今回はROG Phone 5レビュー以来のスマホレビューです。
Motorola初のお財布ケータイと防水対応ミドルレンジとして話題になったmoto g52j 5G、Snapdragon 8 Gen 1を採用しながら8万円台という低価格が話題となったedge 30 PROを一気にレビューします。
Motorola g52j 5GはSnapdragon 695を採用しメモリ6GB/ストレージ128GBのミドルレンジスマホです。
公式ストアでは39,800円ですが、IIJmioのセールではMNP限定14,800円で購入可能です。
Motorola edge 30 PROはSnapdragonのハイエンドSoCである8 Gen 1を採用したハイエンドスマホです。メモリ8GB/ストレージ128GBとメモリ12GB/ストレージ256GBの2種類となり、公式ストア価格で前者は86,801円、後者は89,800円というハイエンドとは思えない低価格で登場しました。現在は12GB/256GB版の生産が終了してしまったため8GB/128GBバージョンのみ購入可能です。
こちらもg52jと同様にセールで安く購入可能です。IIJmioではMNP限定51,800円で購入可能です。
外観・付属品
moto g52j 5G
g52jは付属のTPU製ケースが装着された状態で箱に入っています。付属のケースは指が触れる側面をマットな質感で仕上げているため手触りが良く好印象です。
保護フィルムは貼り付けられておらず、輸送時の保護用フィルムは透明ではないため何らかの保護フィルムを用意する必要があります。
ディスプレイは有機ELではなくIPS液晶を採用しています。
6.8インチ2460×1080ピクセルと、ミドルレンジとしてはかなり大きいディスプレイを持っています。全体のサイズやディスプレイはゲーミングスマホのASUS ROG Phone 5とほぼ同じ大きさに匹敵します。
ディスプレイの発色は有機ELにも見劣りせずかなり綺麗だと思いましたが、視野角がやや狭いため正面から見ると画面端が暗く見えてしまいます。
リフレッシュレートは60Hz、120Hz、自動切り替えから選択可能です。120Hzは非常に滑らかで一度慣れると60Hzには戻りたくありません。ChromeやTwitterアプリで試した限りだと誤作動は一切ありませんでした。
背面にはMotorolaのロゴとマーク、そしてカメラ。
カメラは標準5000万画素、広角800万画素、マクロ200万画素の構成。上から標準、広角、マクロの順番です。標準カメラの5000万画素はクアッドピクセルで4つの画素を1つとして扱うため、保存される写真は12.6メガピクセルです。保存される写真の解像度は選択できません。
インカメラはパンチホールの1300万画素でミドルレンジとして一般的な構成だと思います。
付属品は最低限の説明書とSIM外しのみです。Xperia 10 III Lite並に簡素化されています。
edge 30 PRO
edge 30 PROもケースが付属していますが装着は自分で行う必要があります。保護フィルムではなく半透明のシートで保護されているため、こちらも何らかの保護フィルムを用意する必要があります。
パッと見ただけではg52jと見分けるのは非常に困難だと感じるほどに似ていますが、実はedge 30 PROのほうが少し小さめのサイズなので慣れてくるとなんとなくわかるようになります。
6.7インチ2400×1080ピクセルの有機ELディスプレイを採用。g52jよりも一回り小さくなりますが、ハイエンドとしては一般的なサイズ感だと思います。
g52jのIPS液晶と比べると視野角が広く明るい場所でも見やすい印象です。
リフレッシュレートは60Hz、144Hz、自動切り替えから選択可能です。144Hzは非常に滑らかで一度慣れると60Hzには戻りたくありませんが、120Hzとの差は微々たるものです。ChromeやTwitterアプリで試した限りだと誤作動は一切ありませんでした。
背面にはg52jと同じくMotorolaのロゴとマーク、そしてカメラです。
g52jと大きく違うのは綺麗なグラデーションが入っていることと、カメラのところに書かれている文言が「50MP | QUAD PIXEL」ではなく「50MP | 2.0μm OIS」という表記がされていることでしょう。この文言から手ぶれ補正機能があることがわかります。2.0μmというのは4つの画素を1つとして扱うクアッドピクセル技術のことです(4つの小さな1.0μmピクセルを自動的に2.0μmの大きなピクセルに融合する)
カメラ構成は標準/広角/マクロ全てで5000万画素、インカメラは6000万画素が採用されハイエンドらしいスペックを感じます。
edge 30 PROはハイエンドスマホらしく付属品が充実しています。
最大68.2W(11.0V/6.2A)出力が可能な充電器には側面にMotorolaのマークと68という数字が入っています。5.0A/3.0A=15W、9.0V/3.0A=27W、15.0V/3.0A=45W、20.0A/3.4A=68W、11.0V/6.2A=68.2Wと様々な出力に対応しているため他のスマホへの使い回しも比較的しやすいと思います。
