Abusan’s Journey

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TKZK Ouranos レビュー「1万円以下イヤホンの常識を変えてしまうほどの高音質」

おはこんばんちは。今回はTKZKのOuranosというイヤホンをレビューします。

TKZK OuranosはTKZKブランドとして2つ目の製品です。HiFIGOやAliexpressにて55ドル、日本AmazonではHiFiGOから7520円、LINSOULから7620円で販売されています。
TKZKは最初の製品であるTKZK WAVEは日本仕様のWAVE Jがeイヤホンでも取り扱われているなど登場から注目されているブランドです。TinHiFiよりも低価格帯を担うサブブランドという位置づけをされているようです。

外観・特徴

Ouranosは3Dプリントで一体成型されたシェルを採用しています。格安中華イヤホンといえばプラスチックでハウジングとフェイスプレートを分離した構造が一般的でしたが、シェル内の反響特性などでは一体型シェルのほうが有利でしょう。
また、一般的な充填タイプのシェルとは違って非常に軽量なため装着感も良好です。

フェイスプレートにはカーボンやゴールドの素材を使用していて純粋にカッコいいと思えます。1万円以下の低価格機でありながら所有欲を満たせるデザインだと思います。

この価格帯としては珍しくIEMの高級機のように耳に当たる部分に滑らかな曲面による出っ張りが設けられています。この出っ張りが耳介にぴったりとフィットすることで良好な装着感を生み出しています。

ケーブルは少し太めの高純度銀メッキ線を採用。オーソドックスな2芯タイプですが編み込みのビルドクオリティは高いと感じました。
格安中華イヤホンではリケーブルを前提として音質でも見た目でも劣るものが付属してくることが少なくありませんが、Ouranosのケーブルはそのままでも十分使える印象です。
ただ、イヤーピースについてはいつもの安い汎用品ですのでKBEAR07やWhizzer ET100などに交換することをおすすめします。

音質

Ouranosのサウンドは高音から低音まで過不足なくフラットに鳴らすバランスの良い特性でありながら、個々の音には確かな厚みと主張があり、リスニング用イヤホンとしてしっかりと聞かせます。
適度な湿り気と温かみがあり、分離良くはっきりと鳴らす傾向がありながらも聞き疲れしないようなサウンドに仕上げられています。
最大の特徴は聞かせる音でありながら非常に豊かな空間表現を持っていることです。普通の曲を普通に聞いていると至って標準的な音場感なのですが、広いホールで空気録音した音源などを聞くとイヤホンとは思えないモニターヘッドホンに手が届くかのような広い音場を感じさせます。音場が広いと言っても音が遠すぎるということはなく、確かな定位感を保ちながら近い音と遠い音のレンジが自然に広くなったような印象で、個々の音の距離感は正確に再現されています。

Caravan by John Wasson
songwhip.com 映画「セッション」のラストシーンで演奏された楽曲。
序盤や後半のドラムが良好な定位感を保っています。

Organ Symphony No. 6 in G Minor, Op. 42, No. 2: I. Allegro by Charles-Marie Widor, Jan Kraybill, Pascal Pilloud songwhip.com パイプオルガンの演奏を録音したもの。是非ハイレゾ音源版で聞いて欲しいアルバムです。
一つ一つの音にある定位の再現のみならず、広い空間に響き渡る分厚い音もしっかりと鳴らしてくれます。

ただ、音場の感じ方は音源側の作り込みに左右される部分でもあり、分離感が悪い音源ではOuranosが持つ豊かな空間表現を十分に活かしきれないこともあります。

カオスが極まる by UNISON SQUARE GARDEN songwhip.com 1本のマイクで録音したものをそのまま配信しているのかと疑いたくなるほどに空間表現が酷い楽曲です。
個々の音が1箇所で鳴っているような定位をしていてボーカルに大きく被ってしまっています。
Ouranosで聞くと先に紹介したCaravanやOrgan Symphony No. 6で感じた豊かな空間表現が消え去ったような印象を受けました。音源が持つ音場感や定位を変えていないということでもあり、Ouranosがモニターと呼んでもいいレベルでケレン味のない音を鳴らしている証拠でもあります。

Ouranosの音質は同価格帯のイヤホンだけでなく、上位機種でさえ超えてしまうようなサウンドを実現していますが、特筆すべきなのはシングルダイナミック構成でこの音を実現しているというところでしょう。
2,3年前はドライバーの数 = 音質を左右するスペックだと言うようにハイブリッド機が非常に多かった格安中華イヤホンですが、最近ではチューニング技術の向上とともに1DD構成を採用するイヤホンも徐々に増えています。Ouranosの登場によって1万円以下の価格帯で標準とされてきた音質が変わってしまったような衝撃でした。

高音

高音は硬質で輪郭がはっきりとしており、非常に見通しの良いスッキリとした音を鳴らします。 格安中華イヤホン、特に1DD機の高音は過度に金属的な質感が乗ってしまっていたり、尖りすぎて刺激が強すぎるものが多かったのですが、Ouranosの高音はあくまでも自然な鳴らし方を基本としていて刺激と聞きやすさをうまく両立しています。

