おはこんばんちは、あぶさんです。
今回はSOUNDPEATS様からのレビュー依頼を頂きまして、同ブランドの最新オープンイヤーイヤホン「GoFree2」をレビューします。
1万円以下という低価格ながらHi-Res Audio Wireless認証に国内最大級のオーディオ・ヴィジュアルアワード「VGP2024」にて金賞を受賞したという話題のイヤホンです。
外観・特徴
SOUNDPEATSは2010年に創立されたオーディオブランドです。中国の深圳に本社があり、日本ではSOUNDPEATS JAPANが展開しています。
AnkerやEarFunと並んで低価格ながら性能の良いワイヤレスイヤホン・ヘッドホンを続々と送り出しています。
SOUNDPEATS GoFree2は同ブランド初のオープンイヤーイヤホンです。オープンイヤーイヤホンとは耳を塞がないイヤホンのことです。
従来のイヤホンには耳の入口に置いて使用するインナーイヤー型と外耳道に差し込んで使用するカナル型がありました。どちらも耳穴を塞ぐため遮音性が高く、音楽への没入感を高めることができますが、外で使用することが多くなるワイヤレスイヤホンでは事故の原因となってしまうことも少なくありません。
周囲の音が聞こえない問題を解消するために外音取り込み機能が開発されたり、骨伝導ドライバーを採用することで耳穴を塞がないワイヤレスイヤホンが登場しました。そして生まれたのが優れたサウンドと周囲の音が自然に聞こえる性能を両立したオープンイヤー型です。遮音性については望めませんが、耳に何もつけていない状態と同様に周囲の音を聞きながら使用することができます。
GoFree2はSOUNDPEATS初のオープンイヤーイヤホンでありながらLDACに対応することでハイレゾオーディオワイヤレス認証を取得。VGP2024で金賞を受賞しています。パッケージにもバッチリとロゴが印字されていますね。
骨伝導ドライバーを採用しないオープンイヤーイヤホンでは最安クラスとなる1万円を切る価格を実現している点も見逃せません。安価なTWSで定評のあるAnkerでもオープンイヤーイヤホンは1万円台半ばですので手が出しにくい状況でした。TWSの普及価格帯は1万円以下のエントリークラスですし、1万円を切る製品が出たことによってオープンイヤーイヤホンが広く普及するキッカケになるかもしれませんね。
GoFree2にはイヤーフックがあるため装着しながら運動をしても脱落しにくくなっています。外出時に使用してみたのですが脱落することはありませんでした。
フックを収めるために一般的なワイヤレスイヤホンと比べるとケースが大きく感じますが、縦横は交通系ICカードとほぼ同じサイズですので日常の持ち運びにはそれほど苦労しないでしょう。
本体はブラックですが、SOUNDPEATSのロゴが入った部分はタッチパネルとなっています。
タッチパネルの操作はSOUNDPEATSのアプリからカスタマイズが可能です(詳細については後述)
スペック・機能
16.2mmダイナミックを採用
使用されているドライバーは16.2mmのダイナミックドライバーです。16.2mmIEM型やカナル型のイヤホンで使用されるダイナミックドライバーは10mm前後のものが多く、12mmを超えるようなドライバーを採用しているイヤホンはほんの一部です。16.2mmは平面磁界型ドライバーを採用したMUSE HiFi POWERをも超えています。
ドライバーのサイズは音質だけでなくイヤホンそのもののサイズも決定します。耳の穴に入れて保持することが前提となるIEM型やカナル型イヤホンではドライバーサイズに成約が生まれます。オープンイヤー型であればドライバーサイズの成約を受けにくくなります。
また、ドライバーのサイズが大きいほど音質が向上するとされています。オープンイヤーイヤホンは音が抜けてしまう問題が避けられないため、少しでも大きなサイズのドライバーを採用することで音質を稼いでいるのでしょう。
音響チューニング「ラムダ音響空間2.0」と低音補強アルゴリズムで妥協しない音質
SOUNDPEATSはドライバーからノズルまでの空間を最適化することで音響チューニングを行っています。この音響チューニングは「ラムダ音響空間2.0」と名付けられ、DSPによる低音補強アルゴリズムと組み合わせることで迫力のある低音を実現したとしています。
デジタルによる音質補正は賛否両論あるかと思いますが、ワイヤレスイヤホンはデジタルの上に成り立つものです。私はワイヤレスイヤホンこそデジタル処理を積極的に使っていくべきだと思っています。
LDAC対応でハイレゾオーディオワイヤレス認証を取得
