今回はDCMEKAというメーカーがAmazonで販売しているA09というイヤホンを紹介します。
DCMEKAというメーカー(もしくはブランド)はAmazonや海外のECサイトにて独自のイヤホンを販売しています。全く耳にしたことがない名前で怪しい日本語とともにAmazonで売られている様子は明らかに怪しさしか感じなかったため最初は購入する気は全くありませんでしたが、Amazonの製品ページを見ているとA09というモデルの中に木のフェイスプレートを採用したモデルがあり、価格も2450円と安価だったため試しに購入した次第になります。
日本のAmazonではDCMEKAからA09というイヤホンのほかにIE68というモデルが販売されていますが、同じモデルでもセラーによって価格が大きく異なっています。購入されるのであればDCMEKAが販売しているものを選べば最安値で購入可能です。
A09 ウッドモデル ブルー HG-A09M-B(今回購入したもの)
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A09 カーボンモデル HG-A09T(炭素繊維という記載がありますが素材は未確認)
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A09 通常モデル HG-A09H(おそらくプラスチック)
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IE68 HG-IE68L
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また、海外のAmazonではTK300というモデルを確認できました。
DCMEKA in Ear Monitors Amakute TK300 Over Ear Earphones
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海外で販売されているものはAmakuteというブランド名?が記載されているものが多くなっていましたが詳細は不明です。
Amazonで公式以外のセラーが取り扱いを開始した日を見る限り、A09は2019年の末、IE68は2021年の中ごろには世に出ていたものと思われます。AmazonでのDCMEKA公式の取り扱いは2021年中ごろからですが、どうやら2018年の末にAmakuteブランドからA09の通常モデルが販売されており、現在ではそちらもDCMEKA公式から販売されています。
こちらは商品名にDCMEKAという名前が付いていませんが販売元はDCMEKAとなっています。仕様の差異は不明ですが、記載されているスペックに違いはないため同一モデルだと思われます。
おそらくAmakuteというブランド名で販売していたものを2021年にDCMEKAというブランド名に変更したのでしょう。
A09にはフェイスプレートの材質やデザインの違いで複数のモデルが存在しており、今回購入したのはフェイスプレートに木が採用されているモデルHG-A09M-Bになります。
ちなみにA09の通常モデル(フェイスプレートがプラスチックのもの)は、Amazonで売られているMMCX端子を採用したイヤホンで唯一の2000円未満で購入できるイヤホンです。そのお値段はなんと1800円! さすがに2pin端子も含めるとKZに軍配が上がります。
良い点
- 引き締まったキレのある低音
- 中低音寄りで僅かにドンシャリ傾向ながらボーカルは曇っておらずちゃんと聞かせてくる
- 2基のドライバーを自然に繋げている
- 解像度や音場はそこそこながら各音域が被っていない
悪い点
- やや弱く感じる高音から中音
- 低音の響きや量感は少し物足りない
- ビルドクオリティは粗が目立つ
- ケーブルが記載されている仕様よりも10cm以上短い
- 3.5mm端子が僅かに細い
外観
パッケージ
パッケージに使用されている写真が明らかにウッドモデルではない通常モデルのA09ですが、中身はちゃんとブルーの木製フェイスプレートが備え付けられたA09でした。どうやらDCMEKAはこの1種類のパッケージしか用意していないらしく、IE68のレビューにも同じ箱が登場していました。
パッケージは非常に簡素な作りになっています。NICEHCKやTRNなど、同価格帯の格安中国製イヤホンでも少し凝った化粧箱を用意してくることが多くなっていますが、DCMEKAの箱はシンプルイズベストを訴えかけてくるような見た目です。
説明書は付属しておらず箱の背面に簡単な取り扱い説明が記載されています。12ヵ月保証という記載がありますが、いざ保証を受けようとなるとAmazon経由か直接メールで連絡になるようです。
本体
商品説明通りブルーに塗装された木製だと思われるフェイスプレートが装着されています。叩いてみたところプラスティック部分とは明らかに音が違ったためちゃんと木が使われているようです。低価格イヤホンで木製フェイスプレートを採用しているものは非常に珍しいですね。
ケーブルは小さいパッケージの中で付属ポーチの中にイヤホン本体やイヤーピースと共に押し込まれていましたので癖が強くついてしまっています。ケーブル自体は柔らかい4芯ケーブルのため取り回しはそれほど悪く感じませんが、耳掛けするための癖付けが左右で違っていたり、ケーブル長が1.2mという記載よりも短いなどビルドクオリティにいくつかの問題があります。MMCX端子が採用されているため容易にリケーブルが可能です。端子は少し緩く回ってしまいますが接触は良好でした。
付属品
付属品はメーカー名などの記載が一切ないポーチと、汎用品ではないと思われる黒いイヤーピースのみです。
