Abusan’s Journey

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KBEAR Robin 青雀 レビュー「バランスの良さを磨き上げ、たどり着いた一つの完成形」

おはこんばんちは。あぶさんです。
今回は前回と同じくKBEARブランドからRobinというイヤホンをレビューします。

RobinはKBEARブランドの中で低価格帯をカバーするLarkやKS2をベースとした一連のシリーズの中で最上位機種に位置づけられるイヤホンです。
AmazonのWTSUN Audioにて割引クーポンの使用で4,552円となります。

ひとつ下の弟分にあたるLarkは前回のレビューで紹介しました。

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LarkはKS2と同じ筐体を採用しながら、コストの許す範囲でサウンドをブラッシュアップし、3000円台という価格の枠を超えたバランスの良いサウンドが魅力的なイヤホンでした。
RobinもKS2と同様に、KS2とほぼ同じプラスチックのハウジングに亜鉛合金のフェイスプレートを採用。黒、青、金のカラーバリエーションが用意されています。
ドライバー構成も1BA+1DDから4BA+1DDへ変更され、約2000円という価格差に見合うスペックが与えられています。LarkやKS2の出来の良さから否が応でも期待値が高まりますね。
ちなみにLarkのアップデート版として1DDのKBEAR Rosefinch 朱雀があります。こちらも後日レビュー予定ですのでお待ち下さい。

外観

Larkと同じ箱を使用(どちらかというとLarkがRobinと同じ箱を使用していると言えるかも)

パッケージに被せられたカバーは違いますが、中はLarkと全く同一のものを使用しています。
Robinには青雀という愛称が用意されていて、パッケージもそれに合わせて青いカラーリングが使用されています。
Robinはヨーロッパコマドリのことですが、青雀はアオガラなので名称と愛称の不一致が起こってしまっているのはどうなんでしょうか……

非常に綺麗な仕上げがされていて、ビルドクオリティはとても高く感じます。
KS2であった2pin端子のグラつきも一切ありません。

Larkとの比較

Larkと比較してみると、非常によく似た形をしていますが細かいところに違いが見られます。

  • フェイスプレートのデザイン変更
  • 中音域をカバーするBAユニットの追加
  • ノズル内部の形状変更
  • ノズルの角度を僅かに変更
  • ダイナミックドライバーの変更

見た目で最も大きな違いはフェイスプレートのデザイン変更でしょう。
内部的にはドライバー数の増加が最も大きな変更点だと思います。低音から中音までをカバーするダイナミックドライバーを1基、中音から高音までをカバーするBAドライバーを4基という構成です。BAドライバーは1基が中音用、3基が高音用となっています。
使用されているBAドライバーはKBEAR独自のカスタマイズユニットで、中音から高音はKBEAR-IF-K、高音から超高音はKBEAR-HI-Bという名前がつけられています。
KBEAR-IF-KユニットはLarkと同様にステム内部に配置され、正確で自然な中音域の表現と低域用DDと高域用BAを正確に繋ぐ役割を担います。
KBEAR-HI-Bユニットは筐体内に配置され、高域から超高域にかけて不快な刺激を抑えながら質の良い高音を提供し、中音用のIF-Kユニットとの繋がりを担います。
合計5基のドライバーユニットは、KBEAR独自の「4G Electronic Frequency Division Technology」によって各周波数のクロスオーバーが制御されています。

付属品はLarkとほぼ同じですが、ケーブルが4芯4Nの無酸素銅線に変更されています。
イヤーピースは至ってごく普通のものです。写真では黒が4つありますが、S,M,Lの3サイズでMサイズが重複しています。付属品そのままでも問題ありませんが、KBEAR 07やAcoustune AET07、JVCスパイラルドットなどの開口部が大きめのものがおすすめです。

音質

Robinの音質は僅かにドンシャリのテイストを感じるものの、中低音に寄せたフラットバランスに整えられており、Larkとは違って厚みのある暖色系サウンドです。
箱出しではやや籠りがちで低音が膨らみすぎている部分もありましたが、50時間ほどのエージングで見通しの良さを感じる整ったサウンドへと変化します。
多ドラらしく全域で厚みを出しながら個々の音にはしっかりとした明瞭感と分離感があり、暖色系でありながら見通しの良さを感じさせます。
音場はこの価格帯としてはやや広く、正方形に近い空間にしっかりと音が広がります。
ドライバーの数が増えれば増えるほど各ドライバーが担当する周波数帯域のクロスオーバーをどうチューニングするかで音質が決まってくるものですが、Robinは4BA+1DDの5基のドライバーたちにしっかりと仕事をさせながら十二分にコントロールできているようです。上から下まで非常に滑らかに音が出ていて、特定の音域だけが違った鳴り方をすることもありません。
BAは飾りで1DDでしたと言われても信じてしまいそうなほどに統一感がある癖のない鳴らし方です。Robinのサウンドはおそらく多くの人が好ましいと感じるでしょう。