コーデックは遅延と音質のバランスに優れたSBC、音質面で非常に優れているAAC、ハイレゾ領域の伝送を可能とするLDACに対応しています。
LDACへの対応は低価格帯のワイヤレスイヤホンとしては珍しく、ハイレゾオーディオワイヤレス認証も取得しています。
ハイレゾ音源を十分に楽しめるのかどうかはともかくとして低価格だけど音質で妥協しないという心意気は感じますね。
進化したENCノイズキャンセリングで通話も快適
CVCノイズキャンセリングから進化したENCノイズキャンセリングを採用することで通話時の音質を向上させています。
外出時にGoFree2を使用して友人と通話しましたが、通話時の音質について問題はなく、周囲の環境音をしっかりとノイズキャンセルされていました。
耳掛け式で良好な装着感
耳掛け式のため激しい運動をしない限りは脱落の心配はありません。マットな表面処理で肌触りも良く、長時間の使用でも耳が痛くなることはありませんでした。
防水等級はIPX5です。ある程度の防護効果がありますが、お風呂など水没の可能性がある場所での使用は控えたほうが良さそうです。
本体で9時間、ケースと合わせて35時間のロングバッテリーライフ
バッテリーはイヤホン本体とケースを合わせて最大35時間の使用が可能とされています。試してみたところSBC/AACコーデックの使用でカタログスペック通り、LDACコーデックでは1割ほど短くなりました。
バッテリー側は合計3回の充電が可能ですので、合計35時間使用できるというのは間違いないでしょう。1日以上の使用時間がありますので外出先でも安心ですね。
通信の安定性は最良ではないものの十分なレベル
ワイヤレスイヤホンは名前の通り無線通信で接続するため通信の安定性はとても重要です。
GoFree2の通信安定性は残念ながら最良ではありません。LDACの音質重視(990/909kbps)設定や通話時に接続が途切れることがありました。左右どちらかの接続が切れてしまい片方だけ音が出るという現象もありました。接続が途切れる頻度自体はそれほど多くないのですが、気にされる方はBluetooth Codec Changerなどのアプリを使用してLDACの設定を変えたり、SBCやAACを利用しても良いでしょう。
マルチポイント接続やゲームモードなどの豊富な機能
専用アプリからマルチポイント接続や遅延を少なくするゲームモードを使用することが可能です。
マルチポイント接続は複数の機器との接続をサポートします。SBCコーデックのみで同時に音声を聞くことはできないという成約はありますが、スマホやDAPで音楽を聞きながら、PCで通話が入った時は自動で切り替わるため非常に便利です。
ゲームモードは内部バッファを小さくすることで遅延を減らすモードです。減らすと言ってもBluetoothの仕様限界がありますので音ゲーなどには向いていません。
1万円を切る低価格
GoFree2はAmazonにて定価8,280円、5%オフの割引が入って税込み7,880円で購入可能です。
【VGP 2024 金賞】 SOUNDPEATS GoFree2
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CPY4HM7T
今回はSOUNDPEATS様よりクーポンコード「GoFree2Z655」を頂きました。
このコードを使用することで5%オフの割引を受けられます。販売ページの600円オフクーポンとも併用可能です。
クーポンの期限は2024/06/30 23:59までとなります。
「PeatsAudio」アプリについて
GoFree2はSOUNDPEATSが提供しているアプリ「PeatsAudio」を使用することで様々な機能を利用することができます。
アプリの利用にはSOUNDPEATSのアカウントを作成する必要があります。
Android
play.google.com
iOS
Androidに関しては「SoundPeats」というアプリも配信されていますが、GoFree2では正しく動作しないためGoFree2本体をリセットしなければいけませんでした。GoFree2のマニュアルにはアプリに関する情報が非常に少なく、マルチポイント接続の説明でさらっと登場するだけです。「SoundPeats」ではなく、必ず「PeatsAudio」を使用してください。
PeatsAudioアプリからは以下の機能を利用することができます。
- 予め用意されたEQのプリセット
- カスタムEQ
- 聞こえの個人差を補正する適応型EQ
- タッチパネルの無効化
- タッチ操作のカスタマイズ
- マルチポイント接続のON/OFF
- 低遅延で動作するゲームモード
- ファームウェアのアップデート
