ここ1,2年ほどでワイヤレスイヤホン、特に左右を分離した完全ワイヤレスイヤホン(TWS)の普及がすごいスピードで進んでいます。
ワイヤレスイヤホン用の安価で高性能なモジュールが普及したことや、DL配信やストリーミングサービスの普及によりスマホで音楽を聞くことが増えながらスマホからイヤホンジャックが消えたことなど、音楽を聞く環境の多様化や変化もTWSの普及を後押ししています。
有名なオーディオブランドから続々と新製品が発表され、数万円という価格が付けられた高級機から3000円以下でも購入可能な安価な製品まで、いろんなTWSが毎週のように発売されています。3ヶ月ぶりに家電量販店のワイヤレスイヤホンコーナーを覗いてみると、有線イヤホンコーナーと同じくらいの規模にまでスペースは拡大し、扱われている数も爆発的に増えていました。その中にはネットでしか買えなかった広く知られていないブランドのものや、全く知らないブランドのものもあり、この中からおすすめを選んでと急に言われても逆に自分が迷ってしまうんじゃないかと思うくらいでした。
TWS市場の毎月のように拡大しており、それを示すかのようにコンビニでも販売されています。今回は近所のセブンイレブンで購入したTWSを2つレビューしながら、低価格帯のTWSの出来をチェックしていこうと思います。
今回のレビューで使用するのは第2世代Anker Soundcore Liberty NeoとTama's SOUND LIBERTAの2つになります。
AnkerはUSB充電器やモバイルバッテリーで世界的に有名な中国の企業です。技術力の高さに定評があり、迷ったらとりあえずAnkerを買っておけば安心と言われるくらい信頼性が高く性能も良く、そして低価格な製品を多数開発しています。私もAnkerのUSB充電器を使っています。
Tama'sは多摩電子工業株式会社のブランドです。神奈川県川崎市にある企業で、こちらもUSB充電器やモバイルバッテリーを作っていますが、どちらかというと車用品で有名です。Tama'sブランドのカーチャージャーやFMトランスミッター、スマホホルダーなどは全国の車用品店で見かけます。
スペック比較
Anker Soundcore Liberty Neo | Tama's SOUND LIBERTA | |
---|---|---|
タイプ | カナル型 | カナル型 |
防水 | IPX7 | IPX4 |
再生可能時間 | 5時間 | 4.5時間 |
最大再生可能時間 | 20時間 | 約9.8時間 |
充電時間 | 1.5時間 | 1.5時間 |
片側重量 | 約5g | 約4g |
Bluetooth | 5.0 | 5.0 |
対応コーデック | SBC / AAC | SBC / AAC |
ドライバー径 | 6mm | 10mm |
インピーダンス | 16Ω | 不明 |
再生周波数帯域 | 20Hz~20kHz | 20Hz~20kHz |
USB端子 | microUSB | Type-C |
購入時の価格 | 4,999円 | 3,980円 |
保証 | 最大24ヶ月(18ヶ月 + 6ヶ月延長保証) | 6ヶ月保証、片側紛失補償サービス(1年間) |
特徴 |
・グラフェンドライバー採用 ・BassUpテクノロジー |
・ロールスワッピング機能(接続時にバッテリーが少ないほうが親機になる) ・10mmドライバー採用 |
お値段は約1000円の差ですが、スペックを比較する限りでは防水や再生可能時間で大きく差が出ています。保証期間の違いにも注意が必要です。
Anker Soundcore Liberty Neo
Ankerのオーディオ製品は全てSoundcoreというブランドで販売されています。その中のLibertyというシリーズのNeoという製品になります。
Liberty NeoというTWSは2つ存在していて、こちらは第2世代のLiberty Neoです。第1世代からバッテリーや音質がアップデートされています。
後継機種としてLiberty Neo 2がありますが、こちらも継続して販売されています。お値段は全く変わりませんが、Liberty Neoはセール対象になることが多いため安価に手に入れることができます。
ひと目見てAnkerの製品だとわかるパッケージです。裏面には優れている部分がわかりやすく記載されています。
