おはこんばんちは、あぶさんです。
今回のイヤホンは前回レビューさせていただいたイヤホンの後継機(上位機?)の TKZK TK02 です。
特徴・スペック
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パッケージ
TK02のパッケージはTK01と同様に既視感があります。KBEARやTRNなどの低価格イヤホンブランドと同じ質素感満載のパッケージです。
TKZKはWaveやOuranosでオリジナルのパッケージを使用しており、1万円以下の製品でも手に取った際の満足感が高いことが魅力の一つでした。TK01から明らかにコストカットされた印象があります。
本体
TK01からフェイスプレートのデザインが大きく変更されました。金属製のように見えるフェイスプレートは塗装された樹脂製です。TK01と比べてちょっと良さそうに見えます。
シェル本体の構造はTK01からほとんど変わっていません。2pin端子とドライバーの周囲以外に突起物がない構造や、プラスチック製のノズル、糊付けされた簡易的なフィルターなど、様々な点で共通点を見つけられます。
カラーバリエーションはブラック、ホワイト、パープルの3色です。TK01にあったグリーンは無くなりました。
スペック
TK02には「テスラデュアル磁気回路」と銘打ったダイナミックドライバーを1基だけ使用しています。音の統一感に優れる1DDイヤホンです。
振動板には「ナノスケール複合振動板」を使用したと宣伝されていますが、要約すれば「振動板の材質にこだわってるよ」「ドライバーに強い磁石を使っているよ」という意味ですので特別何かすごいドライバーというわけではありません。
ナノスケール複合振動板はTK01でも同じ言葉が使用されています。そもそも商品説明の画像ですが、シェルの色とフェイスプレート以外の部分で完全に同一のCGが使用されています。製品を外から見た限りではドライバーの厚みが少し変わったように見受けられますが、本当に違いがあるのならもっとわかりやすい画像を使うべきだと思います。
インピーダンスは22Ωと比較的低めで感度も106dBと高めです。スマホや1万円以下のDACドングルでも音量が不足するということはないでしょう。
ちなみに、インピーダンス、感度、周波数範囲などのカタログスペックはTK01と全く同じ値です。
付属品
ケーブルは2芯構造のOFC線です。メーカーはTK01からの改良点としてケーブルを挙げており、僅かではありますが細部に違いが見られます。
2pinコネクタも改良したと宣伝されていますが、こちらはTK01と同様のqdcタイプ2pinコネクタです。
イヤーピースはグレーの汎用品が3サイズ付属しますが柔軟性のない粗悪品です。価格を上げてもう少しまともなものを付属させるという考えは無いのでしょうか。
このイヤーピースはTK01の付属品よりも軸が短くなっています。本体のノズルは同じ長さですからTK02はTK01よりも耳に深く入ることになります。
その他の付属品は取扱説明書のみです。説明書にはサンキューカードや保証書、持ち運び用のポーチも含まれていると記載されていますが入っていませんでした。箱の底に日付入りの合格印が押されているため一応の品質保証はされているようです。
価格
TK01はAmazonにてYinyoo-JPより定価2,799円(税込)で販売されています。発売時には200円オフクーポンが配られていましたが、後に500円オフクーポンに変更されています。
2024年11月29日時点ではブラックフライデーセールが行われていますのでクーポンに頼らずとも20%オフの価格で購入可能です。なぜかホワイトだけ20%オフクーポンですが、割引率はセールと同じです。
購入時の注意点
Amazonではセラーの登録に問題があるようで、KZやKBEARなど、他のブランドや製品のバリエーションとして登録されてしまっています。それだけならまだしも、違う製品をTK02であるかのように記載されており、間違って違うイヤホンを購入してしまう可能性があります。
カラーバリエーションごとのURLを以下に記載します(アフィリエイトリンクではありません)ので、間違って他の製品を購入してしまわないよう注意してください。
パープル, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 2,239円 (定価2,799円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0DK172RCT
ブラック, Yinyoo-JP(Amazon):セール価格 2,239円 (定価2,799円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0DK15ZFXP
ホワイト, Yinyoo-JP(Amazon):クーポン価格 2,239円(定価2,799円) https://www.amazon.co.jp/dp/B0DK15DY8H?th=1
商品説明に関する疑義
TK02の商品説明には不可解な点があります。
4つのアップグレードとは?