edge 30 PROはイヤホンジャックがないためType-C端子を持つイヤホンが付属しますが、お世辞にも良い音とは言えないイヤホンです。とりあえずでイヤホンが必要であればMoondrop Quarks、NICEHCK DB1、KBEAR KS1、TRN MT1あたりがいいでしょう。
イヤホンで音楽を聴く場合はType-Cと3.5mmの変換アダプターなどを使用することになりますが、アナログ音声出力には対応していないためDACチップ入りのアダプターのみ使用可能です。音に拘りたいならESSやAKなどのDACチップを採用したDACドングル(スティックDAC、ポータブルアンプ)を選びましょう。
価格を抑えたいならREIYIN DA-Plusが良いでしょう。
比較
先に書いたようにg52jはイヤホンジャックがありますがedge 30 PROにはありません。
微々たる差ですがedge 30 PROのほうが僅かに薄くなっています。
ディスプレイはどちらも綺麗な画質ですが、並べるとg52jの視野角の狭さを感じます。
正面から見た場合では僅かな色味の違い以外で差は感じませんでした。
プリインストールアプリは最低限のもののみという印象です。edge 30 PROのほうが少し多いですね。
性能
g52jはSnapdragon 695、edge 30 PROはSnapdragon 8 Gen 1を採用しています。
695でも普段使いで不満が出ることはほとんどありませんが、カメラの起動などで差を感じることがあります。同時に同じ操作をした時、edege 30 PROのほうが確実に早く動作します。
Geekbench 5
Geekbench 5ではシングルマルチ両方で大きな差があります。g52jのスコアはSnapdragon 808を採用していたNexus 5X(当時のミッドハイ)の約1割増、Huawei P20(当時のミドルレンジ)の約3分の1にあたります。
しかし、実際に使ってみるとベンチマークスコアで大きな差があるP20と比べても様々な部分の動作がキビキビしている印象でした。Snapdragon 690を採用したXperia 10 III Liteと比べても明らかに動作が軽快になったと感じます。
edge 30 PROのスコアは1世代前のゲーミングスマホASUS ROG Phone 5とほぼ同じスコアです。
3DMark
3DMarkはゲームなどで重要な3Dグラフィックの性能を測定します。ベンチマークを20回ループさせるストレステストを使用しました。
g52jのスコアは目も当てられませんが、性能が低いため発熱が少なく安定した性能を出せています。
edge 30 PROはハイエンドの性能をしっかりと発揮しています。1回目ではROG Phone 5のスコアを大きく引き離しています。しかし、温度上昇を抑えるための制御が入った2回目から大きくスコアが低下しています。高負荷をかけた場合は継続して性能を出し続けることは難しいようです。
g52jは性能自体は低いものの発熱が少なく安定して動作し、バッテリーの消費も抑えられています。
edge 30 PROは温度の上昇幅ではg52jと同等ですが、SoCの発熱に対して冷却性能の不足が顕著に出ています。
PCMark
PCMarkは実際にアプリの使用する際の動作をベンチマークスコアとして算出するベンチマークアプリです。
Work 3.0 Performance
Storage 3.0
どちらもedge 30 PROのスコアが高くなっていますが、g52jもXperia 1 IIやZenfone 6に迫るスコアを出しています。
ゲームは苦手でも普段使いの性能はしっかり出せるようです。
ミリシタ
ミリシタはベンチマークではなくソーシャルゲームです。温度制御による性能低下が出やすいリズムゲームです。
3D高画質モードで7曲プレイし、プレイが快適かどうかを検証します。
moto g52j 5G
タッチ操作に対する反応にやや遅れを感じました。特にタッチ音の僅かな遅れが気になります。
3曲目あたりから処理落ちが発生し反応がさらに鈍くなりましたが、最後までタッチ操作自体が抜けることはありませんでした。
g52jで3Dのゲームを快適にプレイするのは難しいと感じます。3Dのゲームを快適にプレイしたいならROG Phoneなどのゲーミングスマホを買いましょう。
edge 30 PRO
タッチ操作に対する反応は概ね良くハイエンドらしさを感じますが、ゲーミングスマホのタッチした瞬間に反応が返ってくるレスポンスとは程遠い印象です。
プレイ中に処理落ちがありますが概ね許容範囲内です。1,2曲程度なら問題ありませんが、3曲目あたりからタッチ操作に対する反応が安定しなくなります。
3Dのゲームでもある程度はプレイできますが、やはり快適にプレイするならゲーミングスマホを買ったほうが幸せになれます。
ROG Phone 5
ハイエンドも案外いけるじゃんという高評価を一瞬でなぎ倒してくるレベルでタッチ操作に対する反応が非常に良いと感じます。