ヴァイオリン・ミューズ(バッハ:シャコンヌより) by Ikuko Kawai songwhip.com この価格帯では高音のバランスが不自然なものも多く、特にヴァイオリンの倍音成分で不自然さが顕著に現れることが多くありました。
Ouranosは倍音が重要となる音源でも十分に楽しむことができます。

Marble Machine by Wintergatan
songwhip.com 鉄球で演奏される鉄琴の音をはっきりとした輪郭を持って鳴らします。
中盤では鉄琴の音を揺らすギミックが使用されますが、音の余韻も過不足なく正確に再現しています。

中音

自然で癖のない音を確かな厚みを持って鳴らします。分析的に細かく聞き込んでも特に目立った粗は感じません。この価格帯の1DD機としては破格の音質だと思います。
音の距離感については先に書いたように近い音は近く、遠い音は遠く、正確な定位と広い音場を両立しています。

人魚 by Hikaru Utada songwhip.com BGMに徹しながら楽曲の構成には欠かせない中音。ボーカル曲では歌声にも影響を及ぼします。
Ouranosの中音はボーカルとの確かな分離感と癖のない音でBGMとしての役割を果たしながら、個々の音の輪郭ははっきりとわかる眠たくならない音に仕上がっています。

ボーカル

ボーカルも中音と同様に癖のない印象で、他の音域との分離感も非常に良好です。細かいところまでしっかりと再現されていて録音の良い音源では唇の動きまで見えてきそうです。
定位は正確で中央にあり、遠すぎることも近すぎることもなく音源に記録された通りの音を鳴らします。
中音から高音にかけての周波数帯域が落ち込んでいないため女性ボーカルが良く伸びます。もちろん歯擦音が気になるところはしっかりと抑えられています。
中音から低音にかけてもバランス良く鳴らすため男性ボーカルも楽しむことができるでしょう。

Monochrome by BABYMETAL songwhip.com SU-METALのどこまでも伸びるような透き通った歌声も、Ouranosはしっかりと鳴らしてくれます。
メタルなので楽器の音もかなりの数が激しく鳴っていますがボーカルとの分離も上々です。

Time of Our Lives by Pitbull, Ne-Yo songwhip.com PitbullとNe-Yoのコンビが映える楽曲。艶のあるNe-Yoと低音の聞いたPitbullの歌声がOuranosにぴったりです。

低音

ダイナミックドライバーらしい十分な量感を持った低音を鳴らし、キレと締まりのあるタイトさと深い響きを持った空気感を両立したオールマイティに優れた低音です。
ミッドベースからサブベースにかけてのバランスも良好で、質の良い低音を過不足なく鳴らします。
ちゃんと聞こえるのに他の音域との分離感や定位も良好というバランスの良さが光りますね。

Enchantment by Nora En Pure songwhip.com 10~20Hz付近のサブベースへ重たく沈み込む低音が曲の始まりから入っています。
非常に低い周波数、深く沈み込むように響くという点で鳴らし切ることが非常に難しい音で、ただサブベースが出ているだけでは重さが足りていなかったり、キックだけでほぼ無音なんてことが起きます。
Ouranosで聞いてみると今まで聞いた中で最も重たい低音が響きました。キックから最後までバランス良く、真の意味で重低音と言えるようなサウンドです。

青春コンプレックス by 結束バンド, kessoku band songwhip.com 一定のリズムで入っているバスドラムや、サビあたりから入ってくるベースラインが非常に追いやすい印象があります。
この曲、音源の録音はそんなに良くはないのですが、全体的な分離感や定位は悪くないどころか比較的優れている部分も感じるのでノリ良く聞くことができます。

総評「低価格イヤホンの常識を変える存在」

良い点

  • バランスの良い音でありながらしっかりとリスニング寄りのサウンド
  • 空気録音された音源を鳴らし切れるほどの空間表現力
  • 伸びの良いスッキリとした高音
  • 癖のない自然な中音
  • 輪郭がはっきりとしたボーカル

良くない点

  • 特になし(強いて言えばイヤピかな)

TKZK Ouranosは非常に優れた音質を1万円以下という低価格で楽しむことを許してくれるイヤホンです。
これまで1万円以下のイヤホンと言えば特定のジャンルや音に特化したタイプが主流でした。価格的にどうしても粗が見える部分があり、特化した音にしてしまったほうが粗を気にせず楽しみやすいからです。
それでも低価格で良い音を求めたくなるのが人間というものです。今までもバランス重視な高音質を目指したイヤホンは少数ですがありましたが、Ouranosは1万円以下でバランスの良い高音質を実現したイヤホンとしてはトップクラスの音質と言っても過言ではないと思います。
また、今までの低価格イヤホンというものはリケーブルを前提としていた製品が非常に多かったのですが、Ouranosはその必要性を全く感じさせない点も見逃せません。
同価格帯でOuranosと肩を並べられるイヤホンとなるとWhizzerのKylin HE01くらいしか思いつきません。それほどにOuranosは優れたイヤホンです。
戦国時代と言えるほどに競争の激しい低価格イヤホン市場ですが、Ouranosの登場はさらに激しい戦いを見せてくれそうです。