TK02の商品画像では「Hot-selling products further optimized 4 New Updates Bring New Fun」と書かれています。「売れ筋商品をさらに最適化、4つの新アップデートで新たな楽しみがもたらされる」という意味です。
この文言では「TK01」から改良されたと捉えることができますが、実はTK01の商品画像でもほぼ同じ言葉が使用されています。
HotがBestに変更されただけです。つまりTK01も何かの改良型だったということなのですが、TK01の前にはOuranosとWaveしかありません。そしてその2つの製品はTK01に対して3倍以上の価格です。売れ筋商品とは何を指しているのでしょうか。
画像内にはアップデートされた箇所について、フェイスプレート、ケーブル、2pin端子、ドライバーの4点が説明がされています。
フェイスプレートは見た目からしてアップデートされたことは間違いありません。
ケーブルは僅かな違い(被膜、3.5mm端子)がありますが、仕様変更程度のものであり、アップデートや改良と言えるような変更ではありません。両者のケーブルをTK01に装着して何度も音質を比較したところ、音質差は誤差程度でした。
2pin端子は全く同じqdcタイプの2pin端子が使用されています。確かにOuranosの中華2pin端子からは耐久性などが向上していますが、TK01からTK02へのアップデートと呼ぶことはできません。
ドライバーは実際の見た目でも明確に違いがあるように見えますが、後述する理由から変更点が分かりづらくなっています。
同じ画像が使用されている
ドライバーとケーブルの説明にはCGを用いて詳細を解説した画像が用意されています。
この画像がTK01とTK02で全く同じもの、もしくはフォントサイズや一部のレイアウト、一部の文言を変更しただけのものが両者で使用されています。
1,2枚目はCGの一部を差し替えただけですし、3,4枚目に至ってはフォントサイズくらいしか違いがありません。
実際の音質に違いがあることから細かな部分で違いがあることは間違いないようですが、商品の説明という大事な部分で手抜きをしてしまったことで変更点が伝わりづらくなってしまい、TKZKというブランドが持っていた信頼すら落としてしまっています。
音質の評価条件について
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エージング(慣らし)について
100時間以上のエージングを終わらせた状態の個体を使用しています。
エージングには手持ちのFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストを使用しています。
付属品について
ケーブル、イヤーピースはどちらも付属品を使用します。イヤーピースの交換やケーブルの取り換え(リケーブル)を行った場合は、その旨を明示します。
評価で使用する言葉について
原則として、音質評価に使用する言葉は ITU-R から発行された Report ITU-R BS.2399-0 に準じた単語・表現を使用するようにしています。
ITU-R BS.2399-0 については以下のPDFにて詳細を閲覧可能です。コミックマーケット105(C105)では ITU-R BS.2399-0 を解説した同人誌を頒布する予定です。
R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
https://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/rep/R-REP-BS.2399-2017-PDF-E.pdf
評価に使用する音源について
音質評価に使用する音源は、手持ちのCDから取り込んだFLAC音源とSpotifyで作成した音質評価用プレイリストです。Spotifyのプレイリストは公開していますので店頭での試聴の際などでも使用できます。
音質評価用プレイリスト内の楽曲については以下の記事で解説しています。
abusan3225.jp
評価に使用する再生機器について
以下の機器を使用して TKZK TK02 のレビューを行っています。
機種名 ※1 | ゲイン | 音量 ※2 | フィルター | 備考 |
---|---|---|---|---|
HiBy R6 Pro Ⅱ(R6P2) | Low | 28 | Low Dispersion Delay Filter | ABアンプ |
HiBY FC6(FC6) ※3 | --- | 8 | Darwin Ultra | NOSモード HDRオフ |
SONY NW-ZX707 (ZX707) | Low | 30 | --- | HiBy Musicアプリを使用 ソースダイレクトON |
