Abusan’s Journey

Photography, Drive, Journey, Camera, Audio, IM@S by abusan3225(あぶさん)

Moondrop Stellaris 借り物レビュー ※2023/01/16 更新

今回はいつもとちょっと違って借り物レビューとなります。
借り物と言っても公式から提供されたとか、レンタルサービスから借りたというわけではなく、イヤホン沼の友人から「ちょっとこれを聞いて感想を聞かせて欲しい」ということでお借りしたものになります。

※2023/01/23 更新 お借りした個体が正常であることがわかったためレビューを再公開しました。

お借りしたのはAriaやKATO、ILLUMINATION-光などの名機を数多く生み出し、美麗なサウンドで人気の高いMoondropブランドの最新作「Stellaris(ステラリス)」です。
青をベースとして星をイメージした金色の模様、ラテン語で「星の」を意味する名称など、明らかに同ブランドのStarfieldの後継であることを主張しています。しかし、筐体の形や音はStarfieldから大きく変わっています。特に、使用されているダイナミックドライバーが平面駆動型ドライバーになったことが一番の特徴でしょう。
最近流行りの平面駆動形ドライバー採用イヤホンですが、それらは良い音質を持ったイヤホンが多いためStellarisの音質も期待できますね。

外観

星空をイメージしたかのようなデザインは非常に好印象です。素晴らしいビルドクオリティで粗は一切感じません。
Stellarisは14.5mmの平面駆動ドライバーを採用していることもあり、従来のMoondropのイヤホンと比べるとかなり大きいサイズです。それでもMUSE HIFI POWERなどと比べるとかなり小型化されている印象です。平面駆動ではないイヤホンでもこれくらいのサイズのものは存在します。
小型化されているとは言え、大きい筐体をしっかりと支えるためなのかノズルがかなり長くなっています。正直なところイヤーピースだけで支えているような装着感はあまり良いものではありません。

ケーブルの仕様は0.78mm 2pinであること以外は全く不明。
ケーブルのデザインも筐体のデザインと合わせてきているところがMoondropらしくてとても好印象です。
ただ、Moondrop 竹のケーブルと同じく被覆がややベタつきます。

音質

Stellarisの音質は、正直なところおすすめできるようなものではありません。
まず聞き始めて最初に感じるのは、全域で尖ったシャリシャリとした音でしょう。ドンシャリからシャリだけを抜き出したような全体的に詰まったような鳴り方をします。かと言って刺激があるわけでもなく、音の輪郭は曖昧でのっぺりとした印象があります。

songwhip.com PHILDELのThe Kissは曲の出だしからピアノの音が非常にはっきりとした輪郭で鳴らしてくれる楽曲ですが、Stellarisは非常に平坦で輪郭のない音を鳴らします。

さらに聞き込んでいくと音場が不自然な形になっていることに気が付きます。個々の音自体は適度な距離感で鳴っていてるのですが、耳から上だけで音がなっているような音場です。Ariaでも似たような印象はあったのですがStellarisの場合はかなり酷く、全体的に音の印象と相まって地に足のつかない浮ついた音になってしまっています。
ドアの隙間から漏れているような音とでも言いましょうか。原音に忠実だとか派手なドンシャリだとかイヤホンには様々な音の特徴がありますが、Stellarisから出ている音は少なくとも音楽を楽しめるような音ではないと思いました。

高音

従来のMoondropとは違って高音から超高音も鳴らしてくれますが、とにかくシャリシャリした質感が気になります。
クラッシュやハイハットの音は非常に軽く、ただシャリついた音という印象です。
従来のMoondrop(AriaやStarfield、KATOなど)はメタルやジャズ、エレクトリック系で重要な高音から超高音を落とし気味なバランスだったので、そこを出してくれるようになったのは嬉しいことではあります。ただ、肝心の音質は褒められたものではありません。

songwhip.com Stellarisで聞くと出だしからドラムの音がおかしくなります。叩いた瞬間の音だけが強調されていて、とにかく聞いていて気持ちよくない。

中音

Stellarisの中音はかなり癖があり、高音と同様のシャリついた質感に加えて全体的にハイ上がりな音になってしまっています。
Moondropのイヤホンは音の減衰が全体的に速いという特徴を持っていますが、どうやらStellarisではその特徴が非常に強く出ているようです。ドラムやピアノなど、響きや余韻を重視するような音は特に苦手です。

songwhip.com 出だしのスネアドラムの音はドラムの皮が響く質感をしっかりと鳴らしてくれるはずなのですが、Stellarisで聞くとそのような細かい表現は消え去ります。

songwhip.com 溝口肇さんの素晴らしい演奏を、まるで目の前で聞いているかのような実在感を持った音で聞くことができる一曲です。
Stellarisだとそもそも全体的に音が遠いのですが所々で急に近くなる部分があります。中音域を音が移動する際、滑らかに繋がらず段階的に音が上下するような印象を受けました。
全体的にハイ上がりで深みや厚みが物足りないのもStellarisでなければ聞けません(褒めてないですよ!)