セット内容はこのようになっています。イラストを多用したわかりやすいクイックスタートガイドはAnkerに限らず最近の製品ではお馴染みになりましたね。
イヤーピースがXS/S/M/Lの4種類となっていて、Mサイズが最初から装着されています。安価なTWSは3サイズのことが多いので嬉しいポイントです。
良い点
- 曇りのないスッキリした音質
- 中低音に寄りながらバランスの取れた傾向
- 刺さりを抑えながら見通しの良さを感じさせる高音
- 伸びの良いボーカル
- 締まりとキレのある低音
- 解像度が高く分離感が良い
悪い点
- 他のTWSと比較して少し狭く感じる音場
- 接続が不安定
- イヤホン側で音量操作ができない
- あくまでも価格相応で、言ってしまえば普通の音
良い意味で5000円とは思えない音
Anker Soundcore Liberty Neoの音質には良い意味で裏切られました。安いイヤホンにありがちな高音に低音が思いっきり被ったような音質ではなく、曇りのないスッキリした音質で解像度も高く感じられます。
全体的なバランスは中低音寄りのフラットで、高音は刺さらない程度に優しく丸められています。中低音よりと言っても十分フラットだと思えるバランスなので、原音に忠実なアコースティックな音質といったところでしょうか。Ankerというオーディオ専門ではないメーカーからこんな音が出てくるのかと驚きました。
個人的にはとても好きな音質ですが、音の迫力を求める人にとっては弱いと感じるかもしれません。特にaptx歪みによって起こる音圧の不自然な強化を好ましいと感じるのであればLiberty Neoは物足りなく感じるでしょう。
高音は優しく丸められていて刺さりにくいバランスになっています。ANIMA ANW01のDAYプリセットよりも更に丸められている印象で、少し弱くも感じますが音自体は自然で歪みもありませんので総合的に良い高音だと感じました。
中音やボーカルは他の音に埋もれることなく前に出てくる印象を受けます。女性ボーカルの伸びも良く、特に目立った粗はありません。
低音はサブベース域までしっかりと締まりやキレがある良質な低音です。DSPとしてBassUpという低音強調処理が入っているためか、他の音域と比べて僅かに強いバランスに調整されています。ただ、ゆったりとした女性ボーカルのバラード曲に下支えとして入っているような低音は特に強調されていなかったため、BassUpは単に低音を強調するだけではなく音源の特徴を見ながら強調するかどうかを判断しているようです。
ゆったりとした女性ボーカルのバラード曲です。よくある低音強調型イヤホンでは下支えの低音がボーカルに被ってしまうことがありますが、Liberty Neoはあくまでも下支えのまま優しく強調されているため、曲の雰囲気を壊していません。
様々なオーケストラの音が混じっているため、解像度や分離感が悪いイヤホンでは詰まったような音になってしまいます。Liberty Neoは一つ一つの音をしっかり鳴らすことが出来ています。
EDMの強い音圧の中で高音と低音が入り混じっているような曲であっても破綻することはありません。
ただ、個々の音は良い音ではあるものの器用貧乏感が否めないといいますか、それぞれのジャンルに特化したようなイヤホンと比べると物足りなさを感じます。
幸いにもイヤーピースのサイズにはある程度の余裕があるため、一般的なTWS用ショートタイプイヤーピースならケースに収めることが出来ます。イヤーピースを高音を強化するタイプに変えることでバランスを調整することが出来ます。ノズルがやや長いため、イヤーピースのサイズはいつもより小さめを選ぶほうがいいでしょう。
使い勝手も良好
装着感は非常に良く、すっと耳に収まってくれます。付属しているイヤーフィンで落下対策も可能です。
ケースも使いやすく、イヤホンの出し入れも変に回転させる必要がないため落とすリスクは少なくなるように考えられています。ケースには電池残量をわかりやすく表示してくれるLEDインジケーターもあります。
地味に嬉しいのが充電端子にカバーが付いているところ。
充電端子の汚れや破損を防ぐことが出来ます。こういうところはAnkerらしくて良いところだと感じました。
接続が不安定で頻繁に途切れてしまう
1週間ほど使用したところ、右からしか音が出なくなり、その出ている音もプチプチというノイズが酷くなっていまいた。イヤホンを再起動すると解消されました。