※1. 括弧内は記事中で使用する略称です。
※2. 音量の調整にはSpotifyで配信されている WONDER POP by Moe Shop を使用しています。音量の均一化を有効化し、音量レベルを低音量にした状態で、私が普段の音楽鑑賞で使用する音量設定に合わせた場合の値です。
※3. FC6はmotorola eddge 50 ProにDDHiFi TC09Sを用いて接続し、スマホ側の音量設定を100%に設定しています。
客観的な評価をするように努めていますが、あくまでも私個人の経験を共有するものです。聴覚には個人差や好みによる違いがありますので、購入の際には可能な限り実際に試聴されることをおすすめします。
レビュー
良い点
- 自然で粗の少ない音質
- クリアで聴きやすい高音
良くない点
- M字型の独特な周波数特性
- 音色の癖
- 抑圧的な中音とボーカル
- サブベースの欠如
TK01がU-Shapeの面白さと質の良さの両立を目指したイヤホンだとすれば、TK02は面白さを捨てて質の良さを求めたイヤホンだと言えます。TK01は中音と高音で音の掠れがありましたが、TK02では音の質におけるTK01の問題点は概ね改善されており、音の質という要素において価格に見合わない部分は特にありません。
かまぼこでもフラットでもU-Shapeでもない周波数特性
TK02はTK01の問題点については解消されていますが、独特な周波数特性によって別の問題が発生しています。
TK02はミッドベースと中高音にピークがあり、かまぼこでもフラットでもU-ShapeでもないM字型の特性を持っています。この特性は基音と倍音のバランスを悪化させてしまっており、音色の不自然さに繋がってます。
クリアで聴きやすい高音
高音はやや控えめで遠くで鳴っている印象を受けます。8kHz付近にピークが来ているため擦過音を感じますが刺さりなどの不快感はありません。
癖の強い中音とボーカル
ハーマンターゲットカーブのように700Hz~1kHzが凹んでいますが2kHzに妙なピークがあります。TK02で最も強く出ている周波数が2~3kHzであり、倍音の一部が不自然に強調されたような印象を受けます。
中音は凹みとピークに加えて明瞭度も低いため抑圧的な音に感じられ、クリアで聴きやすい高音との差が顕著に現れてしまっています。音自体は良いのですが、癖の強さが楽曲全体の統一感に影響を及ぼしています。
バランスの悪い低音
かなり強めな低音を鳴らしながらもミッドベースとサブベースのバランスが概ね取れていたTK01に対し、TK02はミッドベースが強くサブベースが弱いため低音全体に軽い印象を受けます。
サブベースを弱くすることによって低音の過剰な残響が改善されましたが、音楽を破綻させる結果となってしまいました。周波数特性ではなく低音の質や残響のチューニングを重視すべきです。
イヤーピース交換は必須ではない
TK01では最低でもイヤーピースの交換が必須でしたが、TK02では音質を改善するためのイヤーピースは必須ではないかもしれません。もちろん交換することによって音質が改善する余地はありますし、装着感は良いとは言えないため耳の形によっては交換の必要性が残ります。
総評「ただ単に面白くない低価格イヤホン」
TK02はTK01から音の質を改善することには成功しましたが、総合的な音質という意味では褒められたものではないという結論に達しました。
TK01はイヤーピースの交換によって問題点を容易に改善することができましたが、TK02の問題点は周波数特性にあるためイヤーピースの交換だけで改善することは困難です。TK01(1,999円) + final Eタイプ(980円) = 2,979円に対し、TK02は本体だけで2,799円です。見た目などの音質以外での改善点を含めたとしても、リケーブルまで視野にいれる必要があるTK02は価格差を正当化することは難しいと感じます。
TKZKブランドに対する疑念
TKZKはTinHiFiのサブブランド(経営者が兄弟)として生まれ、そのブランド名は「Technology・Knowledge experiences・Zestful・Kindly」の頭文字です。TinHiFiよりも低価格帯でありながらバランスと質の良いイヤホンを世に送り出し、低価格イヤホンのレベルアップに向上したブランドでした。
久々に出た新作であるTK01は、いろいろと察する部分はありましたが、面白さと質の良さを両立したサウンドで購入する価値のある製品でした。TK01の時点で迷走が始まっていましたが、TK02は本格的に迷走していることを裏付けるような気がしてなりません。このままではTKZKがTRNなどと同様に怪しい低価格イヤホンブランドとなってしまうことは避けられないでしょう。