先に書いたようにこのポーチの中にすべてが押し込まれた状態で箱に入っています。ポーチのサイズは箱の幅とほぼ同じで縦は箱からはみ出るため、箱は少し膨らんだ形に変形していました。
ポーチのサイズはNICEHCK DB3の付属ポーチよりも僅かに大きいくらいでイヤホンを入れるサイズとしてはもう少し余裕が欲しいところです。太いケーブルにリケーブルした場合は入りづらくなると思います。
音質
FiiO M11 Plus LTDとXperia 10 III Liteを使用しています。
A09は1BA+1DDを採用していると説明されていますが、A09通常モデルの説明画像では9mm+6mmのデュアルダイナミックという記載があります。筐体な真っ黒なプラスチックで中が見えないため確認するには分解する必要があります。
1BA+1DDの構成はこの価格帯の中国製イヤホンでよくある構成です。使用されているドライバーの詳細な情報はわかりませんでしたが、9.2mm+6mmという記載が間違いないのであれば6mmのドライバーはBAではなくダイナミックドライバーなんじゃないかと思います。
箱出しでは全体的に音が曇っている中低音寄りのドンシャリ傾向という印象で、謎ブランドの格安中国製イヤホンによくあるとりあえずドライバー積んで形だけ作りましたというものかと思ったのですが1時間くらいで個々の音の明瞭感が大きく改善し、少し中低音寄りの弱いドンシャリ傾向という印象になりました。
複数のドライバーを組み合わせたハイブリッドモデルはそれぞれのドライバーが担当する音域の繋がりが音質に大きく影響します。ここがうまくできていないと低音が高中音に被って全体的に曇った音になったり、逆に高音が響きすぎて刺激が強すぎる音になってしまいます。A09は1BA+1DD(2DD?)の2基構成のイヤホンですが、特に不自然さはなく中低音を担当するダイナミックドライバーと高音を担当するBAドライバーの協調がうまく取れており、高音から中音まで個々の音域がしっかり出ているけれど他の音域を邪魔していません。解像度は一般的で音場はやや狭く感じますが、各音域はバランスよく見通しの良い音に仕上げられているためドンシャリとはまた違う印象を受けます。
A09は物足りないと思う部分もありながら気に入ってしまうような音質に仕上げられています。いろんなところで怪しさ満点だったのでかなり警戒していましたが、一番重要な音質という部分はしっかりと作られているようです。
高音はやや弱く、刺激のある強い高音ではありません。しかし曇りは感じられず弱いながらも丁寧に鳴らしてくれます。キンと響く硬質な高音ではなく、少し暖かさも感じるような中庸な高音という印象です。
中音は音場の狭さや解像度の低さからくる他の音域との被りが僅かに感じられるためボーカルが奥に引っ込みがちな楽曲は苦手としていますが、そうでない楽曲であれば奥に埋もれているということはなく価格相応に聞くことができます。ボーカル域の高音の伸びは少し物足りずやや天井感も感じますが、刺さりは抑えられ聞きやすい中音とも言えます。
低音はやや強めのバランスで、A09で最も良いと言える音を鳴らしてくれます。特にEDMなどの立ち上がりから強い入力があるドンッドンッという低音が得意で、引き締まったキレのある重低音をサブベース域も含めて楽しむことができます。重く響いて沈み込むような低音はやや苦手としていて、響きの減衰が早いと感じました。
低音が強いと言っても低音を主体的にメロディとして聞かせるバランスの楽曲と、下支えのために裏に入れられている楽曲、それぞれの雰囲気を壊すことなく音楽を楽しく聞くことができるように仕上げられています。
特に得意としているのはEDM系です。EDMを聞くのならNICEHCK DB3よりも優秀だと感じました。
ボーカルや高音主体ですと、A09は高音から中音にかけて粗を感じる部分もありDB3のほうが良いと感じることもあります。それでもA09の音質は総じて好みなサウンドで、聞くジャンルによって使い分けてもいいと思います。
装着感
ノズルが楕円形になっているためか少し装着感に悪影響があります。なぜ楕円になっているのかは全く不明です。ノズルのせいなのかハウジングの形状のせいなのか付属のイヤーピースも装着感があまりよろしくありません。私はAcoustune AET07に交換しました。ノズル系がある程度あり、形も楕円形という特殊なものですので軸がある程度太くて柔らかいイヤーピースがおすすめです。
リケーブル
今回はNICEHCK TDY4にリケーブルしました。理由は手持ちのMMCXケーブルがこれしかなかったためです。TDY4は8芯の銀メッキ線のため純正ケーブルと比べて全域で音質の変化を期待できます。
リケーブル後は全ての音域で音質が引き上げられるように感じ、解像度や音場も含め全体的に音が整った印象です。高音から中音にかけて見通しが大きく向上したため明瞭感がある音質になりました。
低音のキレは増しましたが響きや量感に大きな変化は見られず、高音から中音にかけての響きは変化しているので低音側のドライバーは純正ケーブルで限界だったようです。もう少し沈み込むように響く低音を鳴らしてくれたら最強だったのですが2450円に求めるものではないということでしょう。もしかしたら金メッキ線のケーブルやバランス接続では改善されるかもしれません。
総評
最初は怪しい部分が満載で不安でしたが、実際に聞いてみるとかなり気に入りました。箱出しでは全くいい評価では無かったのですが、1時間ほどで化けリケーブルで化けと驚きの連続。メインでも使っていきたいサウンドです。特にリケーブル後の変化はとても面白く様々なケーブルを試したくなります。TRN BT30やFiiO UTWS5と組み合わせてTWS化しても面白そうです。
残念ながら新製品を積極的に出す方針ではないようですが次の製品を期待したいメーカーですね。