- リセット
ワイヤレスイヤホンとしては標準的で大事な機能を網羅している印象です。個人的にはタッチパネルを無効化できるのは嬉しいですね。
カスタムEQは合計で8個まで保存可能です。EQはアカウントに紐づいているため複数のスマホを持っていても同じ設定で使用することが可能です。
音質の評価条件について
クリックで展開
エージング(慣らし)について
100時間以上のエージングを終わらせた状態の個体に付属品のケーブルを組み合わせています。
エージングには手持ちのFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストを使用しています。
評価に使用する音源について
音質評価に使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。
音質評価用プレイリスト内の楽曲については以下の記事で解説しています。
abusan3225.jp
評価に使用する再生機器について
SOUNDPEATS GoFree2のレビューにおいて以下の再生機器と設定値の組み合わせで使用しました。
全てのデバイスで絶対音量は有効にしています。
機種名 | 音量 |
---|---|
motorola edge 30 PRO | 5段階目(33%) |
motorola moto g52j 5G | 8段階目(53%) |
Nubia REDMAGIC 9 Pro | 6段階目(40%) |
客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には可能な限り実際に試聴されることをおすすめします。
今回はSOUNDPEATS様から商品の提供と依頼を受けてのレビューとなりますが、レビューの基準や方法については普段と変わりません。
音質
GoFree2の音質はオープンイヤー型ならではの抜けの良さと心地よい包まれ感のあるサウンドが特徴的です。方向性は違いますが、平面磁界型の開放型ヘッドホンを想像してもらえばわかりやすいでしょうか。
音像の確かさや分離感についてはそれほど良いとは言えないものの、音の広がりや残響を程よくプラスすることで十分に楽しめるサウンドを実現しています。いわゆるサラウンド的な音質ではありますが、ちょうど良い塩梅でバランスが取られており、作られたサウンドという印象は強くありません。
オープンイヤー型で抜けやすい低音もミッドベースを中心として量感と芯が感じられます。「ラムダ音響空間2.0」と「低音補強アルゴリズム」による効果を感じさせながら、わざとらしいブーストではなく自然に持ち上げるような印象です。
細かいところまで分析的に聴き込めば音質的にネガティブな部分は多々あります。そもそも低価格帯のワイヤレス、ましてやオープンイヤー型という構造上、有線イヤホンだけでなくカナル型のワイヤレスイヤホンと比べても音質面では超えられない壁があります。
ネガティブな要素はあるももの、GoFree2は音質面で妥協しているというわけではありません。16.2mmダイナミックドライバーやラムダ音響空間2.0、低音補強アルゴリズム、AACやLDACへの対応など、かけられるコストの中で可能な限りチューニングが行われています。
オープンイヤーワイヤレスイヤホンとしては上手くまとめられたサウンドを実現しており、。
ハイレゾ領域は厳しい
ハイレゾ音源を楽しめるかどうかと言われると厳しいと言わざるを得ません。
LDAC対応が決して無駄というわけではなく、細かいところのディティールではAACよりもLDACのほうが再現度が高い印象はあります。しかし、ハイレゾ音源が持つ情報量を楽しむにはGoFree2の性能では役不足でしょう。
ハイレゾ音源を堪能するというレベルの性能をワイヤレスイヤホンに求めるのであればSONY WF-1000XM5などのハイエンドに手を出すしかありません。ドライバーの再生可能周波数やLDACコーデックへの対応はハイレゾ領域の信号を出力することができるということでしかなく、ハイレゾが持つ情報量をサウンドとして鳴らしきれるかどうかは別問題です。カナル型の有線イヤホンであっても1万円以下の価格帯では厳しいものがありますから、ハイレゾクラスの音質を期待してGoFree2を購入すること自体が間違いでしょう。
ただ単に高音域が強く出ているサウンドをハイレゾとは呼びません。ハイレゾの真価とは、精細なディティール、優れた分離感、ステージやホールを再現するかのような定位と音場、そしてそれらに支えられる音の実在感に他なりません。