ボーカル

距離感自体は不自然ではないのですが、やはり輪郭が迷子になっているためか主張がない面白みのない音になってしまっています。
能動的にフォーカスすればボーカルが聴こえてくるのですが、ここでもシャリついた質感とハイ上がりでうわずったような音が気になります。特に良く伸びる女性ボーカルが天敵で、ボイスチェンジャーで弄ったような印象も受けました。

songwhip.com 宇多田ヒカルの楽曲は録音から何から何まで非常にクオリティが高く、非常に滑らかな質感を持ったボーカルを聞くことができます。
Stellarisで聞くとうわずったような声になってしまい、せっかくの良い音質を持った音源が台無しです。

低音

そこそこの量感があり、ミッドベースからサブベースまでバランス良く鳴らしてくれます。
ただ、非常に減衰が速いため表現力が乏しく、キックは鳴っているくせにその後が微妙……なんてことになりがちです。メタルのツーバスなんて聞けたものではありません。
上の方で地に足がついていない音だと書きましたが、おそらく減衰が速すぎることが一つの原因だと思います。低音ではその影響が非常に強く出ていて、下支えとなるべき低音がその役割を果たせていません。

songwhip.com ミッドベースをキックとしてサブベースへずっしりと沈むような広がりのある低音が入っているのですが、Stellarisではその広がりや響きがすぐに消えてしまうため違和感しかありません。

songwhip.com 出だしに深く沈み込むような非常に重たい低音が入っていますが、Stellarisではそのほとんどを聞き取ることができません。キックのトンという音しか聞き取れません。

また、低音でもシャリついた質感が乗ってしまっています。これによりミッドベース付近の音がさらに浮ついたように聞こえます。

リケーブルを試す

Stellarisの音を少しでも良い方向に出来ないかということで、いくつかリケーブルを試してみました。

NICEHCK CT1

8芯OFCというオーソドックスな構成ですが、とりあえず低音を強化したいときにぴったりな特性を持っています。

(使用したのは3.5mm 2pinですが、2022年11月20日現在では2pinは2.5mmもしくは4.4mmのみの販売となっています)

予想通り低音を強化することに成功しました。強化できたと言っても響きの弱さはあまり変わりませんが大きな一歩です。
低音全体に乗っていたシャリついた質感はほとんど気にならなくなります。メタルのツーバスでもある程度聞けるようになりました。
低音以外は相変わらずですが、個々の音の距離感が少し良くなった気がします。輪郭が出てきたと言いますか、やや音に主張が見られるようになった気がします。

JSHiFi D4G

3000円で購入できる金メッキケーブルといういかにもなケーブルです。
ビルドクオリティに少し粗がありますが音はちゃんと金メッキということでコスパ最強と言われています。

心なしか中音やボーカルの主張が強くなったように感じます。ただ高音は相変わらずとてもシャリシャリしています。
D4Gとの相性はあまり良くないように思います。

NICEHCK C24-4

24芯の高純度銅線を使用したケーブルです。
現在は生産が終了したようで入手できません。

音は少し低音が強くなる印象を受けました。サブベースの響きもやや改善したように感じますが、全体を見ると大きな改善はしていません。

NICEHCK FourMix

銀銅合金線、7N高導電性OCC線、純銀線 、6N銀メッキOCC線を組み合わせたNICEHCKのフラッグシップ(だった)ケーブルです。
特定の音域を強化するというよりも、イヤホン本来の特性を持ち上げるような変化があるケーブルです。
とりあえず使用してみましたが、全体の質感は少し改善したように感じましたが、下支えの弱さを改善するには至りませんでした。

NICEHCK SuperBlue

NICEHCKのやや古いケーブルで、線材は台湾ラボ7N単結晶銅OCCです。

かなり好印象です。音の繋がりが非常になめらかになり、全体的なシャリつきもかなり抑えられます。
メタルのドラムもしっかりとした量感を持った音を出すようになります。
かなり聞けるようにはなりますが、クラッシュはハイハットは相変わらず……。低音も少し物足りない。

NICEHCK 未発売6N銀メッキOCC 8芯

ちょっと前にプレゼントセールと銘打って少数が販売されたケーブルです。4.4mmしかありません。
バランス接続の影響もあると思うのですが、音はかなり好印象です。全体的にメリハリが出てくる印象ですが、イヤホン自体の限界を感じる部分もあります。
中音の表現力が特に強化され、これはこれでありだなと思うところもあります。まあ他のイヤホン買ったほうが遥かに安く同等以上の音が手に入るわけですが……

総評

良い点

  • 所有欲を満たせるおしゃれなデザイン

悪い点

  • 音質
  • 全体的にシャリついていてハイ上がり
  • 不自然な音場
  • 低音の減衰が速すぎる

とにかく音がシャリついていてハイ上がりで、音楽を楽しむような代物ではありません。
中低音をある程度捨てて高音にフォーカスした音とも言えなくはないのですが、それにしては高音の質もあまり良くないんですよね。
元々、僕がよく聞いているジャンル(メタル、エレクトリック)とMoondropの相性はあまり良くないのですが、Moondropの音自体はとても良いと思っていました。ただ、Stellarisはどのジャンルでも合わせられず、ジャンルうんぬんを抜きにしても良い音質とは思えません。
これが平面駆動ドライバーを使用したことによる一過性のものなのか、それともこれからのMoondropの方向性を決定づけるものなのかはわかりません。
今言えることは、Stellarisを買うなら他のイヤホンを買ったほうが絶対に良い結果を得られるということだけです。