長時間プレイでも処理落ちしない抜群の安定感があり、やっぱり重たい3Dのゲームをするならゲーミングスマホを選びたいと思わせます。
使用感
g52jとedge 30 PRO、どちらもよく使うアプリ(Twitter、Chrome、Google Mapなど)の動作で特に不満点はありません。指紋認証の反応も素早く、そして正確です。ゲームでは不満があったタッチ操作に対する反応も特に気になりません。
そうなるとedge 30 PRO(というよりもハイエンドスマホ全般)を買う理由が迷子になってしまいますが、g52jとedge 30 PROを両方使った印象としてはedge 30 PROを選ぶ理由は十分にあると思いました。
確かにedge 30 PROはベンチマークで良好なスコアを出せていても実際に重たいことをやらせるとゲーミングスマホには勝てませんでしたし、普段使いではg52jでも十分満足できるでしょう。しかし、edge 30 PROは普段使いの細かいところを隅々まで快適にしてくれます。
g52jでもタッチの反応は良いと感じますが、edge 30 PROは指に吸い付くように反応します。
g52jはカメラの起動に3秒ほどかかりますが、edge 30 PROは1.5秒ほどで起動します。
全ての動作でedge 30 PROはg52jよりも素早く動くことができます。edge 30 PROに慣れるとg52jの動作は遅く感じます。細かいところなのですが、その細かい僅かな差が積み上がると大きな差として感じます。g52jが悪いというわけではありませんがミドルレンジとハイエンドの差はしっかりと出ています。
カメラ
特に差を感じるのはカメラでしょう。標準カメラは同じ5000万画素ですがedge 30 PROはより大きなレンズを採用しています。
edge 30 PROは標準/広角/マクロの全てで5000万画素で撮影でき、インカメラも6000万画素なので高画質での撮影ができます。
全て左:moto g52j 5G、右:edge 30 PRO、全て標準カメラを使用しています。
g52jの広角とマクロは最低限と言ったところで、特にマクロは画質が低すぎると感じました。細かいディティールはあまり残っていません。レンズ径が小さいためシャッタースピードは遅くISO感度も上がりがちです。
edge 30 PROは標準/広角/マクロの全てで良好な画質を得られます。レンズ径はg52jよりも大きいためシャッタースピードは速くISO感度も低めです。
g52j
標準レンズ
SS1/60、F1.8、ISO369
g52jは全体的にのっぺりとした画質になります。ISO感度が高いためノイズリダクションが強めにかかっているようです。
レンズの解像度も低く、特に四隅に近づくほどボヤケています。
広角レンズ
SS1/60、F2.2、ISO119
g52jの広角レンズはお世辞にも良い画質とはいえません。
edge 30 PROと比べて画素数の少なさやレンズの性能の低さを感じる画質です。
全体的にどこにピントが合っているのかよくわからないほどにボケています。
マクロレンズ
SS1/120、F2.4、ISO249
g52jのマクロは広角レンズと比べるとまだ良い性能を持っていますが、撮影できる解像度はフルHD以下です。
ピントは合っているように見えますが、全体的にシャープさが足りない印象です。
広角レンズと同様に画素数の少なさやレンズの解像度不足を感じます。
edge 30 PRO
標準レンズ
SS1/120、F1.8、ISO152
edge 30 PROはg52jと比べて細かいディティールをしっかりと残します。27インチのフルHDモニターで見ても十分に良いと思える画質です。
大きな経口のレンズによりシャッタースピードとISO感度が低く抑えられています。
g52jよりも良い性能のレンズが使用されており、四隅でもシャープな画質が得られます。
広角レンズ
SS1/60、F2.2、ISO309
edge 30 PROの広角レンズは標準レンズと比べて劣る画質ですが5000万画素のセンサーが良い仕事をしています。
なぜかISO感度が標準レンズと比べて約2倍に上がっています。そのためg52jの標準レンズのようにややボヤケた画質となってしまっていますが、十分実用に耐える画質でしょう。
マクロレンズ
SS1/60、F2.2、ISO406
標準レンズや広角レンズと比べると劣りますが、スマホの画面で見るなら十分な画質です。
ピントの合っている位置がわかる程度にはシャープに感じます。
少しでもカメラで良い写真を残したいならedge 30 PROを選ぶべきでしょう。特に標準レンズの画質は非常に良いと感じました。広角レンズやマクロレンズは少し劣りますが、5000万画素のクアッドピクセルを全てのレンズで使えるのは大きなアドバンテージです。
g52jのカメラは最低限というレベルです。画質の補正が無かったとしてもedge 30 PROのほうが良いと感じます。
ソフトウェア
どちらも標準のAndroidが採用されています。g52jはAndroid 11、edge 30 PROはAndroid 12です。
