えません。音源がこうなっていてはどうしようもないのですが、良くない音質を評価するために入れています。

oblivious ‑ by Kalafina

open.spotify.com イヤホン・ヘッドホンの空間表現や中音から高音にかけての反響特性がわかりやすく、試すような音源ではありませんが違いがわかりやすいため重宝します。

失星 ‑ by Layla.

open.spotify.com ボーカルの輪郭がとてもリアルに入っています。この実在感のあるボーカルがインストに埋もれずに再現されるかどうか、インストと合わさった立体的な空間表現が再現されるかどうかです。

クオリア ‑ by UVERworld

open.spotify.com 本当に音がいい。日本のロック、ポップスではトップクラスに音がいい。ダイナミックレンジの広さ、空間表現の豊かさ、周波数特性バランスの良さなど、機器の性能を試すような音源です。
男性ボーカルって意外と難しいんですよね。ハイ上がり気味になってしまったり、低音が強すぎて埋もれてしまったり。この楽曲を満足に鳴らせるようになればジャズやクラシックも存分に鳴らせるでしょう。

浮遊 ‑ by ヒバナ

open.spotify.com ボーカルのレンジが広く、伸びもあるため中音から高音にかけての特性がモロに出ます。そしてインストは音数が多いため十分な解像度を要求します。

sign ‑ by amiinA

open.spotify.com 2012年に結成し、2016年には新メンバーを迎えユニット名の表記をamiinAに変更。雑誌の読者モデルがスタート地点だったアイドルユニットですが、音楽的に高い評価を受け、2020年10月にラストライブを行い解散となりました。
私がamiinAのことを知ったのは最近のことで、アイドルソングらしさを残しながらレベルの高い楽曲と歌声がとても魅力的だなと感じました。いわゆる楽曲派と呼ばれるアイドルの中でも、一際輝く存在だったんだろうなと思います。
signは2018年に発売された2ndアルバム「Discovery」に収録されている楽曲です。再生数が2桁ほど足りていないのでとりあえずMVを見て欲しい。

www.youtube.com

活動中に知っていたら確実にライブ行ってましたね。
signは同アルバムの収録曲の中では音数が少ない楽曲ですが、10kHz以上の超高音から40Hz付近の超低音まで入れていながら破綻しておらず、十分なダイナミクスを持たせています。
インストの音質も素晴らしいのですが、特に際立っているのがボーカル。ダイナミックレンジの大部分をボーカルに割り当てているのでしょう。アイドルソングとは思えません。
この1曲で音質というものの8割くらいは試せるんじゃないかと思えます。

あとがき

レビューなんてものは結局のところ主観でしか無いというのはその通りなのですが、主観と客観を埋めるための努力をしなくてもよいというわけではありません。所詮は主観なんだからと言ってしまってはレビューではなく感想ですし、読み手に全てを投げてしまうことになります。
その主観と客観の隙間を埋めるために音質評価に使用しているプレイリストを公開していましたが、実際にそれらの楽曲をどのように使用しているのかを知っているかどうかという情報はレビューを読む際に重要なのではと思ったのがこの記事を書くきっかけになりました。自分自身の中でレビューする際の基準としてそれぞれの楽曲についての情報を整理するという意味も含まれています。
実際に書き始めてみると膨大な文字数という情報量に立ち向かわなければならず、書き始めてから公開までに多くの時間がかかってしまいました。文字数は当ブログで最多です。埋め込みやMarkdownの記号が入っていますが、はてなブログの文字数カウントでは5万文字を超えています。
当ブログのレビューを読むためだけでなく、他のレビュー記事を読む際や、店頭での試聴などの手助けになれれば幸いです。