Abusan’s Journey

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SGOR VENUS レビュー「突如現れた新生ブランドSGORの秀作」

おはこんばんちは。
今回はSGORというブランドから発売された新作イヤホン「SGOR VENUS」のレビューです。

SGORというブランドは、どうやらこのVENUSが初めての製品のようです。製品自体の開発はDongguan Kangrui Electronics co. ltdで行われていますが、他のブランドを持っているかどうかはわかりませんでした。
AliExpressではKR Earphone Storeが扱っていて、日本円で2400円ほどの価格で販売されています。
セラーとして宣伝を行っていることが確認できたのはネパールのSharmaz Acousticsのみです。どうやらこのセラーが展開するブランドのようで、VENUSはその第一弾ということでしょう。セラーがFacebookに投稿した内容によると、新発売ということで18ドルほどで展開していますが正規価格は21ドルほどになるようです。

Sharmaz AcousticsのFacebookアカウント
https://www.facebook.com/sharmascoustic/

VENUSはフラッグシッププロダクトという宣伝がされています。20ドルのイヤホンをフラッグシップと呼ぶ時代が 見た目はKZやTRNの低価格モデルとよく似た形状をしていますが、それらとは違って特徴的で目を引くのは金属製のフェイスプレートが採用されていること以外に、デザイン上のアクセントともなっている大きなベントでしょう。この大きなベントによって、VENUSは半開放型イヤホンという大きな特徴を持つことになりました。

外観

パッケージはKBEAR KS1やTRN MT1と同様に小さめなサイズです。中の梱包もそれらの格安イヤホンと同等か、少し手間がかかっている印象です。

付属品は至ってシンプル。2芯OFCケーブル、3サイズのイヤーピース、そして中国語と英語で記載された説明書です。
説明書にはより良い音質で聞くために100時間のエージングを推奨する文言がありました。

ケーブルは2芯OFCで、半透明の分厚い被膜で覆われています。パッと見た感じではよくあるリケーブル不可のイヤホンのような被膜と似ていますが、表面にマットでさらっとした質感を持っているため引っかかりが少なく装着感は良好でタッチノイズも気になりません。
イヤーピースはよくある汎用品です。今回はSednaEarfit Crystalを使用していますが、KBEAR07やスパイラルドットなどでもいいでしょう。

先に書いたように、VENUSの外観で最大の特徴はフェイスプレートに開けられた大きなベントです。フェイスプレート自体はサテンメッキで仕上げられていて、お値段以上の印象を受けます。
イヤホンの大きさはKBEAR LarkやRobinなどとほぼ同じで装着感も良好です。ビルドクオリティは非常に高いと感じました。

音質

付属のイヤピースは装着感が良くなかったため、イヤーピースをSednaEarfit Crystalへ変更した状態でのレビューとなります。 VENUSの音質は強いV字傾向のいわゆるドンシャリタイプで、個々の音の分離感がはっきりとしたサウンドです。閉塞感を全く感じさせない非常に抜けの良いサウンドで統一されており、刺激がありながら疲れにくいようになっているため長時間使用しても大丈夫です。フェイスプレートに設けられたベントは非常に良い仕事をしているようです。
一聴すると単純なドンシャリタイプというわけでもなく、ドライバーからの出ている音自体はやや自然さを残す方向の鳴らし方です。モニターイヤホンのようなニュートラルなものではありませんが、ドンシャリ傾向の特徴は半開放型というところが大きいのでしょう。
分離の良さだけでなく、適度に広い音場と正確な定位も持っています。半開放型による特性のみならず、ドライバー自体の性能も非常に高いのでしょう。とてもスッキリとした見通しの良い鳴らし方でありながら、長時間の使用でも疲れにくいようなサウンドに仕上げられています。

高音

VENUSの高音は硬質な質感を持ちながら閉塞感がなく、スッキリとした非常に心地よい刺激を楽しむことができます。
高音から超高音にかけての落ち込みも少なく、クラッシュやハイハットの刺激も十分楽しめます。抜けが良いのに刺激はちゃんとあるというのは、やはり半開放型という特徴が大きく影響しているのでしょう。

中音

中音は凹むことはなく、僅かに近い距離感で鳴らします。ニュートラルサウンドというわけではなく少し厚みが足りない部分や全体的にややドライで粗が見える部分もありますが、癖の少ない綺麗な音です。
全体としてはドンシャリ傾向なのですが、意外と生演奏を録音した音源でも聞けてしまいます。
ボーカルはやや前に出てくる印象がありますが、全体的には自然なバランスに整えられています。過度に尖ることもなく、女性ボーカルの刺さりも適度に抑えられていますが、伸ばすところはしっかりと伸ばし、天井感はありません。

低音

低音は全体のバランスとしては程よいか、もしくは僅かに控えめな印象です。
十分にタイトで量感もありますが、特定の帯域が抜けやすいと感じました。特に感じたのはBABYMETALのDistrortionです。

www.youtube.com

songwhip.com

サビのツーバスが抜けすぎてしまうため全体的に軽く感じてしまいます。
ただ、抜けやすいのは本当に極一部の帯域ですのでほとんどの場合はダイナミックドライバーらしいしっかりとした量感を持った低音を楽しめます。他の音域の邪魔をすることもありません。

総評

良い点

  • 半開放型ならではの抜けの良いスッキリとしたサウンド
  • ただのドンシャリではなく、しっかりと整えられたバランス
  • 高音から超高音までしっかりとした刺激がある
  • 正確な定位とちょうどよい広さの音場
  • 長時間の使用でも疲れにくい

悪い点

  • 低音の特定の帯域が抜けやすい
  • 僅かに粗を感じる中音(価格相応)
  • 特殊な2pin
  • 3000円のフラッグシップ?

SGOR VENUSは新生ブランドのスタートとしてはとても良いスタートを切ったと言えます。
使いやすいドンシャリサウンドでありながら、半開放型ならではのスッキリとした抜けの良さによって長時間の使用でも疲れません。そして何よりも3000円(セールで2000円)という低価格は非常に魅力的です。
価格なりの粗は感じますが、それを補って余るほどの良さも併せ持っています。格安中華イヤホンの入門用としておすすめできる製品です。もちろんマニア向けとしても十分な実力を持っています。
優れた定位、適度な広さの音場、長時間の使用でも疲れにくい抜けの良さなど、FPSなどのゲーミング用途としても十二分に使える出来だと思いました。実際、私はCall of Duty:Modern Warfare IIをVENUSとSteelSeries GameDACの組み合わせでプレイしていまして、定位だけでなく音の距離感もわかりやすいと感じています。
同ブランドがこれから出してくる製品への期待値も高まりますね。

純正ケーブルでも十分楽しめますが、リケーブルをしてもいいでしょう。
パッと見はTFZ 2pinのように見えますが、実はカバー部分のサイズが違うためTFZ 2pinのケーブルは使用できません。通常の2pin、もしくはCIEM 2pinが使用できます。
16芯銀メッキ線や24芯のミックス線で音の厚みや質感を向上させるタイプのケーブルが良いでしょう。バランス化も一つの手段として有効だと思います。