GoFree2の音質は決して悪いわけではありません。限られたコストの中で妥協すること無くチューニングが行われており、上手くまとまった雰囲気重視のサウンドとして仕上げられていますがハイレゾ領域の音質は厳しいと言わざるを得ません。1万円以下のオープンイヤーワイヤレスイヤホンとしては仕方のないことでしょう。
やや控えめな高音
高音は中音や低音と比べて控えめかつ薄いベールがかかっているような曖昧さがあり、金属的な質感は残っているものの質の良い高音とは言い難い印象です。
シンバル系はシャリ付きますし、10kHz以上の超高音は強く減衰します。とは言え歪んでいるわけではないので倍音が不自然に響くということはありません。積極的に楽しむには物足りない高音ですが、楽しめないというレベルでもありません。
open.spotify.com 3Dエフェクタを多用した電子音は直線的で歪みが目立ちやすいのですが、GoFree2は控えめで刺激感は乏しいものの歪みを感じることはありません。
上手くまとめられた中音
オープンイヤー型は周囲の音と共に音楽を聴くことになります。そのような場面では周波数マスキングが起こりやすいのですが、GoFree2は騒音の中でも音楽を楽しめるように中音から低音にかけてフォーカスした音響チューニングが行われています。
中音は音楽のメインとなる部分ですから、周囲の音にかき消されないように一般的なV字のチューニングと比べて少し持ち上げられています。音の質という意味では粗が見えますしリアルなサウンドというわけではありませんが、残響やトーンの表現が上手いため十二分に楽しめるサウンドです。
open.spotify.com ディティールの甘さはあるものの、スネアの皮の張りやポールのしゃがれた声の雰囲気や空気感は描写できています。
表現力のあるボーカル
ボーカルも中音と同様に少し持ち上げられています。これも周囲の音でかき消されないようにするためでしょう。
ディティールや定位に甘さを感じるものの、女性ボーカルの伸びや男性ボーカルの芯を上手く表現しています。
open.spotify.com
ボーカルを堪能するとまではいかないものの、雰囲気と言いますか、それっぽさは十分に出せているのがGoFree2のボーカルです。
価格とオープンイヤー型のワイヤレスであることを考えればとても良くチューニングされたボーカルだと思います。
ミッドベースにフォーカスした低音
オープンイヤーイヤホンでは低音が抜けやすくなるため量感が不足しやすいという欠点があります。オープンイヤーイヤホンを作る各メーカーは低音の音質向上に苦心しています。
SOUNDPEATSは「ラムダ音響空間2.0」と「低音補強アルゴリズム」の2つで低音の音質チューニングを行っています。このチューニングはミッドベースに限れば成功しています。
60~250Hzのミッドベースではとても良好な低音です。十分な量感とタイトで引き締まった低音を鳴らし、ベースやバスドラムであれば十分に楽しむことができます。
60Hz以下のサブベース域は明らかに弱く、40Hz以下はほとんど聞こえません。カスタムEQで31~250Hzを持ち上げることで僅かな改善が見られますが、そもそも31Hz付近の再生能力が厳しいと言わざるを得ません。
そもそも低価格帯のワイヤレスイヤホンでサブベースを満足に鳴らせること自体が珍しいため、1万円以下のオープンイヤー型イヤホンに求めるものではないでしょう。
open.spotify.com
ミッドベースに限定すればGoFree2の低音はなかなかのものです。1万円以下のワイヤレスイヤホンとして見ても優れていると言えます。
下支えとしてリズムを取るベースラインも歪み無く聞き取ることができます。
総評「1万円以下で上手くまとめたオープンイヤーイヤホン」
良い点
- 雰囲気重視で聴きどころをおさえたチューニング
- ながら聞きに向いた聞き疲れしないサウンド
- 控えめながら歪みのない高音
- 上手くまとめた癖のない中音
- 伸びや芯があるボーカル
- ミッドベースにフォーカスした質の高い低音
- 良好な装着感
- 専用アプリによる利便性の高さ
良くない点
- LDAC, 990kbps設定では接続が安定しない
- ハイレゾ領域の再生には無理があり、LDAC対応の意味は薄いと言わざるを得ない
- 同梱されているマニュアルに公式アプリの案内が無いためわかりづらい
GoFree2は低価格でありながら音質や機能が上手くまとめられた製品です。
留意しなければいけない部分がいくつかあるものの、どこを見たとしても価格相応のレベルはクリアしています。
流石に4万円近い価格ながら世界が変わったレベルの音質を実現しているBose Ultra Open Earbudsには勝てませんが、オープンイヤーワイヤレスイヤホンの入門機としてコスパに優れた製品です。