自室でDAPを使用して聞いていたところ突然右耳の接続が切れました。電池残量はほぼ100%でした。
これ以外にも時折ぷつぷつと途切れることがあります。何ならこの記事を書いている間にも頻繁にプツプツと途切れます。DAPをキーボードを叩く腕の間に置いていも途切れます。安定性を求めるならLiberty Neo 2を買うべきかと思います。
イコライザーには非対応
Ankerアプリによるイコライザー設定などは非対応となっています。イコライザーを使いたい場合はイコライザー機能があるプレイヤーを使うか、Liberty Neo 2を使ったほうがいいでしょう。
Tama's SOUND LIBERTA
こちらの製品、めっちゃ探したんですが公式サイトからも抹消されていました……
聞く前から不穏な空気を感じます。
いかにも日本の商品らしいと言いますか、あまり洗練されてはいないなあと思うパッケージです。機能はわかりやすいのですが、ブランド感とかそういうのは皆無です。
中身はこのようになっています。TWSでイヤホン本体をケースに入れずに梱包しているのは珍しい気がします。
ちなみにこの白いパッケージ、かなりガッツリとイヤホン本体を掴んでいるためちょっと苦労しました。
説明書は一昔前の家電製品みたいなわかりづらいタイプで、操作説明を探したいだけなのに時間がかかりました。
良い点
- イヤホン側で音量操作が可能
- 刺さりが少ない優しい高音
悪い点
- 全体的に籠もっていて遠く感じる音質
- 圧迫感を感じる装着感
- 音場が狭く響きが弱い
- 伸びの足りないボーカル
4000円とは思えない音質
パッケージには10mmドライバー採用でクリアなサウンドと謳われていますが、これでクリアだと言えるんなら世のイヤホンは全てクリアだと言えるんじゃないかと思えるくらい、全体的にガッツリ曇ったサウンドが耳を襲います。
隣の部屋で鳴っている音楽を聞いているんじゃないかと思えるレベルで音が籠もります。音量が小さいのかと思って音量を上げると、籠もったまま音が大きくなりさらに不快に……
サブベース域まで鳴ってはいますが、とにかく全体が壁一枚隔てて聞いているような音質になっているため心地よく聞くとかそういうレベルじゃなく聞けたもんじゃありません。個々の音がどうとかいうより、全体的に謎のベールに包まれたような鳴り方をしています。
正直なところこの製品のことは忘れてAnkerだけでレビューにしようとも思ったほどです。
操作性はまだ良いが、ケースが使いづらい
イヤホン側で音量操作ができるところはAnkerよりも評価できます。
ケースはとても使いづらい構造をしています。イヤホンを2つの軸でそれぞれ90度回転させなければならず、必然的に落下する危険性が高くなっています。
接続は良好だが装着感は悪い
Ankerと違って接続が途切れることは全くありませんでした。 Air Podsとよく似た形をしているので装着感は良いかなと思いましたが、実際に着けてみると圧迫感が強く装着感は悪いです。
総評
Anker Soundcore Liberty Neo「Ankerらしい質実剛健なTWS」
Anker Soundcore Liberty Neoは他のAnker製品と同じく大事なところで手を抜かない質実剛健タイプです。
最新TWSと比べると安定性の低さやバッテリーの弱さが目立ちますが、2年前の製品ということを考えればかなり良くできているTWSだと言えます。オーディオという観点から見ても下手に脚色して誤魔化さず、アコースティックな音質にまとめているところも評価できます。
Ankerは充電器やモバイルバッテリーで「とりあえずAnkerを選んでおけば安心だよね」という地位を獲得していますが、オーディオでもその地位を獲得できる日も近いと思わせる製品でした。
アプリによるイコライザー切り替え非対応、安定性が低い、バッテリーが弱いなどの問題があるため、もしこの価格帯でAnkerのTWSを買うのであれば同じ価格で性能が向上したAnker Soundcore Liberty Neo 2をおすすめします。
Tama's SOUND LIBERTA「安かろう悪かろうの典型な製品」
Ankerに対してTama's SOUND LIBERTAは安かろう悪かろうの典型です。2000円の有線イヤホンにすら負ける音質は褒められたものではありません。
とりあえず欲しいという場合でも1000円プラスしてAnkerを買うべきです。