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高音と低音の圧が強いため、分離感の悪いイヤホンではボーカルが埋もれてしまう楽曲。
Robinはボーカルをしっかり聞かせながら高音と低音の圧もしっかりと再現しています。ベリリウムコートドライバーのようなはっきりとした解像度の高さがあるわけではありませんが、個々の音の分離感は非常に良いと感じました。

高音

高音は刺激感を抑えて不快な刺さりを排除しながら、硬質な質感を持たせて聞かせるべきところはしっかりと聞かせてきます。
ハーマンターゲットカーブを意識したチューニングでは高音から超高音にかけて流れるように落としていくような周波数特性にされることが多いのですが、Robinの高音は聞かせるところはしっかりと刺激を与えながら不快にならないようにチューニングされています。


[Official Music Video] Perfume「レーザービーム」

レーザービームで開幕から鳴り響く高音は、高音の刺激感が強いイヤホンではすぐに耳から外したくなるほどの刺激を感じます。逆に高音を落としすぎると物足りなく感じてしまうため、ちょうどいいバランスで聞きたい音です。
Robinでレーザービームを聞くと痩せることなく耳に届きますが、その届かせ方が不快にならないような絶妙なバランスに仕上げられています。

中音

中音は十分な厚みがあり、癖のない自然な鳴らし方で様々なジャンルに合わせていけるようになっています。再生環境が整っていれば凹むことなく適度な距離感で聞くことができます。
様々な楽器とボーカルがひしめき合う中音ですが、ダイナミックドライバーとBAドライバーのコントロールが良いためか非常に滑らかな質感としっかりとした解像度を持っています。
個々の音の輪郭もはっきりしていて生演奏を録音した音源などでは実在感のある音を楽しめます。
Robinの中音は分析的に聞いても十分満足できるようなレベルに達しています。どうしても粗が拭えなかったLarkとは決定的に違うところです。録音やマスタリングの良い音源を十分楽しめる表現力を持っています。

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世界の車窓からでお馴染みの溝口肇さんです。
5000円台のイヤホンなのにリアルで実在感のある音を鳴らしてくれます。もちろん溝口肇さんの素晴らしい演奏と、これまた素晴らしい録音やマスタリング技術があってこそなのですが、それを加味しても5000円台のイヤホンから出てくる音としては最高クラスなのではと思います。

ボーカル

中音と同じく十分な厚みを持ち、再生環境が整っていれば凹むことはありません。
高音と同様に不快な刺さりは一切感じないと言い切れるほどに抑えられていますが、女性ボーカルの伸びが物足りなくなることはありません。
距離感は適度に一定を保ちますが高音と同様にしっかりと耳に届くような鳴らし方です。男性女性問わずしっかりとした存在感があり定位も正確です。


Krewella - Alive (Acoustic) [Official Video]

EDM界の金字塔とも呼ばれるKrewellaのAliveをアコースティックverにしたもの。
Krewellaの2人が左右で歌っているのが非常によくわかります。同時に発声している部分であっても完全に聞き分けることができます。

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上野洋子の透き通ったような美しい声が特徴的な一曲です。余すことなく楽しむならボーカルの刺激は落としたくないところですが、刺さりやすさとのトレードオフになりがちです。
Robinのボーカルはこれがまた絶妙なバランスな鳴らし方で刺さりや尖りをできる限り抑えながらしっかりと耳に届けてくれます。それでも価格なりに限界というものは感じますし、ましてやFiiO FD7のような染み入るようなボーカルなんてものではないです。ただ、Robinのボーカルはある種の一つの完成形とも言えるレベルに達していると私は感じました。


バンディリア旅行団

平沢進の良く伸びる声が楽しめるバンディリア旅行団。
中盤から終盤にかけてのところで澄み切った空に広がりながら消えていくようなボーカルが入っているのですが、Robinはその表現力が非常に良いと感じました。
残響感といいますか、空間表現力が高いからこそ出せる伸びと響きの合せ技です。ただ響きが良いだけでなく正確に減衰させることも含めて響きの良い音と言えると思うのですが、Robinの響きはそこも含めて良い響きだと感じます。

低音

Robinの低音はしっかりとした量感がありながらタイトで分離の良い鳴らし方です。
箱出しだったり再生環境によっては低音のバランスがやや強めに感じることがあるかもしれませんが、分離は良いため他の音域を邪魔することはありません。
特に再生環境による影響が大きいようで、スマホや駆動力の低い格安DACアンプなどでは低音が強くなりすぎることがあるようです。Robinの実力を発揮させるには最低でもUSBポータブルアンプは必須でしょう。
駆動力を確保できる環境ではミッドベースからサブベースまで程よいバランスで鳴らしてくれます。十二分に早いレスポンスと分離の良さ、そして響きと減衰の絶妙なバランスが生み出すRobinのサウンドはキレッキレの元気系サウンドとはまた違った魅力を感じます。