ソフトウェアの機能面では特に差異はありません。Androidのバージョン違いによる差はありますが、Motorolaによるカスタマイズが入っている部分はほぼ同じ機能を使用できます。
ゲーム中に使用できるゲーム専用アシスタントアプリは少しだけ差がありますが、g52jでアシスタントアプリが必要になるくらいゲームをすることはないと思います。
共通の特殊機能
- 手首を捻ってカメラ起動
- 電源ボタンダブルタップでランチャー呼び出し
- 充電制御
- バッテリー消費制御
- 3点タップでスクリーンショット撮影
- 画面OFF時にタップすることで時刻や通知を確認
- 画面OFF時に電源ボタンタップでロック解除
- リフレッシュレート切り替え
- クイック起動
- RAMブースト
などなど
edge 30 PROのみの機能
- 他のデバイスを充電
- Ready For
などなど
バッテリー
g52jは5000mAh、edge 30 PROは4800mAhです。
edge 30 PROはSoCの消費電力自体が大きいため少しバッテリー消費が早いと感じます。
SoCをそれほど回さない状態だとg52jとあまり変わらない印象ですが、ワイヤレス充電しながらGoogle Mapのナビを使用すると充電が追いつきませんでした。
音質(スピーカー、イヤホンジャック)
g52jはモノラル、edge 30 PROはステレオのスピーカーを持っています。
g52jの音をステレオにしたらedege 30 PROになるといった印象で、スピーカーの部品が同じものなんじゃないかと思うくらい同じ音がします。
どちらもDolby Atmosが採用されているため特に音質が悪いということはありません。YouTubeの動画を見るくらいなら十分かと思います。
細かい注意点
moto g52j 5G
システムナビゲーションにジェスチャーを選択した状態でYouTubeアプリで全画面再生を行うと全画面から戻すことができなくなる
横画面表示の際に画面右側(縦画面では下側)のタッチをシステムナビゲーションがブロックしてしまうために発生します。
過去に違うスマホでも同様の現象があったためAndroid 11の不具合(仕様?)だと思われます。
総評
moto g52j 5G「ミドルロー並の価格で購入できる侮れないミドルレンジ」
良い点
- 120Hz駆動の滑らかさと鮮やかさが魅力なディスプレイ
- 素早く正確な指紋認証
- Googleアシスタントボタンは誤操作しづらい位置
- Motorolaならではの機能はハイエンドとほぼ同等
- セールなら2万円以下
悪い点
- Android 11
- 液晶は視野角が狭い
- スピーカーの音質は最低限
moto g52j 5Gは4万円以下という価格ながら、ミドルレンジとしてしっかりとまとまっていると感じました。edge 30 PROと比べてソフトウェアの機能面で大きく見劣りする部分も特にありません。
120Hzの滑らかなディスプレイ、普段使いで特にストレス無く使えるレスポンス、十分使える標準カメラ、edge 30 PROと同様の便利な機能など、ミドルレンジスマホとして買って損はしないと思いました。
今回は迷いに迷った挙げ句に両方買うという選択をしましたが、g52jのみを買っていたとしても十分満足できたと思います。
コストを抑えたいけど普段使いも快適にしたいという場合に良い選択肢になるでしょう。
edge 30 PRO「ミッドハイ並みの価格で購入できるハイエンド」
良い点
- 144Hz駆動で滑らかな動作
- 見やすい有機ELディスプレイ
- ハイエンドならではの素早いレスポンス
- 素早く正確な指紋認証
- Motorolaならではの便利な機能
- 一応ステレオスピーカー
悪い点
- バッテリー持ちは悪い
- 温度制御が厳しく、長時間は性能を出しづらい
- スピーカーの音質はそれほど良くない
- イヤホンジャック無し & Type-Cアナログ出力無し
edge 30 PROは8万円台という価格で購入できるハイエンドです。ゲームをするにはちょっと物足りませんが、ハイエンドならではの性能は普段使いでもしっかりと感じられます。普段使いで気になる様々な部分で隙がないようにうまく仕上げられたハイエンドスマホです。
ミドルレンジスマホの性能向上に伴いミドルレンジとハイエンドの差は徐々に少なくなっています。しかし、その差は決して無くなることはなく、比べたときに細かい部分で確実に感じられる差です。
予算に余裕があり、コストをかけてでも普段使いの細かいところまで快適さを求めたいならg52jではなくedge 30 PROを買いましょう。特にカメラを重視するならedge 30 PROを選ぶべきでしょう。g52jのカメラは最低限ですが、edge 30 PROはとても良いカメラを持っています。
隙がないと言っても普段使い限定です。XperiaやAQUOSなどの他社製ハイエンドと比べると見劣りする部分も多々あります。しかし、それらの価格は10万円を遥かに超えるものもあり、価格差を考えれば妥当だと思います。edge 30 PROはミッドハイとハイエンドの性質を併せ持ったスマホとも言えるでしょう。