BABYMETAL - Distortion (OFFICIAL)

サビ部分の凄まじい勢いで叩くバスドラムは、しっかりと存在感を感じる量感を持ちながらタイトでレスポンスの早い分離感に優れた鳴らし方をします。
中元すず香のどこまでも伸び切るようなボーカルも魅力的です。


Slow Orbit

3音で構成されたベースラインが入っています。メインはサックスなのですが、音の分離が良いため3音をそれぞれしっかりと聞き取れます。

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初っ端からタイトで重たい低音が入っています。サブベースまでしっかりと鳴らせるからこその重みのある低音を響かせてくれます。
重みのある低音でありながら、刺激のある高音との分離の良さもRobinならではの魅力でしょう。

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初めに弾けるように鳴るスネアの後、ミッドベースから入ってくるベースの音が素晴らしい。
数年前までは5000円台のイヤホンでここまで聞けるなんて思いもしなかったでしょう。


Daft Punk - Doin' it Right (Official Audio) ft. Panda Bear

序盤からミッドベースからサブベースへ深く沈み込むように広がっていく低音が入っています。
Larkだとやや響きが弱いため沈み込みが足りなくなる音ですが、Robinは確かな重さを持った低音を響かせてくれます。

総評「バランスの良さを磨き上げ、たどり着いた一つの完成形」

良い点

  • やや中低音寄りなフラットバランス
  • 全域で非常に滑らかな質感を持っている
  • 癖のないサウンドでどのようなジャンルにでも合わせていける
  • 音場がやや広く個々の音の響きが非常に良く感じられるほどに空間表現力が高い

悪い点

  • 付属ケーブルの見た目は少し安っぽい
  • Robinの次に買うイヤホンは確実に2万円オーバークラスになってしまう
  • アンプの性能が不足する機器では低音が膨らみがち

格安中華イヤホンと聞くと猫も杓子もキレッキレの元気系ドンシャリサウンドをイメージするのではないでしょうか。
Larkのレビューでも書いたように、バランスの良い整ったサウンドというのはコストがかかるため上位の価格帯で多く見られます。最近ではikko OH2など、1万円以下で優れたバランスを持つサウンドを実現したイヤホンがちらほら出てきていましたが、Robinの完成度の高さはバランスブレイカーと言っていいでしょう。
つい最近(と言っても半年ほど前ですが)、See audioのYumeというイヤホンを購入しました。定価は25,000円ですが、最近では15000円で販売されていることもあります。安売りされているとは言え、それなりのお値段がついたイヤホンです。正直なところ、Robinの音質はYumeを超えているような気がしてなりません。それほどにRobinのサウンドは完成されています。
Robinはジャンルを選びません。原音に忠実というわけではない部分もありますが、ロックやポップス、メタル、バラード、トランス、EDM、アニソンなど、どのようなジャンルでも合わせていけますし、楽しく聞くことも落ち着いて聞くこともできます。

Robinの注意点としては再生機器のアンプ性能に左右されやすいという点でしょうか。性能の低いアンプでは低音が膨らみがちになります。
スマホ直差しでは全体的に抑揚が抑えられたような迫力のない音になります。できれば1万円クラスのポータブルアンプを用意したいところです。DAPならShanling M3Xあたりのローエンドクラスで十分だと思いますが、ミドルレンジのM11Sで聞くことをおすすめしたいです。

リケーブルする場合はできる限りTFZ 2pinもしくはNX7 2pinタイプの使用をおすすめします。通常の2pinタイプでも使用可能ですが、イヤホン本体側の2pin端子がやや緩めに設計されているため注意が必要です。
ある程度完成された音ですが、リケーブルによる効果は素直に出てくれるタイプです。
試してみたところでは16芯や24芯で音の厚みを出しながら見通しをよくする方向が良いと感じました。バランスを重視したいのなら16芯のOFCやミックス線、解像度や分離感を求めるなら銀メッキ線が選択肢になります。
高音の主張を増やしたいのであれば8芯純銀線、特に同じKBEARブランドのKBX4913との相性が良いと感じました。ただし、音の厚みについては16芯や24芯ケーブルに軍配が上がります。

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Robinを購入した動機は単純に青いイヤホンが欲しくなったからでした。
Larkのアップグレード版なので音質にも期待していましたが、想像以上に使える音質だったのでメイン機の一角に収まりそうです。レビューもゆっくり書こうと思っていたのですが、聞いていると楽しくなってくるため一気に書き上げてしまいました。とにかく聞いていて楽しいのでどんどん筆が進んでいき、結果としてかなり長い記事になってしまいました。
あまり価格と音質を紐づけるようなことはしたくないのですが、この価格で良い音が出るんだからしょうがないですね。
求めやすい価格と扱いやすい音質ということで、入門用からマニア向けまで幅広くおすすめできるイヤホンです。とりあえず買っても損はしませんよ。

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